第26話 クラスメイト達の「職能」
『ステータス、オープン!』
そう言って、クラスメイト達は爽子と同じように、自身の「ステータス」を出現させた。
その後、そこに記された自分達の「職能」を見て、
「あ、俺『重戦士』だ!」
「僕は『地導師』だよ」
「あたしは『剛弓士』……て、何これ?」
「私は……」
と、それぞれ異なる反応をし出した。
当然、
(あ、ユメちゃんに美羽さんもステータス見てる!)
その中には春風の大切な人である2人の少女もいて、どちらも自身の職能を見て、
「私は……『水導師』だって」
と、短い黒髪の少女がそう言い、
「私は『瞬剣士』ね」
と、長い茶髪をポニーテールにした眼鏡をかけた少女がそう言った。
さて、クラスメイト達が自身ステータス(特に職能)を見て様々な反応している中、
(うーん。みんなカッコよさそうな名前の職能を授かったみたいだなぁ)
と、春風は少し羨ましそうな表情になった。
無理もないだろう、何せ自分の職能の名前が「見習い賢者」なのだから。
さて、そんな心境の春風を他所に、ウィルフレッドだけでなく周囲の人達からも「おお!」と歓声があがっていたので、
「あ、あの、ウィルフレッド陛下……」
と、爽子が恐る恐る口を開くと、それに気付いたウィルフレッドはハッとなって、
「し、失礼した爽子殿。生徒殿達の職能を聞いて、つい舞い上がってしまって……」
と、恥ずかしそうに顔を赤くしながら謝罪した。
そんなウィルフレッドの謝罪を聞いて、
「その……この子達の職能とかいうのも、凄いものなのですか?」
と、爽子が首を傾げながらそう尋ねると、
「うむ、どの職能も爽子殿ほどではないが、皆、高いランクのものばかりなのだ」
と、ウィルフレッドは真面目な表情でコクリと頷きながらそう答えたので、
(へぇ。まぁ『勇者』なんだから、それくらいは当然……なのかな?)
と、春風はそう疑問に思った。
その時だ、
「あの、すみません!」
という声があがったので、春風は思わず「ん?」と、声がした方へと振り向くと、
(え? 水音?)
そこにいたのは、クラスメイトの1人にして、春風の大切な人の1人である濃い茶髪の少年だった。
恐る恐る手を上げているそんな少年に、
「む、其方は?」
と、ウィルフレッドがそう尋ねると、
「その、僕……じゃなくて、自分は桜庭水音と申します。実は、自分、『神聖戦士』の職能を持っているのですが……」
と、少年・桜庭水音ーー以下、水音は自己紹介しながらそう答えたので、
「おお、なんと! 爽子殿の他にも最上位の職能を持つ者がいたとは! して、一体どうしたというのだ?」
と、ウィルフレッドは再びそう尋ねた。
するとその質問に対して、水音は言い難そうな表情をしたが、すぐに意を決したかのような表情になって、
「……実は、『称号』のところに、『アムニスの加護を受けし者』って記されていて……」
と、自身の「称号」の1つを指差しながらそう答えた。
次の瞬間、
「な、何ですと!? それは、本当なのですか!?」
と、ウィルフレッドの周囲にいる人物の1人である、「偉い神官」を思わせる少々派手な装飾が施された立派な白い法衣のようなものを着た男性が、目を大きく見開きながらそう尋ねてきたので、
「ふえ!? え、えっとぉ、あなたは?」
と、ビクッとなった水音がそう尋ね返すと、男性はハッとなって、
「こ、これは失礼しました。私は、『五神教会』の教主をしております、ジェフリー・クラークという者です」
と、先程の様子とは違って落ち着いた口調でそう自己紹介してきたので、
「は、はぁ。どうも……?」
と、水音はペコリと男性……否、ジェフリー・クラークーー以下、ジェフリーに向かって頭を下げた。
そんな状況の中、
(へぇ、『教主』ねぇ。てことは、あの人が一番偉い人ってことでいいんだよな?)
