第69話 それぞれの異世界生活
お待たせしました、新章の開始です。
そして、今回はいつもよりかなり短めの話になります。
ルーセンティア王国による「勇者召喚」こと「ルールを無視した異世界召喚」から、既に3日が過ぎていた。
召喚された「勇者」こと担任教師の爽子とクラスメイト達のもとを離れた春風は今、レナが育ったとある空間にて、
「はぁ!」
「ぐえっ!」
「せいや!」
「ぶはぁ!」
「ほらほら! もっと気合い入れてかかって来なさい!」
「は、はい! ヘリアテス様!」
レナの育ての母こと、「太陽と花の女神ヘリアテス」から戦闘訓練を受けていた。
アマテラスから新たな「お願い」を引き受けて、「今後の方針」が決まった翌日、レナは「ハンター」としての仕事に専念してもらう為、春風達と別れて、1人、自身が活動拠点にしている場所へと出発した。
そして、残された春風はというと、ヘリアテスとグラシア、そして精霊達から、この「エルード」という世界の現在の常識や一派的な基礎知識、更には自身の「力」の使い方や、戦闘技術などを学ぶことになり、3日が経った現在は、ヘリアテスを相手に組み手を行っている。
ただ、
「脇が甘い!」
「ふぐ!」
「もっと強く踏み込んで!」
「ぶげ!」
「そんな調子では弱い魔物にも勝てませんよ!」
「うぐああああああ!」
このヘリアテスという女神、見た目は10〜12歳くらいの幼い少女なのだがもの凄く強く、幾ら春風が攻撃を仕掛けても、それら全て軽くあしらっただけじゃなく、そこから見事に反撃に繋げてくるものだから、その結果、春風は何度もぶっ飛ばされるかぶん回されることになったのだ。
(うぅ、流石は女神様。『神』としての力を奪われても……結構強いんじゃないですか!?)
と、ヘリアテスからの何度目かのぶん回しをくらって地面に突っ伏した春風が心の中でそう呟いていると、
「春風さん……」
と、優しい口調でヘリアテスに声をかけられて、それに春風が「ふえ?」と返事しながら顔を上げると、
「へい、カモーン」
と、そこには何やらドス黒いオーラのようなものを纏った笑みを浮かべながら、誘っているかのように右手をクイックイと動かすヘリアテスがいたので、
(ひ、ひえええ……)
と、春風は心の中でそう悲鳴をあげた。
その夜、戦闘訓練を終え、食事を済ませた春風が、用意された自室のベッドでうつ伏せになりながら、
(ぬあああああ。今日もめっちゃ疲れたぁあああああ)
と、今日の戦闘訓練を思い出して、心の中で弱音を吐いていると、
「……って、今日の日記を書かなくちゃ」
と、ボソリとそう呟いた後、ゆっくりとベッドか起き上がって、近くにある机に向かった。
その机には一冊の本が置かれていて、春風はその本を開き、近くに置かれた羽ペンにインクをつけると、その本の何も書かれてない真っ白なページに、今日起きた出来事を書き記した。
そう、この本はヘリアテスが春風の為に用意した「日記帳」で、ヘリアテス曰く、
「日々の記録を書き記すことも、『修行』の1つです」
とのことだそうだ。
それから少しして、日記を書き終えた春風がふと窓の外を見ると、
(ああ、今日も月を星々が綺麗だなぁ……)
と、夜空に輝く月と星に向かって、心の声でそう呟くと、
「そういえば、先生やクラスのみんなどうしてるかなぁ?」
と、ルーセンティア王国に置いてきた爽子とクラスメイト達のことを思い出して、「うぅ……」と今にも泣き出しそうな表情になりながらそう口に出したが、すぐに顔をブンブンと横に振って、
「ま、考えても仕方ないよな?」
と、気持ちを切り替えるようにそう口に出すと、机から離れて再びベッドにゴロンと寝転がった。
そして、自室の天井を見つめながら、
「ユメちゃん。美羽さん。水音……」
と、小さな声で「大切な人達」の名前を口に出すと、
「俺、絶対に生きて、みんなと再会するから。だから、もう少しだけ待ってて」
と、呟いて、ゆっくりと目を閉じた。
だがしかし、この時の春風は知らなかった。
春風が出て行った後のルーセンティア王国で、もう1つの「運命」が動き出そうとしていることを。
どうも、ハヤテです。
という訳で、今日から物語の第4章のスタートとなります。
今回はちょっと変わった流れの物語を展開していきますので、皆様どうぞよろしくお願いします。




