第244話 「グラシア・ブルーム」という女・そして、彼女は……
予定通り、今回でグラシアさんの過去編最終話です。
そして、いつもより長めの話になります。
(あれ? ここって……)
スキル「絶対未来視」の効果が切れた瞬間、グラシアの周囲の景色がガラリと変わって、気がつくと元いた村の中にいたので、
「そっか、スキルの効果が切れたから戻れたんだ」
と、グラシアが納得したかのようにボソリとそう呟くと、
「な……何だ、今のは?」
「い、一体、何が……?」
と、グラシアの目の前にいる断罪官の隊員数名が、全員戸惑っているかのような表情で狼狽えていたので、その様子にグラシアが「ん?」と首を傾げると、
「き、貴様、一体我々に何をした……いや、何を見せた!?」
と、その中の1人である、かつてグラシアの両親を殺し、今、グラシアの大切な人を殺した隊員が、グラシアに向かって怒鳴りながらそう尋ねてきたので、その質問に対してグラシアは「え?」とポカンとした表情になると、
「……ああ、そうか。アンタ達も『未来』を見たんだ」
と、すぐに再び納得したかのような表情でそう呟いた。
その呟きを聞いて、隊員の1人が「何!?」と反応すると、グラシアはニヤリと口を醜く歪ませて、
「あは、これはいいわぁ」
と、再びそう呟くと、
「あははははははは! あははははははは……!」
と、狂ったように大声で笑い出して、
「いいわ、教えてあげる! 私とアンタ達わね、この世界の『未来』を見たのよ! それも、『どんなことをしても絶対に変えることが出来ない未来』をね!」
と、目の前にいる断罪官の隊員達に向かって叫ぶようにそう言った。
その叫びを聞いて、
「な、何だと!?」
と、グラシアの大切な人を殺した隊員がそう返事すると、
「そして今! その『未来』を見た瞬間、私に『ある言葉』が浮かび上がった! それも、この世界の『未来』を示す言葉を! それを今から教えてあげるわ!」
と、グラシアはそう言って、先程「未来」を見たグラシアの頭の中に浮かび上がった「とある言葉」を、目の前にいる断罪官の隊員達に向かって声高々に叫んだ。
「この『偽りの歴史』塗れたエルードにて『許されざる過ち』が犯された時、『真の神々』育てられし『白き悪魔』、『偽りの神々』に逆らいし『青き悪魔』、そして、『異界の神』と契りを結びし『赤き悪魔』現れん! その後、3人の『悪魔』達が並びし時、『偽りの神々』が滅ぶ未来が決定となる! その後、『偽りの神々』が全て滅びた時、『偽りの歴史』は終わり、3人の『悪魔』達によって、人々は新たな『未来』へと進むであろう!」
と、グラシアはそう叫び終えると、「ふぅ」とひと息入れた。
そんなグラシアの言葉を聞いて、断罪官の隊員達が顔を真っ青にしていると、グラシアはニヤリと笑って、
「わかる? アンタ達……」
と、小さくそう呟くと、
「アンタ達が信じてる『神様』は死んじゃうんだよ! 『悪魔』達に殺されて、死ぬってことなんだよ! ザマァ見ろ、バーカ!」
と、醜く口を歪ませながらそう叫び、最後に「あはは……!」と再び狂ったように大声で笑った。
そんなグラシアの言葉に、
「そ、そんな……まさか……」
と、グラシアの大切な人を殺した隊員は絶句していたが、
「……黙れ」
と、隣にいた別の隊員がボソリとそう呟いたので、それにグラシアの大切な人を殺した隊員が、
「何?」
と、反応すると、
「黙れ……黙れ黙れ……黙れ黙れ黙れ……黙れ黙れ黙れ黙れ……!」
と、隣にいた別の隊員が、「怒り」に満ちた表情でそう呟き、その後キッとグラシアを睨みつけると、そのままグラシアに向かって駆け出したので、
「ま、待て、ギデオン……!」
と、それを見たグラシアの大切な人を殺した隊員が「待った」をかけたが、それを無視するかのように、
「黙れぇえええええええ!」
と、「ギデオン」と呼ばれたその隊員は、怒りのままにそう叫びながら……。
ーーザシュ!
