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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第4章 もう1つの「始まり」

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第80話 謎の少女・エレン


 翌日。


 水音達が「勇者」としてエルードに召喚されてから、6日目。


 昼食を終えて、午後の訓練の為に王城内にある訓練場へと向かう最中、


 (うぅ。午後になっても、何のアイデアも浮かばなかった)


 と、暗い表情の水音は「はぁ」と溜め息を吐きながら、心の中でそう呟いた。


 あの後、しつこく春風のことについて質問してくる進達を、水音はどうにか回避してきた。


 その後、ヴィンセント皇帝にどう説明したらいいのかを考えたが、結局、何のアイデアも思いつかないまま翌日を迎えてしまい、


 (もう、()()話すしかないのかな)


 と、水音は諦めるかのように表情を暗くした。


 とまぁそんな感じで、水音は爽子やクラスメイト達と訓練場に向かっていた。


 ところが、訓練場の近くに着くと、何やら兵士達の様子がおかしいことに気付いて、


 (あれ? どうしたんだろう?)


 と、水音はそう疑問に思うと、すぐに速足で訓練場に向かい、


 「あの、すみません」


 と、兵士の1人に声をかけた。


 水音に話しかけられて、その兵士は「うわ!」と驚いたが、すぐに水音達を見て、


 「は! も、申し訳ありません勇者様!」


 と、大慌てで水音達に向かって謝罪したので、水音達はその兵士に「落ち着いてください」と言うと、


 「あの、なんか皆さんの様子がおかしいというか、騒がしいというか……まぁとにかく、皆さん何かあったんですか?」


 と、爽子が兵士に向かってそう尋ねた。


 その質問に対して、


 「そ、それが……」


 と、兵士が答えようとした、まさにその時、


 「おお! 『勇者』とやらが来たのか!?」


 と、訓練場内から少女のものと思わしき声がしたので、それを聞いた水音達が「え?」と反応した後、その声の主を確かめようと訓練場に入ると、


 『な、何じゃこりゃあああああああ!?』


 と、水音達が驚いたように、訓練場内は大勢の兵士や騎士達が地面に倒れ伏していた。


 そんな目の前の惨状を見て、


 (な、何だよこれ? 一体、何があったんだ!?)


 と、タラリと汗を流した水音が、心の中でそう疑問に思っていると、


 「おーい、こっちだこっち!」


 と、再び少女のものと思われる声がしたので、水音達は再び「え?」と声がした方へと視線を移すと、


 (え? 女の子?)


 と、水音が大きく目を見開いたように、そこには、水音のクラスメイトの1人にし「勇者」の1人でもある晴山絆よりも、長い深みのある赤い髪を持つ1人の少女がいた。


 見たところ年齢的には水音と同い年くらいのその少女は、水音達を見て「ふふん」と鼻で笑いながら、余裕がありそうな表情を浮かべていた。


 そして、よく見ると彼女の手には、訓練で使う木剣が握られていたので、それを見た爽子は何かを察したかのように、


 「あの、もしかしてこの()()て、あの子が?」


 と、再び兵士に向かってそう尋ねると、


 「は、はい。皆様が来る前に突然ここに現れて、『勇者と戦わせろ!』などと言ってきて、それを止める為に兵士達や騎士達が戦いを挑んだのですが、結果はご覧の通りの有様でして……」


 と、兵士は爽子達に向かって、シュンと肩を落としながらそう答えた。


 その答えを聞いて、爽子達が「そんな……!」とショックを受けると、


 「おいおい、人を乱暴者のように言うのはやめてくれ! 確かに、私がこいつらをぶちのめしたけれど……」


 と、長い赤髪の少女は頬を膨らませながらそう言ってきたので、


 『は、はぁ、そうですか』


 と、爽子をはじめとした勇者達が「えぇ?」とドン引きしていると、


 「それで、『勇者』というのはどいつだ?」


 と、今度は長い赤髪の少女の方からそう尋ねてきた。


 ただ、その態度があまりにも太々しかったので、質問を聞いた爽子は「む!」と唸ると、


 「私がその『勇者』だが、何か?」


 と、長い赤髪の少女に向かってそう答えた。


 その答えを聞いて、


 『せ、先生!?』


 と、水音達が大きく目を見開くと、爽子はスッと右手を上げて、


 「大丈夫、心配するな。私がみんなを守るから」


 と、優しい口調でそう言った。


 その言葉に「せ、先生ぇ……」と水音達がジーンと感動する中、爽子は1人、長い赤髪の少女の方へと歩き出した。勿論、その途中で落ちていた木剣を拾った。


 因みに、倒れ伏していた兵士や騎士達は別の兵士達に回収され、訓練場を離れていた。


 そして、爽子が長い赤髪の少女の前に立つと、


 「お、おお。あなたが『勇者』でしたか。これは失礼しました」


 と、長い赤髪の少女は、爽子に向かってペコリと頭を下げながらそう謝罪した。


 ただ、何処となくノリが軽そうだったので、それに爽子は更に「む!」と唸ると、


 「『勇者』の爽子だ。で、君の名前は?」


 と、長い赤髪の少女に向かって、()()()()()()感じでそう尋ねると、


 「私か? 私のことは『エレン』と呼んでほしい」


 と、長い赤髪の少女ーーエレンは爽子を前に強気な態度でそう答えた。


 そんなエレンの答え(というより自己紹介)を聞いて、爽子は「そう」と呟くと、


 「それじゃあエレンさんとやら。兵士と騎士達はボコボコにしたのは君か?」


 と、エレンをギロリと睨みながらそう尋ねた。


 明らかに「自分、怒ってます!」と言わんばかりの「怒り」に満ちたその質問を聞いて、水音達がゴクリと唾を飲む中、


 「ああ、そうとも。『勇者』と戦ってみたくてここに来たのに、彼らが邪魔をするものだから、少し相手をしてやっただけさ」


 と、エレンはやはり強気な態度でそう答えたので、それを聞いた爽子は再び「そう」と呟くと、


 「だったら、私が相手になるわ。かかってきなさい」


 と、手にした木剣の先端をエレンに向けながらそう言った。


 その言葉を聞いて、エレンは一瞬ポカンとなったが、すぐにニヤリと笑って、


 「……ああ」


 と、声をもらすと、


 「言われなくとも、そのつもりだ!」


 と、エレンも手にした木剣を構え出した。


 


 

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