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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第7章 対決、「断罪官」

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第238話 「グラシア・ブルーム」という女・幼少期編・2

 今回はいつもより長めの話になります。


 時は移って現在。


 「……これが、私と断罪官の『因縁』の始まりです」


 と、春風とレナに向かってそう語ったグラシア。


 「は、初めて聞いた、グラシアさんのこと……」


 そのあまりの出来事に、レナは顔を真っ青にしてタラリと汗を流したので、


 「……レナ、もしかして知らなかったの?」


 と、春風が俯いた状態でレナに向かってそう尋ねると、


 「う、うん。『とても悲しい出来事があって、その所為で死んだ』ってことしか聞いてなかった」


 と、レナはグラシアの方に体を向けたままそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「申し訳ありませんレナ様。全て話すには、レナ様はまだ幼かったですし、私自身もあまり話したくない内容でしたので……」


 と、グラシアが申し訳なさそうに謝罪しながらそう言ったので、それにレナが「う、ううん、気にしないで……」と返事すると、


 「あれ? じゃあ、お父さんとお母さんには話したんですか?」


 と、疑問に思ったレナはグラシアに向かってそう尋ねた。その質問に対して、


 「はい。レナ様が寝静まった後、私はループス様とヘリアテス様に、自分がどのように生きてどのように死んだかを説明しました。どちらも私の話を真剣に聞いてくださって、最後は優しくしてくださいました。あの方達にとっては『侵略者の末裔』の1人である、こんな私に……」


 と、グラシアはコクリと頷きながらそう答えると、


 「そ、そっか。お父さんもお母さんも知ってたんだ……」


 と、レナは「む……」と少し頬を膨らませながらそう返事したが、その際チラッと春風に視線を向けると、


 「……」


 春風は何故か苦しそうな表情で、右手で自身の頭を、左手で自身の胸をグッと押さえていたので、


 「は、春風!?」


 「春風様、どうかなさいましたか!?」


 と、それを見たレナとグラシアが驚くと、


 「……大丈夫。すぐに治まるから」


 と、春風はスッと左手を上げて、2人に対して「待った」をかけながらそう言った。


 その言葉に対して、レナは「で、でもぉ……」と狼狽えていたが、そんなレナを無視して、春風はゆっくりと深呼吸すると、自身の胸を押さえていた手を離して、ゆっくりとレナの方に顔を向けて、


 「ほら、俺はもう大丈夫だから」


 と、ニコッとしながらそう言った。


 そんな春風の言葉に、最初は「うぅ……」と何か言いたそうな表情をしたレナだったが、それでも春風は笑顔を崩さなかったので、


 「……うん。わかった」


 と、レナは春風の言葉を信じることにした。


 そんなレナを見て、春風は笑顔で「ありがとう」とお礼を言いつつ、


 (そっか。()は違うけど、グラシアさんも()()()()()()()()())


 と、心の中でそう呟いた。


 そう。実は春風は、グラシアの幼少期の出来事を聞いて、()()()()()と重ねていたのだ。


 何故なら、春風もまた幼い時に実の両親を亡くしたからだ。


 今は新しい「家族」や、優しい人達に囲まれて幸せな日々を送ってはいるが、それでも、両親が死んだ時のことを思い出した時や、もっと言えばその両親が死んだ日が近くなるにつれて、その時の記憶がフラッシュバックしたり、夜では「悪夢」として現れるようにもなったりして、それが春風をずっと苦しめていたのだ。


 そして、そういったことがずっと起こっていったので、


 (いつか、こんな『記憶』や『夢』に悩まされなくてもいい日が、来るのかなぁ?)


 と、いつしか春風はそんなことを考えるようにもなった。勿論、「家族を」はじめとした周囲の人達には内緒で、である。

 

 そして現在、グラシアの『過去』の話を聞いて、春風は今まさに、その時の記憶がフラッシュバックを起こしてしまい、それが春風を苦しめていたのだ。


 しかし、


 (辛いけど、今はそれを口に出すべきじゃない。『不幸自慢』をする気なんてさらさらないし、『悲劇の主人公』を気取るつもりなんてないんだ!)


