第224話 楽しい食事と、ディックからの「質問」
レナと合流した後、春風達は倒した魔物を解体し、その後片付けをすると、
「それじゃあ、ご飯にしようか」
「うん、そうしよう!」
と、春風とレナはそう言って、それぞれ腰のポーチから大きなテーブルと人数ぶんの椅子、そして幾つかの食材と調理器具を取り出した。それを見て、ディックとフィオナは、
「え!? どっからそんなに沢山の食材を!?」
「ていうか、そのポーチ何なの!?」
と、驚きのあまり砕けた口調になったが、
「あー、すみません、お二人共。大変申し訳ないけど……」
「これ、誰にも言っちゃいけない約束なんだ」
と、春風もレナも謝罪しつつそう誤魔化したので、
「「そ、そりゃないよう!」」
と、ディックとフィオナはショックでガクンと肩を落とした。
ともあれ、春風とレナは取り出した食材を調理し始めた。本日のメニューは豪勢な焼肉と果物の盛り合わせだ。
テーブルの上に並べられた美味しそうな料理を見て、
「「す、凄い」」
と、ディックとフィオナが「じゅるり」と涎を垂らしながらそう言ったので、それを見た春風とレナは「ふふ」と小さく笑うと、
「じゃ、みんなで食べよう」
と、春風が笑顔でそう言ったので、
「「は、はい!」」
と、ディックとフィオナはパァッと表情を明るくした。
それから4人は「いただきます!」と元気よく言った後、食事を開始した。
「「う、美味い! 美味い!」」
と、本気で美味しそうに食べる双子の兄妹を見て、
「ほらほら、そんなに焦って食べたら、喉につっかえちゃいますよ」
と、春風が呆れ顔でそう言うと、
「「あ、ごめんなさいお母さん!」」
と、ハッとなった2人にそう言われてしまったので、
「こ、こら! 誰が『お母さん』だよ!」
と、春風は顔を真っ赤にしながらそうツッコミを入れた。因みに、そんな春風のツッコミを聞いて、
(ごめん、私も『お母さん』って言いそうになった)
と、レナは心の中でそう謝罪していた。
そんな感じで、楽しそうに食事していると、
「あ、あの、春風さん……」
と、ディックが恐る恐る口を開いたので、
「ん? どうしたんですか?」
と、春風がそう返事すると、
「その……シーフ・ファルコンを倒していた時に、凄いジャンプしましたよね? あれ、どうやったんですか?」
と、ディックは春風がシーフ・ファルコンを倒していた時のことについてそう質問してきた。そして、それと同時、フィオナも「そういえば!」と春風に視線を向けてきた。
ディックの質問に対して、春風は「ああ、それは……」と返事すると、
「ジャンプする前に風の魔力を足の内側に流して、脚力を強化したんです。勿論、ジャンプする際に風の魔力を膝から下に纏わせたりもしました」
と、ディックとフィオナに向かってそう説明したが、
「「……は?」」
と、2人ともポカンとした表情で首を傾げていたので、そんな2人の様子に春風も「あれ?」と首を傾げると、
「えっと……俺達って、体の中に『魔力』を生み出す為の器官があるって知ってますか?」
と、今度は春風がディック達に向かって恐る恐るそう尋ねた。
その質問を聞いて、
「「え!? そうなんですか!?」」
と、2人がギョッと目を大きく見開いたので、
(あれー? も、もしかして知らなかったのかな?)
