第33話 春風、初めての戦い?
「怪我しても文句言わない奴から……かかって来いやぁ!」
と、若い騎士達に向かってそう言い放った春風。
ただ内心では、
(とはいっても、今の俺レベル1だし、武器攻撃系のスキルもないし、勿論他のスキルもだけど。でもって先生やクラスのみんなの目の前で魔術を使うわけにもいかないし、ああもうほんと何でいきなりこんなことになってんだよう!?)
と、滅茶苦茶弱音というか泣き言(?)を吐いていた。
しかし、
「き、貴様ぁ!」
「もう容赦はしないぞ!」
と、向こうはそれぞれ剣を構えて、明らかに殺る気に満ちた様子だったので、
「仕方ないか……」
と、春風はボソリとそう呟くと、
「先生、みんなをお願いします!」
と、チラリと爽子を見ながらそう言った。
その言葉に爽子が「え? え?」と反応すると、
『うおおおおお!』
と、若い騎士達が春風に向かって突撃してきたので、
「……は! や、やめるのだ騎士達よ!」
と、漸く我に返ったウィルフレッドが若い騎士達に向かってそう命令したが、
『うおおおおお!』
残念なことに、彼らの耳には届かなかった。
そんな彼らを前に、春風は小さく呟く。
「……風の型」
そう呟いた次の瞬間、春風も閉じた状態の黒い扇を構えて、ダッと若い騎士達に向かって駆け出したので、
『な!?』
と、若い騎士達は目を見開いた。
そして、彼らの先頭に立つ騎士の目の前まで春風が近づいたので、
「こ、このぉ……!」
と、先頭の騎士が振り上げていた剣を春風に向かって振り下ろした。
しかし、
(遅いな)
春風はそれを難なく避けると、先頭の騎士の剣を握っている手目掛けて、
「ふ!」
と、持っている黒い扇を振り下ろした。
その瞬間、「ゴ!」という鈍い音がして、それと同時に、
「ぐああ!」
と、先頭の騎士はそう悲鳴をあげながら、持っている剣を手放した。
それを見て、
「な! 貴様……!」
と、他の騎士が今度は春風に向かって剣による刺突攻撃を繰り出してきたが、
(遅いよ)
と、春風は体を回転させながらこちらも避けた。
そして、先程の先頭の騎士と同じように、
「ふ!」
と、剣を握っている手目掛けて扇を振り下ろした。
ーーゴ!
「ぐうう……!」
という音と共に騎士の悲鳴があがり、先頭の騎士と同じように剣を落とした。
それを見て、春風が「よし……」と頷くと、
『お、おのれぇえええええ!』
と、今度は2、3人の騎士達が、一斉に春風に向かってきた。
そして、彼らの剣が同時に春風に向かって振り下ろされたが、
(おおっとっと!)
春風はクルッと体を回転させながら、その攻撃も避けた。
その後、春風は最初に手を出してきた先頭の騎士の前に立つと、持っていた扇をポケットにしまって、
「ちょっと失礼!」
と、一言そう言うと、「へ?」と呆けている先頭の騎士の向きを他の騎士達の方へと動かして、
「そら、よ!」
と、その他の騎士達に向かって先頭の騎士を思いっきり蹴り飛ばした。
「うわわぁ!」
『お、おいちょっと待て……!』
と、突然のことに驚く先頭の騎士と他の騎士達。
止まろうとしたが時既に遅く、
『うわぁあああ!』
と、お互い思いっきりぶつかり合って、最後は全員その場に倒れ伏した。
そしてそれを見て、
「ふぅ……」
と、春風はひと仕事終えたかのように、腕で額の汗を拭う仕草をした。
その光景を見て、ウィルフレッドは勿論、彼の家族や、爽子とクラスメイト達までもがポカンとしている中、
「きき、貴様ぁあああああああ!」
という怒声が響き渡ったので、
「ん?」
と、春風がその声がした方向へと振り向くと、
(あ、ジェフリー教主が怒ってる)
そこには、怒りで顔を真っ赤にしたジェフリーがいた。
「貴様ぁ! 騎士達になんということを!」
と、春風に向かってジェフリーがそう怒鳴ってきたので、
(ええ? 何であんたが怒るんだよ? 普通ここはウィルフレッド陛下が怒鳴るところだろ?)
と、春風はそう疑問に思いながら、チラッとウィルフレッドを見ると、
「……」
ウィルフレッドは口を開けたまま呆然としていたので、
(おいいいいい国王様ぁ! あんたんとこの騎士達がやられてるんですけどぉ!?)
と、春風は心の中でウィルフレッドに向かってそうツッコミを入れたが、すぐに首を横に振ると、
「先に手を出してきたのは彼らの方だ! 文句は言わせないぜ!」
と、チラッと倒れ伏している騎士達を見ながら、ジェフリーに向かってそう言い放った。
その言葉を聞いて、ジェフリーは「ぐぬぬ……」と顔を歪ませたが、
「……」
それと同時に、何故か頬を赤くしながらこちらを見つめるイヴリーヌの姿があったので、
(は、いかんいかん! 今はこちらに集中しなくては!)
と、春風は再び首を横に振った。
すると、
「んん?」
なんと、この場にいる残りの騎士達も、全員春風の前に移動すると、全員、一斉に剣を鞘から抜き始めたので、
「何だよ! あんた達もやろうっての!?」
と、春風は怒鳴るように残りの騎士に向かってそう尋ねたが、
『……』
全員、無言で剣を構え出したので、
「……そうかよ」
と、春風もポケットから扇を取り出して、それを構えた。
その瞬間、
「ま、待て! 待つのだ騎士達よ!」
と、ハッとなったウィルフレッドが再び止めようとしたが、
「いいえ! 止めてはなりません陛下!」
と、ジェフリーがウィルフレッドに向かってそう言うと、
「さぁ、ルーセンティアの騎士達よ! その剣をもって、そこにいる不届き者を斬り捨てるのだぁ!」
と、残りの騎士達に向かってそう命令したので、
『はっ!』
と、彼らはそれに従うかのように、持っている剣を握る力を強くした。
そして、そんな彼らを見て、
「そ、そんな……!」
と、爽子がショックを受け、クラスメイト達も顔を真っ青にし、
(やるしか……ないか)
と、最後に春風もそう覚悟を決めた、まさにその時、
「こらぁあああああああ!」
『っ!』
何処からか少女のものと思わしき怒声が聞こえたので、驚いた春風達が「何事!?」と周りをキョロキョロし出しと……。
ーーズゴン!
「ぐああ!」
と、鈍い音と共に目の前にいる騎士達の1人がそう悲鳴をあげて倒れ伏し、その後すぐに、何かが春風と騎士達の間にシュタッと降り立った。
突然のことに春風は一瞬呆けたが、その目の前に現れた何かを見て、
「え……人?」
と、小さく声をもらした。
その後、突然現れたその何か……否、人物は、春風の方へと首を動かすと、
「突然ですが、私、レナと申します! 助太刀させてください!」
と、春風に向かって名乗りながらそう言った。
謝罪)
どうも、ハヤテです。
本日、誠に勝手ながら、今後の物語の展開の為に、第23話と前回の話の内容を一部修正させてもらいました。
本当に申し訳ありません。




