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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第3章 異世界エルードの「真実」

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第52話 「始まりの悪魔」の伝説

 今回はいつもより少し短め(?)の話になります。


 今から250年前、とある小国に1人の男の子が生まれた。


 その男の子は、どういう訳か成人しないと授からない「職能」を既に持っていて、しかも見たことも聞いたこともない名前の「職能」だったので、それに驚いたその小国の国王と、当時の五神教会の教主と信者達は、その男の子を「神々がこの世界に寄越した奇跡の子」と讃え、以後国全体がその男の子と、男の子の生みの親である両親をサポートすることになった。


 それから長い月日が流れ、両親だけでなく国からの「愛」を受けたその男の子は立派な青年になり、自身が持つ「職能」の力を、両親や小国の住人達の幸せの為に振るっていった。


 そんな風に活躍していくうちに、青年は小国の国王にも認められただけでなく、愛する「家族」も手に入れて、彼はまさに幸せに包まれていた。


 ところが、そんな青年の活躍と幸せを妬ましく思った一部の人間達が、彼を罠にかけようと行動を起こし、その結果、青年は愛する「家族」や、自身を認めてくれた小国の国王をはじめとした大切な人達を失ってしまった。


 そして、悲しみに暮れる青年にまで、彼から大切な人達を奪った人間達の悪意が向けられた瞬間、彼の「職能」の力が暴走し、小国は一瞬にして消滅した。


 異変に気付いた五神教会の信者達が来た時には、小国の住人達は勿論、青年の姿も、そこにはなかったそうだ。


 「……これが、250年前に起きた出来事の全てにして、五神教会が今日まで語り伝えてきた『伝説』なのです」


 と、グラシアが最後にそう締め括った瞬間、食堂内がシーンと静まり返った。


 それから少しして、


 「も、もしかして、その人が持ってた『職能』が……?」


 と、春風が恐る恐るそう尋ねると、


 「そう、固有職能です。そして、その固有職能を持って生まれた人物こそが、この世界で最初に生まれた固有職保持者だったのです」


 と、グラシアはコクリと頷きながらそう答えた。


 するとそこへ、


 「なるほど。で、そのことを親玉連中はどう思ってたの?」


 と、今度はアマテラスがそう尋ねてきたので、


 「はい、先程話しましたように、当時の五神教会の人達は、その人物は『神々が寄越した子』となのだと思っていたのですが、実際には親玉達もその人物の存在に大層驚いていたみたいだったので、その事実にショックを受けた五神教会の人達は、その人物を『神々がこの世界に寄越した奇跡の子』から、『神々の加護を持たない悪魔の子』と認識を改めたそうなのです」


 と、その質問に対して、グラシアはアマテラスを見てそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「ふーん。つまり、その『最初に生まれた固有職保持者』ってのは、連中でも()()()()()()()()()()()()……ということになるのね」


 と、アマテラスが「ふむふむ」と考える仕草をしながらそう呟く中、


 (うーん。SF系の創作物でいうところの『突然変異体(ミュータント)』みたいなものなのかな?)


 と、春風もそう疑問に感じていると、


 「お、いいとこ突くねぇ」


 「中々面白い考えをするのですね」


 と、2柱の女神達にそう言われてしまったので、


 「ちょっと! 俺の心読まないでくださいよ!」


 と、春風は顔を真っ赤にしながらそうツッコミを入れた。


 その後、春風は「ゴホン!」と大きく咳き込むと、


 「そ、それにしてもグラシアさん! 『神々の加護を持たない悪魔の子』とは随分な呼び方をしますね!

 一体、どのような根拠とか理由があってそう呼ぶことになってしまったのですか!?」


 と、強引に話題を変えるような感じで、グラシアに向かってそう尋ねたので、


 「は、はい。実を言いますと、小国の消滅が引き金になったのか、あるいは何か()()()()があったのか、その『最初の固有職保持者』と同じように、固有職能を持った赤ん坊が世界各地で生まれるようになったのです。本来、『職能』というのはそれぞれ『神々の加護』が込められているのですが、固有職能にはその加護が全くなくて、その為に先程アマテラス様が仰ったように、親玉達でもその存在を感知することが出来なかったのです」


 と、グラシアは少し慌てた様子でそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「うわ。こりゃあ春風君の言う通り、『突然変異体』と呼んだ方がいいかもね」


 と、アマテラスがチラッと春風を見ながらそう言ったので、


 「すみません、そのネタ引っ張らないでください」


 と、春風は恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。


 そんな春風達を前に、


 「わ、私が言うのも変な話なのですが、 固有職保持者とはそれだけでもかなり厄介なのに、成長して自身の力の使い方をある程度理解出来るようになると、その力を利用して悪事を働く者までもが現れ出して、その為に大勢の人達が犠牲になったことから、それ以来全ての固有職保持者は総じて『悪魔の力を持つ者』と、そしてその始まりとなった『最初の固有職保持者』は、『始まりの悪魔』と呼ばれ人々から恐れられるようになってしまったのです」


 と、グラシアが再び少し慌てた様子でそう説明したので、それに春風とアマテラスが「へぇ、そうなんですか」と納得していると、


 「そ、それで、その……」


 と、グラシアは何故か気まずそうにチラッと春風を見ながらそう口を開いたので、


 「ん? どうしたんですかグラシアさん?」


 と、春風が首を傾げながらそう尋ねると、


 「ここから先は、()()()()()()()()()()()()()()()になるのですが……」


 と、グラシアは本気で答え難そうにそう言ったので、それに春風が「え?」と不安そうな表情を浮かべたが、


 「お、お願いします、教えてください」


 と、グラシアに向かって深々と頭を下げながらそう言った。


 その言葉にグラシアは「うぅ……」と呻いたが、


 「わ、わかりました」


 と、意を決したかのような表情でそう返事すると、ゆっくりと深呼吸して口を開く。

 

 「全ての固有職保持者達が、『悪魔』と呼ばれることになった元凶である『最初の固有職保持者』の職能が……」


 と、グラシアはそこまで言うと、真っ直ぐ春風を見て、


 「『賢者』なのです」


 と、そう言ったので、


 「……」


 数秒の沈黙後、


 「はぁあああああああ!?」


 と、春風は目を大きく見開きながら、驚きに満ちた叫びをあげた。


 


 

 


 

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