第27話 揺れる勇者達
次々と明らかになっていったクラスメイト達の職能。
その中でも、正中純輝、力石煌良、小日向優の3人が、水音と爽子と同じ最上位の職能を持ってることがわかって、
「おお、なんと素晴らしいことか!」
「うむ、これでルーセンティア王国……いや、この世界が救われるぞ!」
と、周囲からそう声が上がった。
一方、爽子やクラスメイト達はというと、
「ど、どうしよう」
「いや、どうしようって……」
「だ……大丈夫かなぁ」
と、自分達のステータスを見て不安そうな表情を浮かべながらざわざわし出すクラスメイト達を、
「み、みんな! 今は取り敢えず落ち着いて……!」
と、爽子が必死になって宥めていた。
そして、最後に春風の方は、
(全員が上位……高ランクの職能保持者。その中でも先生と水音、正中君に力石君、そして小日向さんが最上位……最高ランクの職能保持者か)
と、爽子とクラスメイト達を見て冷静に分析すると、
(ラノベや漫画だったら、こういう時って大抵1人くらいは最弱職能持ちか、生産関係の職能持ちがいるところなんだけど、いないってことは全員がそれだけ優れているか、もしくは5柱の神々とやらが真面目に仕事してるかのどっちかなんだろうなぁ)
と、そう考えて、最後に「まさかなぁ」と言わんばかりに、
「ふ……」
と、小さく鼻で笑った。
すると、
「ふむ。どうやら全員、自分のステータスを確認出来たようだな」
と、ウィルフレッドがそう口を開いたので、クラスメイト達が「あ……」と反応すると、爽子はキッとウィルフレッドを睨んで、
「……ウィルフレッド陛下、私とこの子達をどうするおつもりですか?」
と、丁寧ではあるが明らかに「怒り」に満ちた口調でそう尋ねた。
そんな爽子の質問に、ウィルフレッドは「う……」と一瞬怯んだが、すぐに真剣な表情になって、
「勿論、其方達にはここで暮らしてもらう。『勇者』とはいえ、其方達はレベル1……一番弱い状態であるから、まずは『力』について学び、その使い方を身につけてもらう予定だ」
と、真っ直ぐ爽子を見ながらそう答えた。
その答えを聞いて、
「そんな!」
「こ、怖いよ……」
と、クラスメイト達の中から不安と恐怖に満ちた声があがったので、それを見た爽子は再びキッとウィルフレッドを睨むと、
「ウィルフレッド陛下。もし……もしもですよ? 仮に私達が『邪神』とその『眷属』を倒した時、あなたは……あなた方この世界の住人達は、私達に何をしてくれるのですか?」
と、真っ直ぐウィルフレッドを見て、再び丁寧ではあるが「怒り」に満ちた口調でそう尋ねた。
その質問を聞いて、ウィルフレッドは再び「う……」と一瞬怯んだが、すぐに真剣な表情になって「コホン」咳き込むと、
「勿論、その時には其方達を『英雄』と称え、それ相応の報酬を渡すことを約束しよう」
と、真っ直ぐ爽子……いや、爽子ら「勇者」達に向かってそう言った。
その言葉を聞いて、
(……ああ、これは駄目だな)
と、そう思った春風は周りに気付かれないように、「失望」に満ちた表情になった。
そんな春風を他所に、
「え、英雄……?」
「ど、どうするよ?」
「いや、どうするって……」
と、クラスメイト達がウィルフレッドの言葉に揺らいでいる中、
「……わかりました。あなた方に従います」
と、爽子がそう口を開いたので、
(え、先生?)
と、春風が意外なものを見るかのように目を見開き、
「お、おおそうか、戦ってくれるのか……?」
と、ウィルフレッドが表情を明るくすると、
「ただし!」
と、爽子が語気を強めながらそう言ってきたので、春風とウィルフレッド、そしてクラスメイト達やその他の人達までもがビクッとなると、
「戦うのは、私1人だけです! この子達に……大切な生徒に、危険なことはさせません!」
と、爽子はまた真っ直ぐウィルフレッドを見てそう言った。
その言葉を聞いて、
(せ、先生ぇ……)
と、春風がジーンと感動していると、
「……だ、だったら、僕も戦います!」
と、それまで黙っていた純輝が「はい!」と手を上げたので、
「ま、正中……!」
と、爽子が「駄目だ!」と言おうとしたが、それよりも早く、
「こ、怖いですけど、先生1人に戦わせるなんて嫌ですし……僕も、先生と同じ最上位職能を持ってますしから」
と、純輝が体を震わせながらもそう言ったので、爽子は思わず「うぅ!」と呻いた。
そして、そんな純輝の言葉に反応したのか、
「なら、俺も戦おう」
と、今度は煌良がそう口を開いたので、
「り、力石君……」
と、純輝が声をかけようとすると、
「勘違いするな。俺は『英雄』なんてものには興味はないし、この世界がどうなろうとも知らん。ただ、『邪神』というのがどんな奴か、戦ってみたいだけだ」
と、煌良は不遜な態度でそう言ったので、
(いや、『勇者』としてそのセリフはどうなの!?)
と、春風は心の中で煌良に向かってそうツッコミを入れた。
そして、そんな春風を他所に、
「わ、私も、戦います! この世界は……何とも言えませんけど、クラスのみんなは、守りたいですから!」
と、優も「はい!」と手を上げながらそう言ったので、
「お、俺は……!」
「ど、どうする……」
「こ、怖い……けど!」
と、クラスメイト達は「共に戦う」か「戦わない」かで意見が分かれ始めた。
そんな彼らを見て、
「ちょ、ちょっとみんな、落ち着いて! 落ち着くんだ!」
と、爽子が大慌てで宥めようとし、
「お、おおそうかそうか! 其方達も戦ってくれるか……!」
と、ウィルフレッドは勿論、その周囲の人達も、純輝達の言葉に表情を明るくしていった。
その様子を見て、
(……どうやら、ここまでのようだな)
と、春風は「はぁ」と溜め息を吐きながら、心の中でそう呟くと、
「あのぉ、すみません!」
と、「はい」と手を上げながらそう口を開いたので、その言葉に爽子とクラスメイト達、そしてウィルフレッドと周囲の人達が、
『……え?』
と、一斉に春風に視線を向けた。
いきなり多くの視線を向けられて、
(うぐぅ! そ、そんな目で見ないでぇ!)
と、春風は心の中でそう呟きながら怯んだが、すぐに首横に振って、「よし!」と力強く頷くと、
「ウィルフレッド陛下」
と、ウィルフレッドに向かってそう声をかけた。
それにウィルフレッドが、
「な、何だろうか?」
と、返事すると、
「ちょっと、幾つか質問したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
と、春風は眼鏡を外しながら、ウィルフレッドに向かってそう言った。
謝罪)
どうも、ハヤテです。
前回の話なのですが、活動報告にも書きましたように、誠に勝手ながら、幾つか内容を修正させてもらいました。
修正)
小日向優季 → 小日向優
職能:巫女(上位職能) → 職能:大司祭(最上位職能)
他、一部の文章
読者の皆様、勝手なことをしてしまい本当に申し訳ありませんでした。




