第56話 「今後について」の話し合い
レナとヘリアテスからのツッコミはあったが、アマテラスから新たな「お願い」を引き受けた春風。
その後、食堂内の雰囲気が変わり、
「さてと、今のこの世界の現状について確認したところで、次は今後の活動についての話し合いを始めるわ」
と、アマテラスがそう口を開いたので、
「「「「はい、わかりました!」」」」
と、春風、レナ、ヘリアテス、そしてグラシアはそう返事した。
その返事を聞いた後、
「まず、私達の最終目標は、『エルード』と『地球』、2つの世界を消滅の危機から救うことで、それには女神ヘリアテスと神ループスの『神の力』を取り戻すことが必須になるわ。で、その為には現在この世界の『神』を名乗っている5人の『侵略者の親玉』達を倒さなくちゃいけない。ここまでは理解出来たわよね?」
と、アマテラスが春風達を見回しながらそう尋ねると、全員「理解出来てます」と言わんばかりにコクリと頷いた。
それを確認すると、
「レナちゃん」
と、アマテラスがレナそう声をかけてきたので、それにレナが「はい!」とビシッと姿勢を正しながらそう返事すると、
「グラシアさんが見た『未来』に現れた、『3人の悪魔』の1人として問うわ。世界の……いえ、大切な存在の為に、『神』と戦う覚悟はある?」
と、アマテラスは真剣な表情でそう尋ねてきた。
その質問に対して、
「あります! それで、大好きなお父さんとお母さんを助けられるなら!」
と、レナは真っ直ぐアマテラスを見ながらそう答えた。その答えを聞いて、
「うぅ、レナ……」
と、ヘリアテスが感動するかのように目をウルウルとさせている中、アマテラスは「そう……」と呟くと、
「春風君。あなたはどうなの?」
と、今度は春風に向かってそう尋ねた。
その質問を聞いて、レナ、ヘリアテス、グラシアが春風に視線を向ける中、
「俺は……」
と、春風は答えるのを躊躇うかのように俯いたが、すぐに顔を上げて、真っ直ぐアマテラスを見つめると、
「俺は故郷を……俺の大切なものを守る為にここに来ることを決めました。その想いは今だって変わってませんし、その為だったら、俺は親玉連中と戦います」
と、アマテラス同じように真剣な表情でそう答え、最後に、
「それに、アマテラス様からの『お願い』を引き受けるって決めましたしね」
と、「はは」と弱々しく笑いながらそう付け加えたので、
「は、春風!」
「春風さん!」
と、それを聞いたレナとヘリアテスがパァッと表情を明るくした。
だが、その後すぐに、
「ですが、不安もあります」
と、春風が表情を暗くしながらそう言ったので、それにレナ、ヘリアテス、グラシアが「え?」と同時に首を傾げると、
「相手は一応『神』と名乗ってる連中です。『本物の神様』であるヘリアテス様達が勝てなかったのに、元々ただの人間だった俺が太刀打ち出来るのかって今も思ってますし、グラシアさんが見た『未来』に出てきた『青き悪魔』についてもわかりませんし……」
と、春風は再び俯きながらそう話を続けたので、それを聞いたレナが「あ……」と声をもらすと、
「確かに、春風君の言い分も一理あるわ。現状、まだわからない部分が多くあるしね」
と、アマテラスが「なるほどね」と言わんばかりの表情でそう言うと、
「でもね、春風君には悪いけど、ヘリアちゃんの話を聞いて、流石に不安とか言ってる場合じゃないんだよねぇ」
と、「困ったもんだわ」と言わんばかりに「はぁ」と溜め息を吐きながらそう言ったので、
「え、それってどういう意味ですか?」
と、春風がそう尋ねると、
「春風君。『神との契約』についての『ルール』を覚えてる?」
と、アマテラスにそう尋ね返されたので、それを聞いた春風は「え?」と首を傾げながらも、オーディンとの契約前の出来事を思い出し始めた。
数秒後、
「確か、人間が契約出来る神様は1柱までで、それ以上やると魂が崩壊してしまう……でしたよね?」
と、春風がアマテラスに向かって再びそう尋ねると、それに続くように、
「え、それ本当なの!?」
と、レナもヘリアテスに向かってそう尋ねて、
「ええ、本当よレナ」
と、ヘリアテスがそう答えると、
「その通りよ春風君。で、ヘリアちゃんが話してた『敵の親玉達の中には複数の神の力と意識が存在してる』って話も覚えてる?」
と、アマテラスが再びそう尋ねてきたので、
「は、はい、覚えてます……」
と、春風がコクリと頷きながらそう答えると、
「……って、あれ?」
と、何かおかしなものに気付いたかのように首を傾げた。
そんな春風を他所に、
「ねぇ、ヘリアちゃん」
と、アマテラスがヘリアテスに声をかけてきたので、
「はい、何でしょうか?」
と、ヘリアテスがそう返事すると、
「『連中から複数の神の力と意識を感じた』って話だけど、詳しく教えてくれるかしら?」
と、アマテラスがそう尋ねてきたので、それにヘリアテスが「わかりました」と言うと、
「正確に言いますと、親玉達の数は5人。で、その親玉ですが、1人の体の中に、数百柱の神の力と意識を感じました」
と、真剣な表情でそう答えた。
その答えを聞いて、
「1人の体の中に数百……って、ちょっと待ってくださいそれってまさか!?」
と、ハッとなった春風がアマテラスの方へと振り向くと、アマテラスはコクリと頷いて、
「そうよ。通常、人が神と契約出来る数は1柱まで。それ以上やると魂が崩壊してしまう。しかし、連中の中には既に数百もの神の力と意識が存在して、そんな状態で更にヘリアちゃん達の力を奪った。つまり……」
と、そこまで言うと、チラッと春風を見つめてきたので、その視線を受けた春風はゴクリと唾を飲んだ後、
「そいつらの魂が、崩壊するかもしれない……ということですね?」
と、タラリと汗を流しながらそう言ったので、それを聞いたアマテラスは黙ってコクリと頷くと、
「ちょ、ちょっと待ってください! 『魂が崩壊する』って、崩壊したら、どうなってしまうのですか!?」
と、レナが焦った様子でそう尋ねてきたので、
「……崩壊するということは、その存在が『完全に消滅する』ということです。そして、そうなってしまえば、その存在が持っている『力』や『技術』さえも消滅しまうということになります。つまり……」
と、ヘリアテスが暗い表情でそこまで答えると、チラッとアマテラスに視線を向けた。
その視線を受けて、アマテラスが「ふぅ」とひと息入れると、
「ヘリアちゃんとルーちゃんの力だけじゃなく、連中がこれまで奪ってきた神の力と意識までも消滅し……二度と取り戻すことが出来なくなってしまう……ということよ」
と、難しい表情でそう言った。
その答えを聞いて、レナが「そんな!」とショックを受けると、
「なら、俺達はどうすればいいのですか?」
と、表情を暗くした春風がそう尋ねてきたので、
「方法は1つ。崩壊する前に奴らの肉体を破壊し、中に存在する神の力と意識を解放するしかないわ」
と、アマテラスは更に真剣な表情で春風に向かってそう答えると、
「結局、倒すしかない……ということですか」
と、春風はそう言って、最後に「はは」と弱々しく笑った。




