第21話 「国王」様の「昔話」
「ルールを無視した異世界召喚」を行ったとされる、異世界「エルード」に存在する国の1つである「ルーセンティア王国」。
その国の「王女」である少女、クラリッサと交代するように、彼女の父親にして「国王」であるという男性・ウィルフレッドが玉座から立ち上がったことによって、クラリッサから「勇者様方」と呼ばれた女性教師とクラスメイト達は、緊張で表情や体をカチコチに硬直させたが、
(さぁ国王様。あんたは俺達に、どんな『事情』を聞かせてくれるんだい?)
ただ1人、春風だけは、冷静な表情で目の前にいるウィルフレッドを見つめていた。
勿論、周りにいる人達に気付かれないように、クラスメイト達との間に身を隠しながら、ウィルフレッドの話を聞く体勢に入っていた。
そして、春風、女性教師やクラスメイト達を含めた、その場にいる者達全員がウィルフレッドに視線を向ける中、肝心のウィルフレッド本人は静かに口を開く。
「はじめまして、異世界より召喚されし『勇者』達よ。私の名は、ウィルフレッド・バート・ルーセンティア。先程我が娘クラリッサが話した通り、この『ルーセンティア王国』の国王を務めている者だ」
と、威厳に満ちた声でそう自己紹介したウィルフレッドに、「勇者」こと女性教師とクラスメイト達が緊張のあまりゴクリと唾を飲んでいると、
「そしてこちらにいるのは、我が妻にしてルーセンティア王国王妃マーガレット・フレヤ・ルーセンティアと、もう1人の我が娘でありクラリッサの妹でもある、ルーセンティア王国第2王女のイヴリーヌ・ヘレナ・ルーセンティアだ」
と、ウィルフレッドは同じく玉座に座っている女性と、その隣に座る少女をそう紹介し、それに続くように、「マーガレット」と呼ばれた女性と、「イヴリーヌ」と呼ばれた少女が、ウィルフレッドと同じように玉座から立ち上がり、挨拶するかのようにペコリと頭を下げたので、それを見た女性教師とクラスメイト達、そして春風も、マーガレットとイヴリーヌに向かってペコリと頭を下げた。
その後、2人が静かに玉座に座ると、
「さて、勇者達よ。突然のことで困惑しているところ申し訳ないが、どうか落ち着いて我々の話を聞いてほしい」
と、ウィルフレッドが再びそう口を開いたので、女性教師ら勇者達と春風がウィルフレッドに視線を向けると、
「今、この世界は重大な危機に陥っている」
と、ウィルフレッドは真剣な表情でそう言い、それを聞いた女性教師とクラスメイト達は、
『えええぇ!?』
と、皆、一斉に驚きの声をあげたが、その中に混じって、
「ええ?」
ただ1人春風だけは、
(おいおい、何言ってんだこの人)
と何とも嫌そうな表情を浮かべながら、小さくそう声をもらしていた。
そんな春風達を前に、
「驚くのも無理はないと思っている。その辺り理由も説明するから、もう一度落ち着いてほしい」
と、ウィルフレッドは今度は優しそうな口調でそう言ったので、女性教師とクラスメイト達は、
『わ、わかりました』
と、ウィルフレッドに従って大人しくなった。
その後、ウィルフレッドが「ありがとう」とお礼を言うと、
「それでは、其方達を召喚した理由を説明する為に『昔話』をしよう」
と言ったので、
「む、昔話……ですか?」
ウィルフレッドの言葉に女性教師が恐る恐るそう尋ねると、
「そうだ。我々……いや、この世界の住人達にとって『始まりの歴史』とも言える話だ」
女性教師の質問に対して、ウィルフレッドは再び真剣な表情でそう答えたので、それを聞いたクラスメイト達はタラリと汗を流した。
そんな彼らを前に、
「今から500年前。まだこの世界が、『ループス』と『ヘリアテス』という2柱の『悪しき邪神』と、その加護を受けた2つの『悪しき種族』である『獣人』と『妖精』、そして彼らによって使役されている『魔物』達に支配され、我々『人間』が奴らによって虐げられていた時代のことだった」
と、ウィルフレッドはそう「昔話」を語り始め、それを女性教師とクラスメイト達が静かに聞き入ってる中、
(は?)
ただ1人、春風だけは、
(おいおいおい! ほんと何言ってんのこの人!?)
と、ウィルフレッドの「昔話」に首を傾げていた。
ウィルフレッドは話を続ける。
「しかしそんなある時、天より『5柱の神々』が現れたのだ」
「5柱の神々……ですか?」
と、その言葉に女性教師がそう尋ねると、
「そうだ。『炎の神カリドゥス』、『水の女神アムニス』、『風の神ニンブス』、『土の女神ワリス』、そして、『光の神ラディウス』の5柱だ。神々は虐げられていた人間達を救う為に、邪神達に戦いを挑んだ。それだけでなく、神々は人間達に『悪しき種族』や魔物達と戦う為の、特別な『力』を授けてくださったのだ。5柱の神々と人間達は力を合わせて、『邪神』と『悪しき種族』達と戦い、見事これに勝利した。2柱の邪神達は激しい戦いの末に『力』を失い、5柱の神々によって地中深くに封印され、その加護を失った『悪しき種族』達は、世界中に散り散りになって姿を消したのだ」
彼女の質問にウィルフレッドはそう答えたが、
「え? ふ、封印って、倒すことは出来なかったのですか?」
ウィルフレッドの答えにまだ納得が出来なかったのか、女性教師は再び恐る恐るそう尋ねると、
「ああ、『力』を失っても邪神達は強大な存在で、5柱の神々の力をもってしても完全に倒すことは出来ず、結局封印するしかなかったのだ」
と、ウィルフレッドは表情を暗くしながらそう答えたので、その答えに女性教師だけでなくクラスメイト達までもが、
『そんな……』
とショックを受けた。
そんな女性教師達を見て、ウィルフレッドは「いかん!」と言わんばかりに、
「ゴホン!」
と大きく咳き込むと、
「ま、まぁともあれ、こうして邪神達は封印され、『悪しき種族』も世界から消えた。そして、残った魔物達はというと、現在も数を増やして人間達を苦しめているが、それでも支配されていた頃よりは大した苦にはならなかった。そんな感じで、人間達は5柱の神々のおかげで、平和な日々を送れるようになれた。皆、それぞれ独自の文化を築き上げ、やがて幾つかの国が誕生した。この『ルーセンティア王国』も、そんな国の1つだ。そして、5柱の神々は我々人間達を見守る存在となり、人間達はそんな神々を讃える為に1つの組織を作った。それが、宗教組織『五神教会』の誕生である」
と、そう話を締め括った。
「昔話」を聞き終えて、
『お、おお!』
と、女性教師だけでなくクラスメイト達までもがそう歓声をあげたが、
(……嘘だ)
春風だけは違った。ウィルフレッドの話を聞いて、春風は確信したのだ。
(この人は、嘘を吐いている!)




