第245話 グラシアの話を聞き終えて
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
そして、いつもより長めの話になります。
「……こうして、私はループス様とヘリアテス様、そして、レナ様と暮らすことになったのです」
と、春風とレナに向かって、自身の壮絶な人生から、死んで「幽霊」になった後のことを話したグラシア。
その後、
「これが、『グラシア・ブルーム』という女の全てです」
と、グラシアがそう話を締め括った瞬間、その場が何とも言えない空気に包まれ、そこにいる者達全員が何も言えないでいる中、
「ぐ、グラシアさん……」
と、春風がそう口を開いたので、それにグラシアが、
「何ですか春風様?」
と返事すると、
「その……何と言いますか……えっと……」
と、春風は何か言おうとしたが、頭の中がグチャグチャになっているのか、そこから先の言葉を出すことが出来ずに、
「すみません。グラシアさんが凄く辛い思いをしていたというのに、俺、何て言えばいいのか……」
と、頭を抱えながら、グラシアに向かって謝罪した。
そんな様子の春風を、
「は、春風……」
と、レナが心配そうな表情で見つめたが、レナもまた春風と同じように、グラシアの話を聞いて彼女に何を言えばいいのかわからずにいた。
すると、
「春風様……」
と、グラシアが話しかけてきたので、それに春風が「ん?」と反応すると、
「ありがとうございます。ですが、私のことは大丈夫ですので、どうか気にしないでください」
と、グラシアは穏やかな笑みを浮かべながら、優しい口調でそう言った。
そんなグラシアを見て、春風は今にも泣き出しそうな表情で何かを言おうとしたが、それでも何も言うことが出来ずに、
(ああ、もう! 何してんだよ春風! 『男』ならこういう時は何か気の利いたセリフを言うところだろうが!)
と、心の中で自分自身をそう怒鳴った。
しかし、それでも何も言うことが出来ず、
「……畜生。あーもう俺マジで情けない……」
と、最後は顔を下に向けながらそう呟いた。その際、キラリと何か雫のようなものが床に落ちたので、
(ああ。春風、きっと泣いてる)
と、それを見たレナは悲しそうな表情になったが、すぐに表情を変えて、
「春風、お茶を用意するね」
と、春風に向かってそう言うと、春風は腕で顔を拭う仕草をしながら、
「……うん、ありがとう」
と、レナに向かってお礼を言った。
それから暫くして、春風はレナが淹れてくれたお茶を飲んで「ふぅ」とひと息入れると、
「大丈夫?」
と、レナが心配そうな表情でそう尋ねてきたので、
「うん、もう大丈夫。おかげで落ち着いてきたよ」
と、春風はニコッとしながらレナに向かってそう答えた。
そんな春風を見て、レナだけでなくグラシアも安心したような表情を浮かべると、
「グラシアさん。あなたの話を聞いて、どうしても確認したいことがあるんですが、聞いてもいいですか?」
と、春風が真面目な表情でグラシアに向かってそう尋ねてきた。
それに対して、グラシアが「何ですか?」と返事すると、
「あなたが『絶対未来視』のスキルで見た『未来』を、断罪官の連中も見たというのは間違いありませんか?」
と、春風は真面目な表情を崩さずにそう尋ねたので、その質問にレナが「あ……」と声をもらすと、
「ええ、それは間違いありません。私が『未来』を見たあの時、あの場にいた断罪官の隊員達も一緒に見ていた感じでした。当然、私の大切な人達を殺したあの隊員と……私を殺したあの男、ギデオン・シンクレアも」
と、グラシアはコクリと頷きながらそう答えた。
その答えを聞いて、春風が「そうですか」と呟くと、
「は、春風、今の答えがどうしたの?」
と、気になったレナが恐る恐るそう尋ねてきたので、
「レナ、今のグラシアさんの答え……というか、グラシアさんの話で確信していることと不安に思ってることがあるんだ」
と、春風は更に真面目な表情でそう言った。
その言葉を聞いて、
「な、何?」
と、レナがゴクリと唾を飲みながら言うと、
「断罪官……と言うより、ギデオン・シンクレアは、『未来』の内容と、この世界の『真実』……そう、500年前にこの世界で起きた『本当の出来事』や、自分達『人間』という種族、そして5柱の神々の『正体』を知っている。知っていて、奴らのもとで働いているってことだよ」
と、春風が真剣な表情でそう答えたので、それを聞いたレナは、
「……あ! 確かにそうだよ!」
と、今になって気付いたかのようにハッとなり、
「ええ、そうですね。あの男も『未来』の内容を知ってます。そして、その『未来』を変える為に、今も『3人の悪魔』を探しているのでしょう」
と、グラシアが静かにそう言うと、
「ふふ、馬鹿な男ね。そんなことをしたところで無駄だというのに……」
と、鼻で笑いながらそう付け加えた。その時のグラシアの表情には、断罪官……いや、正確にはギデオン・シンクレアに対する『恨み』や『怒り』はなく、寧ろ『哀れみ』が込められていたので、
「ぐ、グラシアさん……」
と、そんなグラシアを、レナはなんとも言えないような表情で見つめた。
すると、
「グラシアさん。幾ら『無駄だ』と言われても、『納得出来るか!』って思ってしまったら、『何か行動を起こさずにはいられない』、『何かをするのをやめない』ってのが『人間』ってものですよ」
と、春風がそう口を開いたので、それにレナとグラシアが「え?」と反応すると、
「俺だってそうです。この世界と俺の故郷が消滅の危機に陥ったって聞いた時は、『そんなの絶対に嫌だ!』って思って、それをどうにかする為にこの世界に来たんですから」
と、春風は「はは」と苦笑いしながらそう言った。
その言葉を聞いて、レナだけでなくグラシアまでもが「あ……」と2人して声をもらすと、
「あのギデオンって人を擁護するってわけではありませんが、きっと、あの人だって、いきなり『どんなことをしても絶対に変えられない未来』なんて訳がわからないものを見せられて、おまけに自分達が崇めてる『神様』が死ぬなんて聞かされて、それで『納得出来るか!』ってなってしまったんだと思います」
と、春風がこの場にいないギデオンのことを思い浮かべているかのような表情でそう説明したので、
「……そう……ですよね」
と、グラシアは表情を暗くした。
その後、
「それで、春風様が『不安に思ってること』とは?」
と、グラシアが春風に向かってそう尋ねると、
「それはですね……」
と、春風はそう口を開き、
「レナ。俺とレナ、そしてもう1人の『悪魔』は、いずれ敵の親玉達と戦うことになるんだよね?」
と、レナに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、レナは「ふえ!?」と驚いたが、
「う、うん……グラシアさん達が見た『未来』の通りなら、そうなるんだろうけど……」
と、すぐにコクリと頷きながらそう答えると、
「それってつまり、『親玉達と戦う』ってことは、『断罪官』との対決は避けられないってことになるんだ」
と、春風はレナに向かって真剣な表情でそう説明したので、
「「あ! た、確かに!」」
と、それを聞いたレナとグラシアはハッとなった。
そして、そんな彼女達を無視して、
「もし、この先奴らと戦うことになってしまった時、果たして俺達は奴らに勝てるのかな?」
と、春風が尋ねるようにそう呟いた瞬間、
「そ、それは……」
「……」
と、レナだけでなくグラシアもその先を言うことが出来ずに、その場はなんとも言えない空気に包まれた。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の展開を考えていたら、その日のうちに終わらせることが出来ずに、結果として1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。




