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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第7章 対決、「断罪官」

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第230話 春風の「勘」と「不安」


 食堂を出た後、春風はすぐに自室に戻った。


 そして、部屋の明かりもつけずにベッドに寝転がると、


 「……」


 と、春風は無言で天井を見つめた。


 それから暫くすると、


 「春風様……」


 と、予めズボンのポケットに入れてたマジスマからグラシアが声をかけてきたので、春風はすぐにポケットからマジスマを取り出した後、


 「グラシアさん、どうしたんですか?」


 と、マジスマ内のグラシアに向かってそう返事した。


 すると、マジスマの画面に映ったグラシアは心配そうな表情で、


 「あの、そんなにボーッと天井を見つめて、どうかなさいましたでしょうか?」


 と、尋ねてきたので、その質問に春風は「え?」と声をもらすと、


 「あー、特に何にもないですよ」


 と言って、最後に「あはは」と苦笑いを浮かべたが、


 「……」


 画面に映ったグラシアの表情は変わらなかったので、


 (う、うーん。参ったなぁ)


 と、春風は困った顔をした後、「ふぅ」とひと息入れて、


 「……食堂で出会った3人のことで、少しね……」


 と、先程食堂で会った3人の男女……ショートカットの女性と三つ編みの少女、そして幼い少年のことを思い浮かべながらそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「あぁ、あの方達ですか? 特にそれほど珍しいものでもないのでは?」


 と、グラシアが首を傾げると、


 「これはあくまで俺自身の()なのですが……」


 と、春風は最初にそう言って、


 「門のところで見たボロボロマントの3人組は、きっとあの人達だと思います」


 と、自身の「勘」を話した。


 その話を聞いて、グラシアは「ええ!?」と叫ぶのを抑えるかのように両手で自身の口を覆うと、


 「それは、本当なのですか?」


 と、強引に気持ちを落ち着かせながらそう尋ねてきた。


 その質問に対して、春風はスッとグラシアの前に左手を翳すと、


 「言ったでしょ? これは、あくまで俺自身の『勘』って。何でしたら推測の域すら出てませんから」


 と、「はは」と苦笑いしながらそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「でしたら、どうして……?」


 と、グラシアがゴクリと唾を飲みながらそう尋ねると、春風は「うーん」と唸って、


 「何ででしょう? ただ、あの人達を見た時、()()()()()感じたんです。『侵入者はこの人達だ』ってね」


 と、再び「はは」と苦笑いしながらそう答えると、


 「というか、あの人達が食堂を出た際なんですけど、一緒にいた男の子、俺のことギロリと睨んできたんですよねぇ」


 と、最後にそう付け加えた。


 その言葉を聞いて、グラシアは今度こそ「ええ!?」と悲鳴をあげた。勿論、部屋の外に聞こえないように小さく、だ。


 そしてその後、


 「そ、その……春風様はこれからどうするおつもりですか? あの3人が本当に『侵入者』だとすると、下手したら春風様の身に危険が迫ると思うのですが……」


 と、グラシアはオロオロしながらそう尋ねたが、


 「いや、どうするも何も、『勘』って言いましたよね? あの人達が侵入者なのかもわからないですし、確証だってないですし、そもそも侵入者達の目的が何なのかもわからないから、動こうにも動けません。ですので、結局のところ総本部長さんやオードリー市長達が頼りなんですよね」


 と、春風は「おいおい」と言わんばかりにそう答えると、最後に「はぁ」と溜め息を吐いた。


 その言葉を聞いて、グラシアが「そんなぁ」とガクリと肩を落とすと、


 「でもねグラシアさん……」


 と、春風がそう口を開いたので、それにグラシアが「ん?」と反応すると、


 「だからといって、俺だってこのまま何もしない訳にはいきませんよ。明日、もう一度フレデリック総本部長さん達にも報告しますし、レナにも相談しますから。ちょっと()()なセリフですけど、俺1人じゃ無理ですが、力を合わせれば……まぁ『完璧』とまではいきませんが、なんとかなる筈ですよ」


 と、春風はニコッとしながらそう言った。


 その言葉を聞いて、


 「ああ、春風様。そうですよね、春風様の言う通りだと思います」


 と、グラシアは目をウルウルとさせながらそう言ったので、そんな彼女を見て、春風は「ふふ」と小さく笑った。


 それから間もなくして、春風とグラシアは就寝に入った。ただ、グラシアは「幽霊」なので、「寝れるのか?」と問われたらわからないが。


 まぁそれはさておき、就寝に入ったということで、グラシアはそのままマジスマ内で過ごすことになったのだが、


 「……」


 春風は眠れないのか、何処か浮かない表情をしていた。


 春風は「はぁ」と溜め息を吐くと、ゴロンと横を向いて、


 (グラシアさんにはああ言ったけど……)


 と、先程グラシアに放った自身の言葉について考え始め、


 (それでも……いや、()()()()()()()()()()()()()()ぁ)


 と、心の中でそう呟くと、再び「はぁ」と溜め息を吐いた。


 そんな春風の脳裏に浮かび上がったもの。


 それは、ギルド総本部を出る前に、市長のオードリーに言われた()()()()()()だった。


 そう、ギルド総本部を出る前に、


 「春風さん、ちょっといいかしら?」


 と、オードリーにそう言われて壁際まで連れ込まれた時のことだった。


 (一体どうしたんだろう?)


 と、突然のことに春風が疑問に思っていると、


 「実はですね。『五神教会』で、何やら()()()()()()が起きたみたいなのです」


 と、オードリーは周りに聞かれないように注意しながら小声でそう言ってきたので、


 「え? 何ですかそれ? それは一体どういう意味なのでしょうか?」


 と、春風が恐る恐るそう尋ねると、


 「すみません。確証はないですので、この先を詳しく言うことは出来ませんが、とにかく、その不穏な出来事が起きた所為で、この都市に『五神教会』の幹部達が来るそうですよ」


 と、グラシアは若干申し訳なさそうにしつつも、春風に向かってそう言った。


 それから時は流れ、現在、春風はベッドの上で、


 (うーん。どうしたもんかなぁ、本当に)


 と、ゴロゴロしながら、心の中でそう呟いていると、


 「このまま、何か変なことが起こらないといいなぁ」


 と、今度はそう口に出すと、最後に大きく「はぁああ」と溜め息を吐いた。


 しかし、この時の春風(それとグラシア)は知らなかった。


 「何も起きなければいい」と春風は口に出しつつそう思ってはいたが、本当に近い将来、その不安が現実のものとなることを……。



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