第220話 バージル達の「心配」と、春風の「悩み」
お待たせしました、1日遅れの投稿にして、今章最終話です。
その後、春風とレナはデッド・マンティスの鎌で何を造るのか、バージルとその妻ミラと話し合った。
それから暫くして、造るものが決まると、2人はエリック達と共にバージルとミラの自宅兼2人の工房を後にした。
春風達と別れた後、
「ふぅ」
と、バージルがひと息入れると、
「あの2人、結構いい子ねぇ」
と、ミラがそう話しかけてきたので、それにバージルが「ん?」と反応すると、
「ああ、そうだな」
と、笑顔でミラに向かってそう返事した。
だが、
「ただなぁ……」
と、バージルが少し暗そうな表情でそう口を開いたので、
「ん? どうかしたの?」
と、ミラが首を傾げながらそう尋ねると、
「春風……あいつ、危ういんだよなぁ」
と、バージルは暗い表情のままそう答えた。
その答えを聞いて、ミラは思い当たることがあったのか、「あ……」と声をもらすと、
「そうね。あんな答えを出せるくらいだから」
と、何処か心配そうな表情を浮かべながらそう言った。
そんなミラとバージルの脳裏に浮かんだのは、先程バージルが春風に出した、「お前さんとっての『剣』とは何か?」という質問で出てきた……。
ーー「斬ること」によって「命を奪う」為の「力」です。
という春風の答えだった。
その答えを思い出して、
「あんなに若い子が、あんな風に答えるなんて……」
と、ミラが心配そうな表情のままそう言ったので、バージルも「だな」と同じく心配そうな表情でそう返事すると、
「こいつは俺の勘だが、あいつは何かデケェもんを背負ってるように思えるんだ。それも、とびきりデケェもんをな」
と、最後にそう付け加えた。
その言葉を聞いて、
「そうね。私にもわかるわ」
と、ミラもそう口を開くと、
「あの子、大丈夫かしら」
と、更に心配そうな表情でそう付け加えたので、
「心配すんなって。あいつに何かあれば、きっとあのレナって子が助けてくれるだろうよ。勿論、エリック達や、俺らもな」
と、バージルはニヤッとしながらそう言い、それを聞いたミラは、
「ふふ、確かにそうね」
と、笑いながらそう言った。
さて、一方その頃、生産区の通りを歩く春風達はと言うと、
「はぁ……」
と、歩きながら溜め息を吐く春風に、
「どうしたの春風?」
と、レナが首を傾げなが尋ねると、
「……バージルさんの『質問』について、改めて考えてたんだ」
と、春風は表情を暗くしながらそう答えたので、それが聞こえたのか、
「君とっての『剣』についてだね?」
と、エリックが春風に向かってそう尋ねた。
その質問に対して、春風はゆっくりと頷きながら「はい」と答えると、
「『剣とは斬ることで命を奪う力』。俺は『師匠』からそう教わってきました。その時の師匠はとても真剣な表情でしたので、俺は今でもこの教えが正しいと思ってるんですが、『本当にそれだけなのか?』って、時々考えちゃうんですよ。だから、バージルさんの質問に対して、もっといい答えがあったんじゃないかって思ってしまって……」
と、暗い表情のままそう答えた。
その答えに、レナが「それは……」と声をもらすと、
「そんなことはないさ春風。あの時、君が出した『答え』は俺達も驚いたが、別に間違ったことは言ってないとも思ってるんだ」
と、エリックが真面目な表情でそう言い、それに続くように、
「そうだな。俺らだって『ハンター』として多くの魔物だけじゃなく人間だって相手にして、時にはこの手で殺したりもしてるんだ。ま、『殺戮者』になりたくないって想いも確かにあるけどな」
と、イアンが苦笑いしながらそう言い、ステラとルーシーも「うんうん」と頷いた。
そんなエリック達の言葉に、春風が「それは……」と何か言おうとしたが、それを遮るかのように、
「春風……」
と、レナが春風の肩に手をポンと置きながらそう話しかけると、
「エリックさんの言う通りだよ。春風は間違ったことは言ってない。でも、もし何か『別の答えがあるかも?』って思って、それで悩むようなら、その時は遠慮なく言って。どんな時でも、私は春風の味方だから」
と、真剣な表情でそう言い最後に「ね?」と笑顔でそう付け加えた。当然、レナのその言葉に賛同するかのように、
「レナだけじゃないさ。ここには俺達だっている」
「おうよ、なんか悩みとかあるなら、遠慮なく言えよな」
「そうそう、なんてったって私達、あなたの先輩なんだから」
「ええ、じゃんじゃん言ってね」
と、エリック達もそう言ってきたので、その言葉に春風は一瞬泣きそうになったが、すぐにハッとなって首を左右に振ると、
「ありがとうございます、皆さん」
と、レナ達に向かって深々と頭を下げながら言った。
その時だ。
ーーぐぅううう。
と、春風のお腹からそんな音が聞こえたので、それに春風達が『あ』と声をもらすと、
「はは。それじゃあ、みんなで飯にしようか」
と、エリックがそう提案してきたので、それに春風達が「賛成!」と手を上げながらそう返事すると、
「春風、レナ。あの時の礼をする為に、ここは奢らせてくれ」
と、エリックが再びそう提案してきたので、それに春風とレナが「で、でも……」と申し訳なさそうな表情になると、
「2人共遠慮すんなって」
「そうよ。ここは黙って奢られなさい」
「先輩である私達に、ね」
と、イアン、ステラ、ルーシーも笑顔でそう言ってきたので、春風とレナはお互い顔を見合わせると、2人して「ふふ」と笑って、
「それじゃあ……」
「お言葉に甘えさせてもらいます」
と、エリック達に向かってそう言い、その後、
「それじゃあ行こうか。この先に俺達の行きつけの店があるんだ」
と、エリックを先頭に、春風とレナはその後をついていった。
さて、長くなってしまったが、こうして、それぞれの「運命」が動き出した。
しかし、ここからもう少し先の未来で、春風の「運命」が本当の意味で動き出すことになるのだが、この時の春風は勿論、レナ達も知らなかった。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせることが出来ず、1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。
また、今回で今章の話自体はお終いですが、もう1本投稿した後、「本当の意味」で今章は終了となります。
お楽しみに。




