第243話 「グラシア・ブルーム」という女・そして、彼女は「未来」を見た・2
お待たせしました、本日2本目の投稿にして、前回の話の「後編」です。
「『現在の出来事』の再生を終了します。そして、これより『どんなことをしても絶対に変えることが出来ない未来』をお見せします」
と、グラシアの頭の中でそんな声が聞こえた次の瞬間、グラシアの目の前で、異様な光景が映し出された。
子供の落書きのような見た目をした登場人物なのは変わらないが、そんな登場人物達が何処かの広い部屋で何やら「儀式のようなもの」を行なっていたので、
(な、何? 何が始まろうとしているの?)
と、グラシアがゴクリと唾を飲むと、次の瞬間、目の前が眩しく光り出した。
そして、その後すぐに光が弱まると、「儀式のようなもの」を行なっていた登場人物達の前に、新たな登場人物が25人も現れたので、
(え!? 誰!? あの人達なんなの!?)
と、グラシアが戸惑っていると、スーッと登場人物達が消えて、その後すぐに、目の前に2つの球体が現れた。
突然現れたその球体を、グラシアが「ん?」と首を傾げながら見つめていると、その球体にピシピシと亀裂が入った。それも、2つ同時にである。
そして、それから少しすると、亀裂がどんどん大きなっていって、それが球体全体にまで広がると、球体は2つ同時にボロボロと崩れて消滅した。
そんな奇妙な光景を見て、
「い……今のは、何?」
と、グラシアがそう呟くと、今度は目の前に新たな登場人物達が現れた。
それは、
(あ。本当の神々と赤ちゃんだ)
そう、『現在の出来事』の最後に出てきた、本当の神々と親を亡くした赤ん坊だった。
神々に愛されているその赤ん坊を見て、グラシアがほっこりしていると、赤ん坊はすくすくと成長していき、やがて年頃の少女を思わせるような姿となったが、周りが真っ暗な所為か、その少女は頭からつま先の部分まで真っ白で、その両目は金色に光っていた。
おまけにお尻のところから白い尻尾が生えていた為、それはまるで少女そのものではなく、少女の姿をした悪魔に見えたので、
「白い……悪魔?」
と、グラシアはそう呟いた。
すると、目の前にいた「本当の神々」と「白い悪魔」が消えて、また別の登場人物達が現れた。
今度の登場人物は6人のようで、5人の人物達の前に1人の人物がいる配置となっている。
5人の人物の方はというと、3人の男性と2人の女性となっていて、男性の方はそれぞれ全身に白、赤、緑のオーラのようなものを纏っていて、女性の方はそれぞれ全身に青、オレンジ色のオーラのようなものを纏っていた。
そんな5人の男女を見た瞬間、
(あれ? この人達って確か……)
と、グラシアはまるで何処かで見たかのような感覚に陥り、それから必死になって思い出そうとすると、
「……そうだ、あいつらは」
と、グラシアは思い出したのか、
「侵略者の親玉達だ!」
と、5人の男女を見てハッキリとそう言った。
そう。彼らこそが、500年前にこの世界に現れた「侵略者」達の親玉……即ち、現在の「5柱の神々」だった。
その5柱の神々を見て、
(どうしてあいつらが?)
と、グラシアが疑問に思っていると、ふと彼らの目の前にいる、もう1人の登場人物が目に入った。
それは、見たところ「年頃の少年」のようで、どうも5柱の神々を前に、何処か暗い雰囲気を出していた。
いや、よく見ると、その「年頃の少年」は、5柱の神々……いや、正確には青いオーラを纏った女性に何やら全身を押さえつけられていて、その所為で苦しそうな雰囲気を出していたのだ。
そんな苦しんでいる「年頃の少年」を見て、
「あ、あいつらなんてことを……!」
と、グラシアが憤った次の瞬間、少年の全身から、青い炎のようなものが噴出してきた。
それを見て、グラシアがギョッと目を大きく見開いていると、その青い炎のようなものは、まるで大きな手のような形に変化して、目の前の青いオーラを纏った女性だけでなく、他の4柱の神々を全て薙ぎ払った。
そして、目の前から5柱の神々が消えた時、「年頃の少年」の姿は変化していて、全身が青く染まり、その額から、大きな角のようなものが生えていたので、
「あ、青い……悪魔」
と、グラシアは先ほど見た「白い悪魔」と同じように、変化したその「年頃の少年」をそう呼んだ。
そして、次の瞬間、「青い悪魔」となった「年頃の少年」が消えると、また新たな登場人物達が現れた。
今度は大勢の男女が現れて、その目の前には先ほどの「青い悪魔」となった「年頃の少年」とは別の少年がいた。
大勢の男女はというと、その雰囲気的には「白い悪魔」を育てた「本当の神々」と同じだったので、
(もしかして、違う世界の神々……だったりして?)
と、グラシアが首を傾げていると、その「違う世界の神々(?)」の1人というか1柱が1歩前に出て、目の前の少年の顔、もっと言えば、彼の右目に手を触れた。
その瞬間、少年の全身が真っ赤に染まり、その背中から、2枚の赤い翼が生えてきたので、そのあまりにも異様な姿を見て、
「あ……赤い……悪魔」
と、グラシア恐る恐るそう呟いた。
その後、「赤い悪魔」となった少年の前から「違う世界の神々(?)」が消えて、代わりにその隣に、「本当の神々」に育てられた「白い悪魔」と、5柱の神々を薙ぎ払った「青い悪魔」が現れた。
そして、「3人の悪魔」の目の前に再び5柱の神々が現れ、彼らの戦いが始まり、その瞬間、グラシアの目の前が眩しく光ったが、その光が消えた時、戦いは……3人の悪魔の勝利に終わり、5柱の神々は地面に倒れ伏して、そのまま動かなくなったので、それを見たグラシアは、
(ああ、5柱の神々は死んだんだ)
と、納得したかのような表情を浮かべた。
それからすぐに、「死体」となった5柱の神々は消えて、それと入れ替わるように多く人々が現れると、3人の悪魔は、
「「「さぁ、行こう!」」」
と言わんばかりに、1つの方向を指差した。
その指の先には眩い「光」があったが、先ほどの戦いの時に見た光とは違って、まるで「希望」に満ちているかのような優しい雰囲気を出していたので、
(ああ、あれはきっと『とてもいいもの』なんだ)
と、その「光」を見たグラシアはそう感じた。
そして、3人の悪魔が人々をその「光」のもとへと導き出した時、グラシアの頭の中に、「とある言葉」が浮かび上がったので、
(……そっか。これが、『どんなことをしても絶対に変えることが出来ない未来』なんだ)
と、グラシアが再び納得の表情を浮かべると、
「『どんなことをしても絶対に変えることが出来ない未来』でした。以上を持ちまして、スキル『絶対未来視』を終了とさせてもらいます」
と、頭の中でそんな声が聞こえて、その瞬間、周囲の景色がガラリと変わった。
予定としましては、「次回」または「そのまた次回」で、グラシアさんの過去編を終了とします。