 と、春風はそう考えると、先程したようにレナとグラシアに向かって「もう大丈夫」と言った。自分の「過去」のことで、レナ達に心配させたくないと思ったからだ。


 その後、春風は気持ちを切り替えるように、自身の左右の頬をパンパンッと叩いて「よし!」と小さく呟くと、


 「グラシアさん、()()()()をお尋ねするみたいで申し訳ありませんが、その後、あなたはどうしたのですか?」


 と、グラシアに向かってそう尋ねた。


 その質問に対して、グラシアは「え?」と声をもらしたが、すぐに真面目な表情になって、


 「……川から出た私は、すぐに安全そうな洞穴を見つけた後、暫くの間そこに身を隠していました。そして、それから一晩経って、安全になったのを確認した後、私は苦労の末に故郷の村に戻ったのです」


 と、答えたので、


 「え、それ大丈夫ですか!? 断罪官とかに鉢合わせとかなかったですか!?」


 と、レナが驚きながらそう尋ねると、


 「勿論、その辺りもキチンと警戒しましたが、幸いなことに彼らに遭遇することはなく、スムーズに故郷の村に入ることが出来ました。まぁ、肝心の村のなかは酷い有様でしたけど……」


 と、グラシアは何処か「悲しみ」が込められた笑みを浮かべながらそう答えたので、その答えにレナも春風も「あ……」と声をもらした。


 その後、


 「その……こんなことを聞くのも間違ってると思いますが、生き残りとかいなかったのですか?」


 と、春風が恐る恐るそう尋ねると、グラシアは悲しそうな表情で「いいえ」と首を左右に振りながら答える。


 「残念ですが、生き残った人間はいませんでした。ただ……」


 「「ただ?」」


 「村のはずれに、明らかに新しく作られたかのような『お墓』が幾つかあったのです」


 「え、『お墓』!? それって……」


 と、グラシアの話を聞いていたレナがそう尋ねると、


 「ええ、恐らく『断罪官』の連中が建てたものでしょう」


 と、グラシアはコクリと頷きながらそう答え、


 「全く、あれだけのことをしておいて……!」


 と、自身の右手をグッと握り締めながら最後にそう付け加えた。よく見ると、その手はプルプルと震えていたので、明らかに「怒っている」と考えた春風とレナは、


 「ぐ、グラシアさん、落ち着いて!」


 「そ、そうそう!」


 と、必死になってグラシアを宥めた。ただ、


 (意外だなぁ。てっきり死体はそのまま放置するんじゃないかって思ったけど……)


 と、春風は心の中で「うーん」と唸りながらそう呟いていた。


 まぁそれはさておき、そんな2人の行動に、グラシアはハッとなると、


 「も、申し訳ありません」


 と、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら謝罪した。


 それを聞いて、2人はホッと胸を撫で下ろすと、


 「そ、それで、その後は……?」


 と、レナが恐る恐るそう尋ねてきたので、


 「はい。その後、私はこれからどうしようと考えた末に、村を出て旅をすることにしたのです。あのまま村に残ったら、きっと殺された人達が『幽霊』として現れるか『悪夢』に現れて、『お前の所為で私達は殺された』と責められそうで怖かったですし……」


 と、グラシアは悲しそうな表情でそう答えた。それを聞いて、


 (それは……そうだよな)


 と、春風とレナは納得の表情を浮かべた。


 そんな2人を前に、グラシアは話を続ける。


 「そして、一通り村中を見て、使えそうな武器や道具に、食べられそうな食料を集めました。幸いなことに断罪官の狙いは私を殺すことのみでしたので、その所為なのか他のものには手をつけてなかったので、それらも全て集めた後、その全てを私が持ってるスキルの1つである『無限倉庫』に放り込み、それが終わると、私は村を旅立ったのです」


 と、2人に向かってそう話すと、


 「まぁ、それからは色々とありましたが」


 と、その辺りのことを語り始めた。


 

 

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