持っていた剣で、グラシアの首を刎ねた。
こうして、「時読み師」の固有職保持者であるグラシア・ブルームは、34歳の若さで、その人生を終えた。
終えた……筈だった。
「……あ、あれ?」
気がつくとグラシアは森の中にいた。
森の中は真っ暗で、辺りを見回しても自分以外は誰もいなくて、ふと上を見上げると、そこには大きな月が光る夜空が広がっていた。
その夜空を見た後、
「今、夜なの? ていうか、今までのって、『夢』なのかな……?」
と、グラシアは「訳がわからん!」と言わんばかりに「うーん」と考え込むと、
「……ん? 何?」
と、自分の身体に妙な違和感があることに気付いた。
よく見ると。両腕……というより、体全体どころか着ている服までもが青白く、さらに腕をジッと見つめると、その腕を通って地面が見えたので、
「な……何よこれ」
と、グラシアは驚いたが、そこから更に自分の両足に視線を向けると、
「ええ!? わ、私……浮いている!?」
なんと、グラシアの両足は地面についてなくて、代わりに空中に浮かんでいたので、
「透き通ってて、しかも浮いてるって……ま、まさか!」
と、グラシアは何かに気付いたかのようにそう言うと、その瞬間、自分は先程「ギデオン」と呼ばれた断罪官の隊員に首を斬り落とされたのを思い出して、
「いやぁあああああ! 私、『幽霊』になってるぅううううう!?」
と、頭を抱えながらそう悲鳴をあげた。
それから、3年の月日が流れた。
最初は「幽霊」となったことに戸惑っていたグラシアだが、いざ慣れてしまうと多少の不便さはあったがそれ以外は問題はなかったので、
「うーん、今日はどの辺りまで行こうかしら……」
と、死んで「幽霊」となったグラシアは、その時からエルードのあちこちを彷徨っていた。
そんなある時、偶々立ち寄った森の中で、何やら怪しい小さな光が飛んでいるのを見つけたグラシアは、
(あら? 何かしらあの光は?)
と、気になってその小さな光を追いかけることにした。
そして、その小さな光を追いかけた先で、
「え!? あれって、扉!?」
と、グラシアが驚いたように、そこには1枚の白い扉があって、その扉の向こうに先程までグラシアが追いかけていた小さな光が入っていくのが見えたので、
「ま、待って!」
と、グラシアも大慌てでその白い扉に入った。
扉の向こうは先程までいた森とは違う雰囲気をした別の森の中で、
「な、何かしら……ここ?」
と、グラシアがその雰囲気に見惚れていると、
「だーれぇ?」
と、すぐ傍で幼い少女の声がしたので、グラシアが「え!?」とその声がした方へと振り向くと、
「おねーしゃん、だーれぇ?」
と、そこには本当に3歳くらいの幼い少女がいた。
(な、何でここに女の子が!?)
と、驚いたグラシアが改めてその少女をよく見ると、
「え……白い狐の耳に、白い狐の尻尾?」
その少女の頭から白い狐の耳と尻尾が生えていたので、それを見たグラシアが大きく目を見開くと、
「レナー?」
「レナー、何処にいるんだー?」
と、今度は新たな少女と、少年のものらしき声がしたので、
(こ、今度は誰!?)
と、グラシアがその声に驚いていると、幼い少女のから少し離れた位置から、
「レナァ!」
大昔の東洋の民族衣装っぽい衣服を着た、長い金髪に金色の瞳を持つ10歳から12歳くらいの少女と、
「ここにいたのかよ!」
白と黒の毛並みを持つ1匹の子犬が現れたので、その存在に気付いた幼い少女は、
「おかーしゃん!」
と、金髪に金の瞳を持つ少女をそう呼び、
「おとーしゃん!」
と、白と黒の毛並みを持つ子犬をそう呼んだので、
「はああ!? お、『お母さん』に、『お父さん』!?」
と、幼い少女のその言葉に、グラシアが再び大きく目を見開きながら驚くと、それに気付いた「お母さん」と呼ばれた金髪と金の瞳の少女と、「お父さん」と呼ばれた白と黒の毛並みを持つ子犬が、
「「ん?」」
と、一斉にグラシアに視線を向けると、数秒後、
「「うぎゃあああああ! ゆ、幽霊だぁあああああ!」」
と、「幽霊」のグラシアを見て同時にそう悲鳴をあげ、
「えええええええ!?」
その悲鳴を聞いて、グラシアもそう驚きに満ちた叫びをあげた。
そして、そこから更に時が流れて、現在に至る。
どうも、ハヤテです。思ったよりも長くなりましたが、以上でグラシアさんの過去編を終了します。と言っても今章自体はまだ続きますが。
詳しく書こうとするともっと長くなってしまいますので、所々省かせてもらいました。
本当にすみません。




