第36話 「外の世界」へ
お待たせしました、今章最終話です。
それと、いつもより短めの話になります。
爽子とクラスメイト達、そして、大切な人達への別れ(?)を終えて、春風は今、「ハンター」の少女・レナと共に廊下を走っていた。
そんな状況の中、
「あのぉ、レナさん」
と、春風が走りながらレナに声をかけたので、
「ん? なぁに、春風」
と、レナも走りながら返事すると、
「今更だとは思ってますが一応質問しますけど、ここってルーセンティア王国の王城の中なんですよね?」
と、春風はレナに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「そうだよ。どうしたの?」
と、レナがそう尋ね返すと、
「その……俺達何処に向かって走ってるんですか?」
と、春風は更にそう尋ねたので、それにレナが「う!」と走りながら呻くと、
「あー。実を言うとね、私……ここには侵入って形で入ったんだよねぇ」
と、気まずそうにそう答えたので、
「……え? じゃあ何処に向かって走ってるんですか?」
と、春風は不安そうに更に尋ねた。
その質問を聞いて、レナは「やばい!」と思ったのか、
「だ、大丈夫! 私には今、強い味方がいるから! だから安心して!」
と、元気よくそう言ったので、
「わかりました、レナさんを信じます」
と、春風はそう返した。
その後、レナに案内されるように、春風は今いるルーセンティア王国の王城内を駆け抜けて、それから暫くすると、レナが1つの扉の前で止まったので、
「レナさん、ここって……?」
と、春風がそう尋ねると、
「うーん。まぁ、裏口みたいなものかな?」
と、レナはとぼけた感じでそう答えたので、
(な、なんか不安になってきたぞ)
と、春風はタラリと汗を流したが、
「さぁ早く、急いで!」
と、レナはそそくさとその扉を開けてその向こうへと駆け出したので、
(えーい、男なら何とやらだ!)
と、春風も覚悟を決めて、彼女の後を追った。
扉の向こうは本当に王城の外のようで、
(えっとぉ、レナさんは……)
と、春風がレナを探そうと辺りを見回すと、
「こっちこっち!」
と、少し離れた位置でレナが手招きしているのが見えたので、春風はすぐに彼女のもとへと向かい、その後合流すると、再び彼女に案内されるかのように出発した。
そして、暫く進んでいると、
「わぁ!」
そこには、見たこともない建物が数多く建っていたので、
「レ、レナさん、もしかしてあそこって……?」
と、春風が目の前の光景を指差しながら、レナに向かって恐る恐る尋ねると、
「そうだよ。あそこがこのルーセンティア王国の首都、『王都』だよ」
と、レナはコクリと頷きながらそう答えた。
その答えを聞いて、春風はその「王都」を見ながら「おぉ……」と少し感動していると、
「さ、こっちだよ春風」
と、レナはまたその場から進み出したので、春風も急いでその後を追い、やがて彼女と共に王都へと足を踏み入れた。
そこは先程語ったように、大小様々な見たこともない建物が建っていて、その建物の間の通りには、沢山の人達が行き交っていた。
ただ、
「なんか……全部白いんですけど!?」
と、春風がレナに向かって小声でそう言ったように、どの建物も真っ白に塗られていて全体的に見れば綺麗ではあるが、春風はそれに何処か奇妙なものを感じていたので、
(ああ。俺は本当に異世界に来たんだなぁ)
と、春風は改めてそう思った。
そんな様子の春風を見て、
「春風、大丈夫?」
と、レナは心配そうに声をかけると、
「ん? ああ、大丈夫です。ご心配には及びません」
と、春風はニコッとしながらそう返事した。
その返事を聞いて、レナは更に心配そうな表情になったが、すぐに首を横に振って、
「ごめん、辛いだろうけどもう少しでこの王都の外に出られるから」
と春風に向かって励ますかのようにそう言ったので、春風はそれに「わかりました」と返事すると、2人はまたその場から駆け出した。
それからまた暫く走っていると、やがて大きな門が見えたので、
「あそこが外に通じる門だよ!」
と、レナがそれを指差しながら、元気よくそう言うと、
「わかりました!」
と、春風はコクリと頷きながら、レナと同じように元気よくそう言った。
そして漸く大きな門の傍まで近づくと、
「ん? おい、そこの2人!」
と、門番らしきシンプルな鎧を纏った男性が、春風とレナに向かって声を駆けてきたので、
「あれ? なんか呼ばれた?」
と、春風がそれに首を傾げると、
「問題ないよ、このまま突っ切る!」
と、レナは走るスピードを上げ出したので、
「よし、俺だって!」
と、春風もレナと同じように走るスピードを上げ出した。その際、
(ああ、やっぱり体が軽いな)
と、心の中で少し感動していた。
そんな2人を前に、
「お、おい! お前達止まれ! 止まれぇえええええ!」
と門番の男性が止めに入ったが、
「ごめんなさい!」
「すみません!」
と、レナ、春風の順に門番の男性に向かってそう謝罪すると、猛スピードで彼の横を通り過ぎていった。
そのあまりの出来事に、
「え? あ? えええ!?」
と、門番の男性は戸惑いを隠せない様子だったが、2人はそれを気にすることなく走っていった。
やがて、2人は大きな門を走りながら潜っていくと、目の前に違う景色が見え始めたので、
「見えた、外だよ!」
と、レナは前方を指差しながらそう言った。
その言葉を聞いて、
「外……か」
と、春風はボソリとそう呟くと、
「もしかして……怖い?」
と、レナは再び心配そうに声をかけてきたので、
「そりゃあ、怖いですよ。でも……」
「でも?」
「もうそんなこと、言ってられません!」
と、春風はまっすぐ前を見ながら、力強くそう返事した。
その返事を聞いて、
「そっか」
レナが満面の笑みを浮かべながらそう言ってるうちに、2人は王都の外へと飛び出した。
本日はもう1本あります。




