第7話 たった1つの方法?
(ど、どうして……)
アマテラス、ゼウス、そしてオーディン。
3柱の神々から聞かされた「地球消滅の危機」。
その理由を知って、春風の表情は絶望に染まった。
無理もないだろう。何故なら、少々波乱に満ちてはいたが、それまで「大切な家族」や、「大切な人達」と共に平穏に暮らしていたのに、突然「ルールを無視した異世界召喚」などという訳のわからない出来事に遭遇して、アマテラス達「地球の神々」に助けられたと思ったら、その「ルールを無視した異世界召喚」の所為で地球が消滅の危機に陥ってしまったなどというとんでもない話を聞かされたのだから。
(どうして……どうして!?)
そう思った瞬間、春風はグッと拳を握り締めると、その拳で真っ白な地面を思いっきり殴った。
(どうして!? どうしてこんなことになってるんだよ!?)
今にも血が噴き出るんじゃないかと思われるくらい何度も拳で真っ白な地面を殴りながら、心の中で怒りのままにそう叫ぶ春風。
そして、
「どうしてぇ!?」
と、そう叫びながら拳を叩きつけた後、春風はポケットからスマホを取り出して、電源を入れたが、
「……ちくしょう」
と、幾らやっても画面は真っ黒のまま動かなかったので、
「……ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!」
と、春風はだんだんイラッときたのか、
「こんちくしょうがぁあああああああ!」
と、怒りに満ちた叫び声をあげると、手にしたスマホを思いっきり地面に叩きつけようとした。
その時、
「駄目よ、春風君」
と、アマテラスがそう言いながらガシッと春風のスマホを握る手を掴んできたので、
「は、離せ! 離せよ! 離してください!」
と、春風はアマテラスに向かって怒鳴るようにそう言ったが、
「この中には、あなたの大切な思い出も詰まってるんでしょう?」
と、アマテラスは春風の手の中のスマホをチラリと見ながら、優しい口調でそう返事してきたので、それを聞いた春風はハッとなると、先程までの怒りに満ちた表情から、一気に悲しみに満ちた表情になった。
「う、うぅ……」
そして、その目からボロボロと大粒の涙を流しながら、
「……ご、ごめんなさい」
と、アマテラスに向かって震えた声でそう謝罪したので、それを聞いたアマテラスは穏やかな笑みを浮かべながら、ソッと春風の手を離した。
その後、春風は腕でゴシゴシと涙を流す目を拭うと、
「……アマテラス様。ゼウス様。オーディン様」
と、顔を下に向けた状態でそう口を開いたので、それにアマテラス達が「ん?」と反応すると、
「どうすれば……地球を消滅の危機から救うことが出来ますか?」
と、春風は声を震わせながらそう尋ねた。
その質問に対して、アマテラスは「それは……」と答え難そうにしていたが、
「確実とは言えねぇが、1つだけ方法があるぜ」
と、ゼウスがそう口を開いたので、春風は「え!?」と顔を上げたが、
「待ってゼウス! それは……!」
「そうだ! その方法は……!」
と、何故かアマテラスとオーディンがゼウスに向かって「待った」をかけたので、
「悪りぃな、アマテラスにオーディン。地球を救う為には、もうこれしかねぇだろうし、春風にだって知る権利がある」
と、ゼウスは真剣な表情でそう言った。
その言葉にアマテラスとオーディンが「うぐ……」と呻く中、ゼウスは春風に向かって口を開く。
「まず、最初に言っておかねぇといけねぇ話なんだが、実は今回『ルールを無視した異世界召喚』を行った『エルード』って世界の神々と俺達『地球の神々』は、まぁ言ってみれば『先輩と後輩』、もしくは『歳の離れた友人』みたいな関係なんだ」
「え、そうなんですか!?」
ゼウスの言葉を聞いて、大きく目を見開きながらそう尋ねた春風。その言葉に反応したのか、傍で聞いていたアマテラスとオーディンもコクリと頷く。
「そうだ。その世界の神々は2柱で、名前は『月光と牙の神ループス』と、『太陽と花の女神ヘリアテス』という。2柱とも幼い神だが、『神』としての能力は高く、仕事ぶりもとても真面目で、俺達も感心するくらい一生懸命取り組んでいるんだ。だから、そんなアイツらが、今回の『ルールを無視した異世界召喚』を見逃すなんて到底思えねぇ」
と、真剣な表情でそう話を続けたゼウス。そんなゼウスの話を聞いて、
「そ、それじゃあ、その2柱の神様達に何かが起きた……と?」
と、春風が恐る恐るそう尋ねると、
「ええ、私達はそうじゃないかと思ってるの。その証拠に、私達もここ500年の間、あの子達の話が全く耳に入ってこなくて、最初は『まぁだいぶ世界がいい感じになってきてるから忙しいんでしょ』って思ってそのままにしてたんだけど、今回のことで改めて調べてみた結果、その世界の生命力が弱まってるわあの子達との連絡が取れないわで一体どうなってるのって、みんなで首を傾げてたところだったの」
と、ゼウスではなくアマテラスがそう答え、それに続くようにゼウスとオーディンもコクリと頷いた。
その答えを聞いて、
「……あの、先程から気になってたんですけど、『500年』って、よくそんな長い間放置(?)してましたね?」
と、春風は再び恐る恐るそう尋ねると、
「ん? ああ、お前達『人間』にとっては長い年月だが、俺達『神』にとっては100年なんてほんの1週間くらいの感覚なんだわ」
と、ゼウスがそう答えると、最後に「ガッハッハ!」と笑った。
そんなゼウスを見て、
(うーん流石は神様。時間の概念が人間とは全然違いすぎる)
と、春風はタラリと汗を流しながら、心の中でそう感心すると、ゼウスはスッと表情を変えて、
「……とまぁ、それは置いといて、だ。で、今アマテラスが言ったように、500年間アイツらの話を全く聞いてねぇし、連絡も取れねぇときたんで、『こりゃあアイツらに何かが起きたな』と俺達は考えている。それなら、やるべきことは1つだ」
と、再び真剣な表情でそう言ったので、それを聞いた春風はゴクリと唾を飲むと、
「そ、それは……一体?」
と、三度、ゼウスに向かって恐る恐るそう尋ねた。
すると、ゼウスは春風の目の前で片膝をつき、ガシッと両肩を掴んで、
「春風」
「は、ハイ!」
「『地球』を救う為に……お前には、『エルード』に行ってもらう!」
と、更に真剣な表情でそう言ってきたので、
「はぁ……はい?」
と、春風は「何を言われてるのかわからない」と言わんばかりに首を傾げた。




