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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第4章 もう1つの「始まり」

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第73話 水音、動く・2

 今回は、いつもより短めの話になります。


 翌日、午前の座学の教室。


 爽子ら勇者達が、それぞれの席について準備を進める中、水音はというと、


 (ね……眠い)


 1人、()()と戦っていた。


 ウィルフレッドと別れたあの後、水音は1人、資料保管庫で何冊もの本を読み漁っていた。


 これは座学を受けた時にわかったことなのだが、実は水音ら勇者達は、自分達が持っている「異世界人」の称号のおかげで、この世界の文字を読むことが出来ていた。それ故に、


 (うん。内容は難しいけど、ちゃんと読めるぞ)


 と思ったように、水音は本に書かれていた文章を問題なく読めていたのだ。


 まぁそれはさておき、そんな感じで資料保管庫にあった本を次々と読んでいると、

 

 「あのぉ、勇者様。もう夜遅いですので、そろそろお止めになった方がよろしいかと……」


 と、見張りをしていた兵士にそう注意されてしまったので、


 (く! もう少し読んでいたいけど、仕方ないか……)


 と、水音は名残惜しそうにしながらも、兵士の言葉に従って資料保管庫を後にし、自室へと戻った。


 (まぁ、いいさ。次もウィルフレッド陛下に許可を貰うし)


 ただ、その時は本当に夜も遅かったので、水音はあまり眠ることが出来ずに、結局寝不足の状態で翌日を迎えることになってしまったのだ。


 因みに、朝食はというと、寝そうにはなったがちゃんと済ませてある。


 さて、他の勇者達が準備を進めている中、


 (や、やばい!朝ごはんの時も危うく寝そうになっちゃったし、少しでも気を抜いたら間違いなく眠ってしまう!)


 と、必死になって寝ないように頑張って自分も準備をしていると、


 「さ、桜庭君……」


 と、自分の名を呼ぶ声がしたので、


 「何?」


 と、水音がギロリと睨むかのように声がした方へと振り向くと、


 「うわ!」


 「お、おい、そんなに睨むなよ」


 そこには、水音と同じ服装をした、ちょっと気の弱そうな感じの大柄の少年と、彼とは逆にちょっと気の強そうな感じの小柄の少年がいたので、その姿に水音は「あ……」と声をもらすと、


 「ご、ごめん、遠畑(とおはた)君に近道(こんどう)君」


 と、その2人の少年ーー「遠畑君」と呼ばれた大柄の少年と、「近道君」と呼ばれた小柄の少年に向かって謝罪した。


 そう、ここで紹介しておくが、大柄の少年の名は遠畑(とおはた)(つとむ)、小柄の少年の名は近道(こんどう)(すすむ)。2人とも水音と同じように「勇者」としてエルードに召喚されたクラスメイトである。


 さて、そんな遠畑耕ーー以下、耕と、近道進ーー以下、進は、水音の謝罪を受けて、


 「え、えっと。桜庭君、朝からどうしたのかなって……」


 「そうそう、なんかスッゲェ眠そうっていうか、ひっでぇ顔してるしな」


 と、声をかけた理由を説明した。


 その説明を聞いて、


 「え、僕、そんなに酷い顔してる?」


 と、水音がそう尋ねると、


 「おう、スッゲェひでぇぞ」


 「う、うん」


 と、進と耕はコクリと頷きながらそう答えたので、


 「うわぁ、参ったな。じゃあ、まだ開始前だから、顔洗ってくるね」


 と、水音はそう言って席から立ち上がると、


 「お、おい」


 と、進に呼び止められてしまったので、


 「え、な、何?」


 と、水音が立ち止まると、


 「あー、まぁなんだ、何かあったら、遠慮なく俺らに教えてくれよな」


 「う、うん。ほら、僕達、桜庭君とは()()()()()()だからね」


 と、進と耕は恥ずかしそうに少し顔を赤くしながらそう言った。


 そう、実はこの2人、水音とは部屋が隣同士なのだ。


 それを思い出して、


 (あー、そういえばそうだった)


 と、水音は気まずそうな表情になった後、


 「う、うん、ありがとう。その時は、頼りにするよ」


 と、進と耕に向かってそう言うと、そそくさと教室を出て行った。


 その後、残された勇者が再び準備に移った中、


 「……」


 ()()()()1()()が、チラッと水音が出て行った教室の扉を見つめていたのだが、水音が入った瞬間、すぐに視線をずらした。


 その後、授業が始まったのだが、開始してから暫くすると、


 「……ぐぅ」


 顔を洗ったというのに、結局水音は居眠りをしてしまい、


 「「いや、顔洗った意味ないじゃん!」」


 と、進と耕にツッコミを入れられてしまうのだった。


 とまぁそんな感じで、座学、昼食、午後の訓練と、その最中水音は、何度も寝そうにはなったが、どうにか踏ん張ることが出来て、漸くその日の訓練が終わり、夕食も済ませた後、


 「よし、今日も頑張るぞ!」


 と、水音は1人、資料保管庫へと向かった。勿論、ウィルフレッドからの許可も貰ってある。


 そして、いざ資料保管庫へと歩き始めたのだが、


 (ん?)


 その途中で、水音はピタリと歩みを止めると、


 (……何だろう。誰かに見られてる気がする)


 と、何処かから……というよりも、背後の方で誰かの視線を感じたので、水音はゆっくりと後ろを振り向いたが、


 「……いない……よな?」


 そこには誰もいなかったので、


 「うん、気のせいだな」


 と、水音はそう考えることにし、再びその場から歩き始めた。


 その後、水音が廊下の曲がり角を曲がった、まさにその時、


 「……」


 1つの「影」が、水音の後を追うように進み出したのだ。


 そして、水音が進んだ曲がり角を曲がろうとした、次の瞬間、


 「わぁ!」


 と、先に進んだ筈の水音がいきなり飛び出したので、


 「きゃあ!」


 と、驚いた「影」はそう悲鳴をあげながら、その場にドサッと尻餅をついてしまった。


 その様子を見て、


 (し、しまった! やりすぎたかな……)


 と、水音はその「影」に駆け寄ろうとすると、そこには、「いたた……」と泣きそうな顔で痛そうにお尻を摩る1人の少女がいたので、


 「……え? 時雨(しぐれ)さん?」


 と、水音がその少女をそう呼ぶと、


 「あ……桜庭……君」


 と、「時雨さん」と呼ばれた少女も、水音に向かってそう返事した。


 


 




 


 


 


 

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