第248話 迫る不審な「影」
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
ナンシーの店での仕事を終えて、「白い風見鶏」へと帰ろうした春風とグラシア。
そんな彼ら……いや、正確に言えば春風の後ろ姿を、3つの不審な影が見つめていた。
スタスタと「白い風見鶏」へと続く道を歩く春風の後を、3つの不審な影が、気付かれないように息を潜めながら追いかける。
そして、あと少しで春風のその手が届こうとした、まさにその時、
「こんばんは!」
「「「っ!?」」」
急に春風が後ろを振り向きながら、笑顔でそう挨拶してきたので、それに驚いた3つの不審な影は、思わずビクッとなって全員動きを止めた。
それを見て、春風が更にニヤリと笑うと、3つの不審な影はすぐにその場から後ろに下がった。
夜空にて輝く月の光が、3つの不審な影の正体を照らし出す。
その姿に見覚えがあったのか、
「昨日の侵入者さん達か」
と、春風は目を細めながら、小声でそう呟いた。
その正体は、昨日のハンターの仕事から戻ってきた時に見かけた、3人のボロボロマントの「侵入者」達だった。
ただ、昨日は3人共フードをかぶっていたが、今は春風に驚いたのか、後ろに下がった拍子に全員フードが取れて、その素顔があらわになったので、
「……て言うか」
その素顔を見て、
「やっぱり、あなた方でしたか。新しい『宿泊客』のお姉さん達」
と、春風はそう言うと、最後に「はぁ」と溜め息を吐いた。
そう、「侵入者」達の正体は、「白い風見鶏」の新しい宿泊客である、ショートヘアの女性と三つ編みの少女、そして幼い少年の3人だったのだ。
3人の「侵入者」達の正体に、春風は「やれやれ……」と言わんばかりに自身の頭を掻くと、
「……何故、私達だとわかった?」
と、ショートヘアの女性が、春風に鋭い視線を向けながらそう尋ねてきたので、
「昨日、食堂であなた方を見た時から、何となくですが『ああ侵入者はこの人達』かって思いましてね。ただ、ここに来た狙いがわからないから、どうしたものかと悩みましたよ」
と、春風は再び「やれやれ……」と言わんばかりに頭を掻きながらそう答えた。
その答えを聞いて、幼い少年はピキッとなったのか、春風に対して「怒り」に満ちた表情で睨みつけた。
しかし、春風はその視線に構うことなく、
「ただ、ナンシーさんの店に現れた時は、流石にちょっと驚きましたねぇ。ああ言っときますけど、俺、この通り『男』ですからね! 別に、好きであんな格好したわけじゃありませんから! あくまでも、『ハンター』としての『仕事』で、仕方なくですからね!」
と、もしこの場にわかる人がいたら、
「いや、何処のツンデレキャラだよ!」
と、ツッコミが入ってきそうなセリフをわかりやすそうな「怒り」に満ちた表情で、目の前にいる3人の「侵入者」達に向かってそう言った。
しかし、
「「「……」」」
目の前の3人はそれに反応することなく、ただジッと春風を見つめていたので、
「ちぇ、ノリが悪いなぁ」
と、春風はボソリとそう呟くと、
「で、結局皆さんの『目的』は何なわけですか? まぁ、『訳あり』みたいなのはなんとなくわかりますが……」
と、表情を真剣なものに変えながら、「侵入者」達に向かってそう尋ねた。
その質問を受けて、三つ編みの少女と幼い少年が「う……」と2人して春風を警戒すると、ショートヘアの女性が1歩前に出て、
「すまないが、君には私達と一緒に来てもらう」
と、春風に向かって自身の右手を差し出しながら言った。
その言葉を聞いて、春風は「は?」と声をもらした後、
「おやおや、まさかのお誘いですか。『男』としては女性に誘われて悪い気はしませんが」
と、冗談を込めてそう返事したが、ショートヘアの女性はそんな春風の言葉に構うことなく、
「誤解しているようだが、私達は『悪さ』をする為にここに来たわけじゃない。すぐにでもここを離れたいが、君という『目撃者』がいた以上、君をこのままにするわけにはいかない。申し訳ないが、君には私達の『同行者』になってもらう」
と、かなり真剣な表情でそう言ったので、
「『嫌だ』と言ったら?」
と、春風は目を細めながら、ショートヘアの女性に向かってそう尋ねた。
そんな春風の言葉を聞いて、ショートヘアの女性は春風が本気で同行を断る気だと確信すると、
「……そうか、ならば無理矢理にでも共に来てもらう」
と、春風に向かって静かにそう言い、それに合わせたかのように、三つ編みの少女と幼い少年も、ショートヘアの女性と同じように1歩前に出た。
それを見て、春風は「うーん」と微妙な表情を浮かべながらそう唸ると、
「あー。申し訳ありませんがお姉さん方」
と、そんな表情のまま3人に向かってそう声をかけたので、それを聞いた3人が「え?」と言わんばかりの表情になると、
「いい加減、気付きませんか?」
と、春風は「はぁ」と溜め息をはきながら、呆れ顔でそう言った。
その言葉を聞いて、ショートヘアの女性が「何?」と声をもらすと、
「アメリアお姉ちゃん!」
と、何かに気付いたかのようにハッとなった幼い少年が、ショートヘアの女性のマントを掴みながらそう叫んだので、それを聞いた三つ編みの少女が「え?」と反応すると、
「っ! しまった!」
と、「アメリアお姉ちゃん」と呼ばれたショートヘアの女性はハッとなって周囲を見回し始めた。
次の瞬間、春風と3人の「侵入者」達の周囲にある建物の影から、複数の武装した男女が現れた。
その中には、
「……」
先程別れたばかりのレナと、
「よう」
「やぁ、こんばんは」
レギオン「紅蓮の猛牛」リーダーのヴァレリーと、レギオン「黄金の両手」リーダーのタイラー、そして、
「「「……」」」
アーデ、ディック、フィオナの姿もあった。
突如周りに現れた複数の人間達に、
「ね、姉さん……」
と、三つ編みの少女が怯えたような表情を見せ、
「く……」
と、幼い少年がそんな彼女を守るようにその身を寄せて、
「最初から罠を張ってたか……」
と、「アメリアお姉ちゃん」と呼ばれたショートヘアの女性がそう呟くと、
「さて、侵入者の皆さん」
と、春風が笑顔でそう口を開き、
「大人しく、捕まってくれませんか?」
と、「侵入者」達に向かって尋ねるようにそう付け加えた。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の展開を考えてたら、その日のうちに終わらせることが出来ずに、結局1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。




