第37話 飛び出した先で
お待たせしました、第3章の始まりです。
ルーセンティア王国。
それは、異世界エルードに存在する国の1つ。
その首都である王都の門を潜って、今、1人の少女と1人の少年が、「外の世界」へと呼び出した。
少女の名はレナ・ヒューズ。
少年の名は、雪村春風。
2人は王都の門を出てからも、目の前に広がっている草原を全力で駆け抜けていた。
そして暫く走っていると、疲れが出てきたのか走るスピードがだんだん弱くなり、やがて限界を迎えたか、2人は小高い丘の上で止まると、その場でバタンと倒れた。
「「はぁ……はぁ……」」
ゴロンと仰向けになりながら、苦しそうに息をする春風とレナ。
その後、漸く落ち着いてきたのか、春風はゆっくりと目を開ける。
(うわぁ)
そこに広がっているのは、幾つもの白い雲が漂う青い空だったので、
(ああ、異世界でも空は青いんだなぁ……)
と、春風は心の中でそう呟いた。
すると、
「……ぷふ」
と、春風の隣の寝転んでいるレナからそんな声がしたので、春風は思わず「ん?」と彼女に視線を向けると、
「あは、あははは、あははははは!」
と、大きな声で笑い出したので、
「え、ど、どうしたんですかレナさん!?」
と、ギョッとなった春風がそう尋ねると、
「いやー、謁見の間での戦いぶりとか、国王様を前にした態度とか思い出したら、春風って凄い人なんだなって思って……」
と、レナは最後まで「あはは」と笑いながらそう答えた。
その答えを聞いて、
「あー、そのー……」
と、春風は王城内での出来事を思い出して、今になって恥ずかしくなったのか、顔が熱くなったの感じた。
(うーん。今鏡見たら、きっと真っ赤になってるんだろうなぁ)
と、春風はレナと同じように「あはは」と笑いながらそんなことを考えていると、急にフッと表情を変えて、ゆっくりと上半身を起こした。
それを見て、
「ん? どうしたの春風?」
と、レナが寝転がった状態のままそう尋ねると、
「レナさん……」
と、春風はレナに向き合うように姿勢を整えながらそう言うと、
「助けてくださって、ありがとうございました。そして、俺の問題に巻き込んでしまっただけじゃなく、レナさんまで危ないめにあわせてしまい、大変申し訳ありませんでした」
と、土下座するかのように深々と頭を下げながら、お礼を言いつつ謝罪した。
いや、するかのようにではなく、それはまさに土下座そのものだった言ってもいいだろう。
そんな春風を見て、
「え、ちょ、やめてよ春風! 私、全然気にしてないし! 春風を助けることが出来てよかったって思ってるし! 何より私、あいつら……というより、ルーセンティア王国自体嫌いだから!」
と、レナはガバッと起きながら、大慌てでそう言ったので、
「……え? それって、どういう意味……ですか?」
と、レナの言葉、特に最後の部分が気になったのか、春風はゆっくりと顔を上げながら、レナに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、レナは青空を見上げた後、ゆっくりと口を開く。
「ルーセンティア王国……ううん、正確に言えば、今この世界で暮らしてる人間達は……私のお父さんとお母さんを侮辱したの」
その答えを聞いて、春風は「は?」と首を傾げると、レナは「よっこいしょ」と言いながらゆっくりと上半身を起こして春風に向き合うと、
「ステータス、オープン」
と、自身のステータスウィンドウを出して、
「これを見て」
と、それを春風に見せた。
その行動に「え!?」と春風は最初戸惑ったが、
「えーっと、失礼します」
と、謝罪しながら、そのステータスウィンドウを見つめると、
「……はぁ!?」
と、春風は驚きのあまり「信じられない!」と言わんばかりに目を大きく見開いた。
何故なら、そこにはこう記されていたからだ。
名前:レナ・ヒューズ
種族:混血(獣人+妖精)
年齢:17歳
性別:女
職能:妖獣士
レベル:30
所持スキル:「獣化」「無限倉庫」「体術」「棒術」「槌術」「槍術」「鎌術」「杖術」「短剣術」「弓術」「投擲術」「炎魔術」「土魔術」「木工」「鍛治」「裁縫」「細工」「調合」「料理」「鑑定」「隠密」「偽装」「偽証」「魔力制御」
称号:「神に育てられし者」「固有職保持者」「新米ハンター」「半人前ハンター」「魔物を狩る者」
(おいおい、何だよこれ? スキルの構成は多少俺と似てるところがあるし……いや、そうじゃなくて、獣人と妖精の混血って、つまりハーフってこと!? 見た目人間の女の子なんだけど!? いやいやいや、それ以上に……)
と、レナのステータスを見て、春風は心の中で色々とツッコミを入れると、最後に、
「『神に育てられし者』って……?」
と、ボソリと声に出してそう呟いた。
その後、
「レナさん……あなたは一体……」
と、春風は改めてレナを見つめながらそう尋ねると、レナは真剣な表情で、
「そう。今はこうして『人間』の姿をしてるけど、私は人間達が『悪しき種族』と呼んでいる『獣人』と『妖精』のハーフ。そしてそれと同時に、奴らが『邪神』と呼んでいる、『月光と牙の神ループス』と、『太陽と花の女神ヘリアテス』は……私のお父さんとお母さんなの」
と、春風に向かってそう言い、最後に、
「ああ、といっても血の繋がった両親じゃなくて、『育ての両親』っていう意味だからね」
と、笑顔でそう付け加えた。
ただ、それを聞かされた春風はというと、
「……」
まさかのとんでもない事実にどう反応すればいいのかわからず、ただタラリと汗を流すだけだった。
その後、レナはゆっくりと立ち上がって、服についた汚れをパンパンと落とすと、
「来て、春風」
と言いながら、スッと右手を春風に差し出した。
それに春風が「え?」と反応すると、
「この世界の、本当の神様に会わせてあげる」
と、真剣な表情でそう言ったので、それを聞いた春風は再びスッと表情を変えると、
「お願いします」
と、彼女の手を握った。
どうも、ハヤテです。
という訳で、前書きにも書いたように、今日から物語の第3章の始まりとなります。
突然現れた少女レナと共にルーセンティア王国の外へと飛び出した春風に、一体何が待ち受けているのか?
彼の次の活躍に、ご期待ください。




