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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第4章 もう1つの「始まり」

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第79話 水音、悩む


 医務室での出来事から翌日。


 水音達が「勇者」としてエルードに召喚されて、5日目に入った。


 その日もいつものように、午前は専用の教室で座学が行われていた。


 爽子をはじめとした「勇者」達が真面目に座学を受けている中、ただ1人、水音はというと、


 「……」


 と、無言でジッと机を見つめるだけで、傍から見ると明らかにボーッとしている様子だった。


 そんな状態の水音を、他の勇者達ことクラスメイト達は、時折チラチラと見るだけで、誰1人としてかれを注意する者はいなかった。


 それから暫くすると、座学が終わったので、爽子とクラスメイト達が次々と教室を出ていったが、


 「……」


 水音だけは未だ無言で机を見つめている状態で、そこから動こうとしなかった。


 その時だ。


 「桜庭君」


 と、水音のすぐ傍で自身の名を呼ぶ声が聞こえたので、水音は思わず「ん?」とその声がした方へと振り向くと、


 「……あ、時雨さん」


 そこには、ちょっと困ったような表情を浮かべる祈がいたので、ハッとなった水音は少し驚いたかのようにそう返事すると、


 「座学、終わりました、よ?」


 と、祈は恐る恐るといった感じでそう言ったので、水音は「は?」と思いつつ周囲を見回すと、現在教室内には水音と祈の2人だけで他は誰もいなかったので、


 「あ……あれ? いつの間に終わった?」


 と、水音はキョロキョロと周囲を見回しながら、祈に向かってそう尋ねると、


 「ふえ!? あ、はい。終わっちゃいました」


 と、祈は恐る恐るといった感じでそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「うわぁ、マジか。僕としたことが……」


 と、水音は頭を抱えながら後悔していると、


 「あ、あの、桜庭君……」


 と、祈がそう声をかけてきたので、


 「な、何? 時雨さん」


 と、水音がそう返事すると、


 「も、もしかして、何か悩んでたり……してますか?」


 と、祈が首を傾げながら、恐る恐るそう尋ねてきたので、それに水音は「う!」と呻いて、


 「な、何で、そう思ったの……ですか?」


 と、祈に向かって少しぎこちない感じでそう尋ねると、


 「その……今日の桜庭君、何だかすごく悩んでそうな感じがしましたから……」


 と、祈は恥ずかしそうに顔を赤くしながらそう答えた。


 その答えを聞いて、水音は「そ、そうなんだ」と頬を引き攣らせながらそう呟いた後、


 (ど、どうしよう。ここで本当のことを話すか、それとも誤魔化すか……?)


 と、どちらにしようか本気で悩んだが、


 「うぅ……」


 と、目をウルウルさせながらジーッと見つけてくる祈を無視することは出来ないと感じて、


 (う! し、時雨さん、そんなにジッと見つめないで!)


 と、水音はもの凄い罪悪感的なものに苛まれた後、


 「はぁあああああ……」


 と、深い溜め息を吐いて、


 「取り敢えず、歩きながらでいいですか?」


 と、祈に向かってそう尋ねた。


 その後、すぐに水音と祈は教室を出たのだが、


 「うわ!」


 『ど、どうも……』


 出入り口には昨日水音と共に資料保管庫に入ったメンバー……進、耕、祭、絆の4人が待ち構えていたかのようにそこにいたので、水音は再び「はぁ」と溜め息を吐いた。


 場所は変わって王城内の廊下。


 食堂に向かっている最中、


 「え? 雪村君のことでどう話すのか悩んでたの?」


 と、祭がそう尋ねてきたので、


 「う、うん」


 と、水音はなんとも気まずそうな感じでそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「何だよ、全部話せばいいじゃねぇかよ」


 と、進がちょっと頬を膨らませながらそう言ってきたが、


 「そうしたいけど、本人の許可なく勝手に話していいのか……」


 と、水音は表情を暗くしながらそう返事すると、


 「そういえば、桜庭君と雪村君って、去年一緒のクラスだっけ?」


 と、耕が「おや?」と言わんばかりに首を傾げながらそう尋ねてきたので、


 「いや、去年は違うクラスだよ」


 と、水音は首を横に振りながらそう答えた。


 その答えを聞いて、耕が「あ、そうなんだ」と呟くと、


 「ん? ちょっと待て。それじゃあ桜庭は、いつ雪村と知り合ったんだ? あいつがここを出ていった時、お前、あいつのこと名前で呼んでただろ?」


 と、今度は絆がそう尋ねてきた。


 水音はその質問を聞いて、


 「あー、それは……」


 と、答え難そうな表情になったが、また「はぁ」と溜め息を吐くと、


 「ここじゃあ、あんまり詳しくは言えないけど……僕は3()()()に彼と知り合ったんだ」


 と、少し暗い表情でそう答えた。


 その答えを聞いて、進達が「え?」と大きく目を見開くと、


 「『3年前』って、中学生……ですよね?」


 と、今度は祈が恐る恐るそう尋ねてきたので、


 「うん。彼とは中学生の時に知り合ったんだ。といっても、通っていた学校は違うけどね」


 と、水音は「はは」と苦笑いしながらそう答えると、


 「そうだったんだ! じゃ、じゃあさ、他に何か知ってることがあったら教えてほしいな」


 と、祭がちょっと明るい口調とノリでそう言ってきたので、水音は「じゃあ……」と言おうとしたが、その途中でハッと我に返り、首を勢いよくブンブンと横に振って、


 「だ、駄目駄目! これ以上は個人情報になるかも……!」


 と、祭だけでなく進達にもそう言ったが、


 「えー? 少しくらいいいでしょ? 減るもんじゃないしさぁ」


 と、祭は「不満です!」と言わんばかりに頬を大きく膨らませながらそう言い、それに続くように、


 『そうだそうだ!』


 と、進達が便乗してきたので、水音は「ええ?」と困った顔になると、


 「あ、ほら、もう食堂だよ!」


 と、そう言った後、逃げるようにダッシュでその場から駆け出した。


 そんな水音を見て、


 「あ、おい待てよ!」


 「ま、待って!」


 「コラー! ちゃんと答えなさい!」


 と、怒った進達も、水音の後を追うようにその場から駆け出した。


 そんな状況の中、


 (色々考えなきゃいけないことが多いけど、今日はこのくらいでいいかな?)


 と、水音は心の中でそう呟きながら、


 (さて、ヴィンセント皇帝陛下には、なんて答えればいいのかな?)


 と、これからこのルーセンティア王国に来るというヴィンセントのことを考え始めた。


 

 

 

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