と、春風は少し鋭い眼差しをジェフリーに向けていると、
「いやぁそれにしても、水音様……で、よろしいでしょうか。最上位の職能を授かっただけでなく、偉大なる5柱の神々の1柱である『水の女神アムニス』様の加護を受けているとは、なんと素晴らしい!」
と、ジェフリーは目をキラキラと輝かせながらそう言ったので、
「そ、そうなんですか……」
と、それを聞いた水音は1歩後ろに下がった。勿論、水音だけでなく爽子やクラスメイト達、そして春風も、
(う、うわぁ……)
と、頬を引き攣らせながら1歩下がった。
ただ、
(それにしても、女神の加護かぁ。一体どうして水音にそんなものが……?)
と、春風は水音を見てそう疑問に思っていたが。
すると、
「せ、生徒殿達よ! 他にも最上位の職能、もしくは『神々の加護』を持っている者はいないだろうか!?」
と、慌てた様子のウィルフレッドが話題を変えようとしてそう口を開いたので、それを聞いたクラスメイト達が「え? え?」とざわざわし出していると、
「あの、自分は正中純輝と申します! 神様の加護はありませんが、先生と同じ『神聖騎士』の職能を持ってます!」
と、クラスメイトの1人である水音よりも薄めの茶髪をした、イケメンではあるが少し気の弱そうな少年が、「はい!」と手を上げたうえに自身の職能を周りに見せながらそう言ってきたので、
「ええ!? 正中も!?」
と、それを聞いた爽子が目を大きく見開きながら驚き、
「おお、其方も最上位職能を!」
と、ウィルフレッドはパァッと表情を明るくしたので、それを見た少年・正中純輝ーー以下、純輝は爽子とウィルフレッドに向かって「は、はい!」と何度も頷いた。
するとそこへ、
「すまない、俺もだ」
と、もう1人のクラスメイトであるクールそうな印象を持つ黒髪の少年がそう口を開いたので、
「むむ、其方は!?」
と、ウィルフレッドが少年に向かってそう尋ねると、
「力石煌良だ。俺も、そこにいる桜庭と同じく『神聖戦士』の職能を持っている。神々の加護はないが」
と、その少年・力石煌良ーー以下、煌良は国王を前にしてるにも関わらず、不遜な態度と偉そうな口調でそう答えた。
しかし、ウィルフレッドは特に気にしてないのか、煌良の言葉に「おお!」と表情を明るくさせていると、
「あの、すみません!」
と、今度は如何にも真面目そうな印象をした長い赤髪の少女が「はい!」と勢いよく手を上げたので、
「むむむ! 其方は!?」
と、ウィルフレッドが目をキラリとさせながらそう尋ねると、少女は「ひぃ!」と悲鳴をあげながらも、
「わ、私、小日向優と言います。『大司祭』の職能を持ってて、『ラディウスの加護を受けし者』と、『カリドゥスの加護を受けし者』の称号を、持ってます……」
と、ウィルフレッドに向かってそう答えた。
その瞬間、
「おおおおおおお! 何と素晴らしい! 私と同じ最上位職能である『大司祭』を持ってるうえに、神々のリーダーである『光の神ラディウス』様だけでなく『炎の神カリドゥス』様の加護までも受けているとはぁ!」
と、少女・小日向優ーー以下、優の言葉を聞いて、ウィルフレッドではなくジェフリーがパァッと表情を明るくさせながら、今にも踊り出すんじゃないかと思われるくらい喜びに満ちた叫びをあげた。
そんなジェフリーの叫びを聞いて、春風は「うわぁ」とドン引きしながらも、
(ふーん。正中くん、力石君、小日向さんも先生や水音と同じ最上位職能で、小日向さんにいたっては2柱の神の加護を受けている、ねぇ……)
と、クラスメイトである煌良と優をチラッと見ながら、心の中でそう呟いた。




