第2話 目覚めた先で
(……ん、んんん。あれ?)
目を覚ますと、春風は真っ暗な闇の中にいた。
(ここは……何処だろう?)
と、意識が完全に覚醒してない中、春風はゆっくりと首を動かしながら周囲を見回したが、やはり真っ暗な闇の中にいるという事実は変わらないようで、
(どうして俺、こんな所にいるんだ?)
と、春風は首を傾げながら、そう疑問に思った。
するとその時、目の前が光り輝いて、
(ん? 何だ?)
春風の目の前に3つの「光」が現れたのだ。
その「光」は人の形をしていて、1つは男性。残り2つは女性の形をしていた。
春風はそんな人の形をした3つの「光」を見て、
(え、何? この人達は……っていうか、人なのか?)
と、春風が再びそう疑問に思っていると、
「春風」
と、男性の形をした「光」からそう声が発せられたので、
(え、何で俺の名前を……?)
と、春風は男性の形をした「光」に向かって、何故自分の名前を知ってるのか尋ねようとしたが、
(……あれ? 声が出ない)
と、何故かそれを声に出すことが出来なかった。
そんな春風を前に、
「春風。私達の春風」
今度は女性の形をした「光」から、そう声が発せられて、それに続くように、
「私達の、大切な春風」
と、もう1つの女性の形をした「光」からも、そう声が発せられた。
その「光」達の声を聞いて、
(何だろう。1人(?)は知らないけど、残りの2人(?)は知ってる気がする?)
と、春風がまたそう疑問に思っていると、男性の形をした「光」が、
「よく聞くんだ、春風」
と、春風に向かってそう言ったので、それを聞いた春風が「え?」と首を傾げていると、
「今、君の故郷が……『地球』が大変なことになってしまっている」
と、男性の形をした「光」が続けてそう言った。
その言葉を聞いて、
(……は?)
と、春風は何を言ってるのかわからないと言わんばかりにポカンとしたが、そんな春風を無視するかのように、
「そうよ。そしてこのままだと、あなたはまた、『大切なもの』を失ってしまうの」
と、今度は女性の形をした「光」がそう言ってきたので、
(……はぁ!?)
と、春風は目を大きく見開きながら、心の中で驚きの声をあげた。
そして、春風は無駄だとわかっていながらも、「光」達に向かって「一体何を言ってるんだ!?」と尋ねようとしたが、それを遮るかのように、
「だから、早く目を覚まして」
と、もう1つの女性の形をした「光」がそう言ってきたので、
(え、ま、待って! 何を言ってるの!? ていうか、あなた達は誰……!?)
と、それを聞いた春風は、やはり無駄だとわかっていながらも、目の前にいる3つの「光」達に向かってそう尋ねようとしたが、その瞬間、真っ暗だった周囲が急に眩しく光り出して、
(うわ、眩しい! いや、本当にちょっと……!)
と、春風は咄嗟に両腕で顔を覆った。その最中に、
「春風……」
と、男性の形をした「光」が何か言ってた気がしたが、
(は!? え、ちょっと待ってよ! ていうか眩し……!)
と、残念なことに今の春風はそれどころではなかった。
次の瞬間、
「……待ってったら!」
と、春風は声に出してそう叫んだが、
「……って、あれ?」
目の前に3つの「光」達がいないどころか、自身が今、全く別の場所で寝転んでいる状態だということに気がつき、
「ゆ……夢……だったのか?」
と、そう疑問を口にした後、春風はゆっくりと自身の上半身を起こした。
(何だよ……ここ?)
一応地面と思われる場所に座ってはいるが、そこは、先程までいた闇の中とは違って、見渡す限りの真っ白な空間のようで、建物や植物、更には人間どころか蟻1匹すらいなかったので、
「うわぁ、何この状況……?」
と、春風が再びそう疑問を口にすると、
「……って、あれ!? 俺、声出せてる!?」
と、そこで漸く自身が声を出して喋れることに気がついたので、
「よ、よかったぁ」
と、ホッと胸を撫で下ろした。
それから少しして、
「色々とわかんないことだらけだけど、とりあえず……」
と小声でそう呟いた春風は、ゆっくりとその場から立ち上がると、自分が今どんな状況に置かれているのかを確認し始めた。
まずは服装だが、現在、自分は通っている常陽学園高等部の制服を着ている。上は青い上着に白いワイシャツ、首にはワインレッドのネクタイつけていて、下は灰色の長ズボン、両足には上履きを履いている。
そして、顔には眼鏡をかけてはいるが、この眼鏡、実は度が入ってない伊達眼鏡で、本来春風の視力は良い方なのだが、訳あって、今はその伊達眼鏡をつけているのだ。
その後、春風は上下のポケットを調べ始めた。
最初に長ズボンのポケットだが、左側のポケットには何も入ってなくて、右側のポケットには最新のスマートフォンが入っていた。
春風はすぐにそのスマートフォン(以下、スマホ)を手に取り、電源を入れたが、
「……反応なし、か」
幾ら電源を入れても、画面は真っ暗なままで何も表示されないので、春風はガックリと肩を落とした。
それからすぐに、春風はスマホを自身のズボンのポケットに入れると、今度は上半身を調べ出した。
その結果、青い上着の外ポケットには何も入ってなかったが、内側についている2つのポケットにはというと、右側のポケットには財布と生徒手帳、そして、紙に包まれた飴玉が2つ入っていて、左側のポケットにはというと、
「よかった。『お守り』もちゃんと持ってる」
と、春風がそう呟いたように、そこには、「お守り」と呼んでいる「あるもの」が入っていた。その「お守り」とはどんなものか、何処で手に入れたかについては後の話で語る為、今は伏せておくとしよう。
さて、一通り自身の状態を確認すると、
「うっ!」
突然頭痛に襲われてしまい、春風は思わず顔を顰めた。
そしてその瞬間、
「……そうだ。思い出した」
と、少し前に教室で起きた「異変」を思い出した。
「ユメちゃん。美羽さん。水音。先生。みんな……」
と、春風は震えたそう呟くと、自分の目の前で消えた人達のこと思い出して、悲しそうな表情を浮かべた。
その時だ。
「目を覚ましたみたいね、雪村春風君」
と、若い女性の声がしたので、
「え!? だ、誰!?」
と、驚いた春風は辺りをキョロキョロと見回した。
すると、
「こっちこっち!」
と、正面の方で再び若い女性の声がしたので、春風がすぐにその声に従って正面を見ると、
「ヤッホー!」
「よう!」
「やあ」
そこには、白いワイシャツと青いジーンズ姿をした、1人の女性と2人の男性が立っていた。
因みに、3人共靴を履いてなくて裸足だった。