と、春風は困ったような表情を浮かべた後、
「れ、レナ、どうしよう」
と、隣に座っているレナに助けを求めたが、
「うーん、ごめん! 私、説明とか無理!」
と、逆に謝罪されてしまったので、
(ま、マジか)
と、春風は再び困ったような表情を浮かべた。
その後、春風は「うーん」と考え込むと、スッと椅子から立ち上がってディックの隣に立った。
それを見て、ディックが「ふえ!?」と反応すると、
「ディック君、ちょっとお手を拝借」
と、春風はディックの右手を掴んで、それを自身の胸にあてた。
突然の春風の行動に、
「ちょ、何してんですか!?」
と、ディックが驚いていると、
「落ち着いてディック君」
と、春風は優しくそう言った。
そして、春風はゆっくりと目を閉じると、
「目を閉じてディック君。そして、精神を右手に集中させてください」
と、再び優しくそう言ったので、それに何かを感じたのか、ディックは春風の言葉に従って目を閉じ、意識を右手に集中させた。
次の瞬間、ディックは「トクン」という心臓の音が聞こえたと同時に何かが緑色に光ったのを感じたので、
「あ、もしかしてこれが……?」
と、目を閉じたままそう尋ねると、
「そうそう。これが俺の魔力と、その魔力を生み出す器官です」
と、春風はコクリと頷きながらそう答えた。
その後、春風はゆっくりと目を開けると、ディックの右手を自身の胸から離し、それと同時にディックもゆっくりと目を開けた。
そして、
「今のが、魔力を生み出す器官なんですよね?」
と、ディックが確認するかのようにそう尋ねると、春風はコクリと頷いて、
「そうです。そしてこの器官で生み出した魔力を、自分と周囲に様々な影響を及ぼすものへと変化させたもの、それが『魔術』だと師匠から教わりました」
と、ディックに向かってそう答えた。
その答えを聞いて、
「し、知らなかった。僕はてっきり、『魔術』は『スキル』が生み出してるものだとばっかり思ってました」
と、ショックを受けたディックが自身の両手を見ながらそう言うと、
「『スキル』ってのは、あくまでも何かしらの行動をサポートする為の『道具』の一種ですよ。最終的にそういった『力』や『技』をどうするかは、自分自身で考え、決めなきゃいけないんです」
と、春風は真剣な表情でそう返事した。その返事を聞いて、レナも「その通り」と言わんばかりに「うんうん」頷き、
「自分で……決める」
と、フィオナは表情を暗くしながらそう呟いていると、
「あの、春風さん……」
「何ですか?」
「春風さんは、僕と同じ魔術師系の職能保持者なんですよね? そんなあなたが、どうして接近戦をしてるんですか?」
と、ディックが再び恐る恐るそう尋ねてきたので、その質問にフィオナも「あ、そういえば!」と春風に視線を向けた。
その質問と視線を受けて、春風は「それは……」と返事すると、
「幾ら『魔力を生み出す』と言いましても、一度に生み出せる魔力には限界があります。無理に生み出そうとすれば、それは肉体や精神に大きな負担を強いることになりますし、下手をすれば命にかかわります。そうなってしまえば、如何に優れた魔術師でもただの人と変わらないでしょう。だから、『魔術』以外にも戦う為の手段を身につけなくてはいけないんです。『成し得たい何か』があるなら、『守りたいもの』があるなら、そして、『生きたい』なら」
と、更に真剣な表情でそう答えた。
その答えを聞いて、
「は、春風……」
と、レナがそう呟くと、
「春風さん!」
と、それを遮るかのように、ディックがガタンッと椅子から立ち上がったので、それを見た春風はギョッと目を大きく見開くと、
「あ……もしかして、俺、偉そうでした? 気を悪くしてしまったら……」
と、「ヤベ! 言い過ぎたかな!?」と言わんばかりに顔を青くしながらそう言った。
だが、その次の瞬間、
「春風さん……いえ、師匠! 僕を、あなたの弟子にしてください!」
と、ディックは春風に向かって勢いよく頭を下げながらそう言ってきたので、それを聞いた春風は目をパチクリさせると、
「はぁ!?」
と、驚きに満ちた叫びをあげた。
謝罪)
大変申し訳ありません。改めて前回投稿した話を読んだところ、内容がところどころおかしかったので、誠に勝手ながら、前回の話の内容をかなり修正させてもらいました。
本当にすみません。




