第236話 グラシアの「告白」
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
中立都市フロントラルの商業区商店通り、そこから外れた道を、
「はぁあああああ」
と、春風は深い溜め息を吐きながら通っていた。
そんな春風の隣で、
「元気出してよ春風。折角の『指名依頼』なんだし……」
と、レナがそう言いながら春風を励ましてると、
「『俺』じゃなくて、『スカーレット』への『指名依頼』でしょ?」
と、春風は表情を暗くしながらそう返事したので、その返事にレナが「うぅ、それは……」となんとも言えない表情になったが、
「ま、まぁでも、春風も結局は仕事を引き受けることにしたんだし、ここはもう『修行の為』ってことで割り切っちゃおうよ」
と、少し無理して笑顔を作りながら再び励ましてきたので、
「……はは、そうだね」
と、春風は暗い表情のまま笑いながらそう返事した。
ちょっと前置きが長くなってしまったが、結局のところ、あの後春風は、ナンシーからの「指名依頼」を受けることにした。
因みに、先程から話に出てきた『スカーレット』とは、依頼人であるナンシーが営む店での春風の仕事用ネームのことで、その時の服装は、見事なまでの真っ赤なドレスである。
正直なところ、春風自信は「二度とやらない!」と考えてはいたが、
「ナンシーさん曰く、『スカーレットさんのお力がどうしても必要』だそうです」
と、フレデリックにそう言われてしまい、春風は「うぐ。で、ですが……」とそれでも断ろうとしたが、
「まぁまぁそう仰らずに。断罪官や五神教会の幹部が来ている以上、ハンターとしてのまともな仕事は受かられそうにないのですが、そんな状況の中でも、こうして春風さんを頼ってきたわけですので……」
と、フレデリックにそう説得されてしまい、最終的に春風は依頼を受けることにしたのだ。
そんな感じで「指名依頼」を引き受けることになった春風は、
「それで、いつ仕事に行けばいいのでしょうか?」
と、フレデリックにそう尋ねると、
「ナンシーさんのお話ですと、今夜だけとのことですので、それまでしっかりと体を休ませるように」
と、フレデリックは穏やかな笑みを浮かべながらそう答えたので、
「はぁ、わかりました」
と、春風はそう返事した後、
「それじゃあ、取り敢えず今日は解散で」
と、レナ、ディック、フィオナに向かってそう言い、それを聞いた3人は、
「う、うん。わかった」
「はい、兄貴」
「わかりました」
と、返事した。
そして、その場は解散となって、春風が「白い風見鶏」へと戻ろうとすると、
「春風様。レナ様」
と、左腕の銀の籠手に装着したマジスマ内からグラシアがそう話しかけてきたので、それに驚いた春風とレナはすぐに通りの隅っこへと移動すると、
「ど、どうしたんですかグラシアさん?」
と、春風は周りに気付かれないように通りの隅っこでグラシアに向かってそう返事をした。勿論、周りに聞こえないように小声で、だ。
そんな春風の返事を聞いて、
「春風様、そしてレナ様。お二人にどうしても話さなくてはならないことがありますので、この後お時間いただけないでしょうか?」
と、グラシアがそう言ってきたので、それを聞いた春風とレナは「え?」と確認した後、お互い顔を見合わせて、
「わかった。じゃあ、私の家で聞かせて」
と、レナがグラシアに向かってそう提案し、それを聞いたグラシアは、
「はい、わかりました」
と、その提案を受け入れた。
そして、
「それじゃあ春風、このまま私の家に」
「うん、わかった」
と、2人はそう言い合うと、すぐにレナの家に向かい、現在に至る。
それから暫くして、レナが借りてる家につくと、春風とレナは急いで玄関の扉を開けて中に入った。
その後、
「じゃあ、ちょっと待ってて」
と、レナがそう言うと、家中の窓についているカーテンを全て閉めた。その最中、
「グラシアさん、もしかしてですが、グラシアさんが話したいことって、かなり重要な話ですか?」
と、春風がマジスマ内のグラシアに向かってそう尋ねると、
「はい、もの凄く重要なお話ですので」
と、マジスマ内のグラシアがそう答えたので、
「そういうことでしたら!」
と、春風がそう返事すると、
「レナ、『結界』を張らせてもらうよ」
「うん、わかった!」
と、レナにそう許可をもらったので、春風はすぐに家の中に結界を張って、外部に自分達の話を聞かれないようにした。
それから少しして、漸く話を聞く為の準備を終えた春風とレナは、家の中のリビングにあたる部屋で、
「それじゃあグラシアさん、あなたのお話を聞かせてください」
と、春風がマジスマ内のグラシアに向かってそう声をかけると、グラシアは「わかりました」と言ってスーッとマジスマ内から出てきた。
その表情は何処か暗く、まるで深い「悲しみ」や「怒り」に満ちているかのように感じたので、
「ど、どうかしたんですかグラシアさん?」
と、春風がそう尋ねると、
「春風様。レナ様。実は、今日出会ったギデオン・シンクレアという男のついてなのですが」
と、グラシアがそう話し始めたので、その言葉に春風とレナが「え?」と首を傾げると、
「あの男は……私を殺した男なのです」
と、グラシアは声を震わせながらそう答えたので、その答えを聞いた春風とレナは「え?」ポカンとした表情で目をパチクリとさせると、
「「えええええええっ!?」」
と、驚きに満ちた叫びをあげた。
その後、
「ちょ、ちょっと待ってよ! それってどういうこと!? グラシアさん、あのギデオンって人知ってたの!?」
と、レナがグラシアに向かって掴み掛かる勢いでそう尋ねてきたので、それを聞いたグラシアはコクリと頷くと、
「ええ、その通りですレナ様。17年前、私はスキルを使って『どんなことをしても変えることが出来ない未来』を見ました。そしてそのすぐ後、私は、あのギデオン・シンクレアによって殺害されてしまったのです」
と、レナに向かってそう答えた。
その答えを聞いて、レナは「そんな……」とショックで顔を真っ青にしたが、逆に春風は先程の驚きからすぐに一変して落ち着いた表情で、
「グラシアさん、詳しい話を教えてください。17年前に、何が起きたのかを」
と、グラシアに向かってそう言ったので、それを聞いたグラシアは、
「わかりました。ただ、その為に……というより、かなりついでなのですが、私のことについてもお話しをさせてもらいます」
と、春風とレナを交互に見ながらそう言った。
その言葉を聞いて、
「「わかりました、それでお願いします」」
と、2人ともコクリと頷きながらそう言うと、
「それでは、お言葉に甘えて……」
と、グラシアはそう言って、2人に自分自身のことについて話を始めた。
それは、あまりにも衝撃的で、あまりにも残酷な内容だった。
謝罪)
大変申し訳ませんでした。この話の流れを考えてたら、その日のうちに終わらせることが出来ずに、結局1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。




