第207話 逆ギレと、「制裁」
本日2本目の投稿です。
「そうだよねぇ。そして、今回1番悪いのは、あいつらだってわかったし」
と、そう言いながら4人の男女を睨むレナ。
そんなレナに、4人もギロリと睨み返したが、
「おい、お前達にレナを睨む資格などないぞ」
と、ヴァレリーに恐ろしく低い声でそう言われてしまい、4人のうち3人はビビって表情を暗くしたが、残った1人である金髪の男性だけは、
「……し、仕方なかったんだ」
と、震えた声でそう言ったので、それにヴァレリーが「あぁ?」と反応し、
「お……おい、やめろハンス……!」
と、仲間の男性が止めに入ったが、
「だって仕方なかったんだ! 雑魚の魔物を討伐するだけの簡単な仕事だったのに、あんなに大量のポイズン・マンティスだけじゃなく、上位種のデッド・マンティス、それも『血濡れの両目』化していたんだぞ! そんな奴が現れたら、誰だって逃げ出すに決まってんだろ!?」
と、「ハンス」と呼ばれた金髪の男性は、まるで逆ギレしたかのようにそう喚き出した。いや、最早完璧に逆ギレしたと言った方がいいだろう。
そんな金髪の男性……以下、ハンスの喚きに、
「お、おい!」
「や、やめなって……!」
「もうやめて……!」
と、ハンスの仲間達が止めに入ったが、それでもハンスは止まることなく、
「ちくしょうが! せっかく逃げた先に前々から気に食わなかったグレッグがいたから、こいつに押し付けて、あわよくばここで始末出来るかもって思ってたのにぃ!」
と、何やらよからぬことを言い放ったので、それを聞いたヴァレリーはピキッとなって、
「おい、ちょっと待て……」
と、ハンスに向かって「待った」をかけようとしたが、それを遮るかのように、
「そしたらガキンチョのディックとフィオナに追われて捕まるわ! 戻った先でデッド・マンティスが倒される場面に出くわすわ! 挙げ句の果てにリーダー登場ってなんだよ! 何で俺らがこんな目に遭ってるんだよ!?」
と、ハンスは自分達がしたことを棚に上げて、まるで被害者であるかのようにそう喚き続けた。自分達の目の前に「1番の被害者達」がいるのにも関わらず、だ。
その喚きを聞いて、ハンスの仲間達を除く周囲の人達がイラッとすると、
「そして何より訳わかんねぇのが……」
と、ハンスは声を震わせて、
「お前だよ、お前ぇ!」
と、春風を睨みつけながら叫んだので、それに春風が「ん?」と反応すると、
「お前、ちょっと前にハンターになったばかりの新人なんだろ!? 何でそんな奴が『黄金の両手』のアーデに勝ってんだよ!? 何、真っ赤なドレス着てナンシーさんの店手伝ってんだよ!? 何、デッド・マンティスかっこよく真っ二つにしてんだよ!? あと、何でリーダーの勧誘断ってんだよ、うち大手レギオンなんだぞ!?」
と、今度は春風に向かって問い詰めるように怒鳴ってきて、
「お前は……お前は一体何なんだよぉ!?」
と、最後にそう付け加えると、漸く限界がきたのか、苦しそうに「ぜぇ、はぁ……」と肩で息をした。
ひと通りの喚きを聞いて、周囲が何とも言えない雰囲気になる中、
「俺は……」
春風が口を開く。
「ちょっとユニークな、ただの新米ハンターだよ」
と、真っ直ぐハンスを見つめながらそう言った春風。
その言葉を聞いて、
「「おいおい……」」
と、レナとヴァレリーがそうツッコミ(?)を入れてきたが、その言葉が余程気に食わなかったのか、ハンスはピキッとなって、
「ふ、ふざけんなこの女ァアアアアアっ!」
と、自身の腰の鞘に納めた剣を引き抜きながら、春風に向かって突撃してきた。
それを見て、
「ま、待て……!」
と、ハンスの仲間の男性が止めに入り、
『っ!』
と、レナやヴァレリー、そして「紅蓮の猛牛」のメンバー達が動き出そうとしたが……。
ーーヒュッ!
それよりも速く、春風がハンスのすぐ前まで来ていたので、
『……え?』
と、ハンスは勿論、周囲の人達までもがポカンとしている中、春風は右の拳をグッと握り締めた。
次の瞬間、春風の右拳が緑色に輝き出し、その光る拳に風が集まり出した。
その後、風が拳を覆い尽くしたところで、
「……はっ!」
と、漸くハンスが我に返ったが、時既に遅く、
「だぁれが『女』だくぉらぁあああああああっ!」
と、春風はそう怒鳴りながら、ハンスに向かって風を纏わせた拳によるアッパーカットを叩き込んだ。
「ぐほあああああああっ!」
と、その一撃を受けて悲鳴をあげたハンスは、ギュルギュルと体を回転させながら吹っ飛ばされると、最終的にはベシャッと音を立てながら地面に激突し、それから少しの間全身ピクピクとさせると、やがてピクリともしなくなった。
それを見て、春風は「ふぅ……」とひと息入れると、
「ヴァレリーさん!」
と、未だに呆けているヴァレリーに声をかけ、それを聞いたヴァレリーが、
「ふぁ!? は、はい!」
と、ビシッと姿勢を正しながらそう返事すると、春風は動かなくなったハンスを指差して、
「この失礼な奴とその仲間に重い罰を与えてください! 出来れば『追放』以外で!」
と、怒鳴る感じでそう言ったので、それを聞いたヴァレリーは「え?」と首を傾げながら、
「……追放、以外がいいのか?」
と、春風に向かって恐る恐る尋ねると、
「ええ! こういう人間は追放して『恨み』を募らせるよりも、レギオン内で厳重に監視してしっかり調教しておいた方がいいんです!」
と、春風は怒鳴るようにハッキリとそう答えた。
それを聞いたヴァレリーは「むむ」と唸ると、少し考えて、
「……確かに、それがいいんだろうな」
と、苦笑いしながらそう呟いた後、
「わかった。こいつらへの罰はこちらに任せてくれ。お前とレナに『怒り』や『恨み』が向かないようにするからな」
と、春風の提案を受け入れた。
それを聞いて、
「ありがとうございます」
と、春風は落ち着いた口調でヴァレリーに向かってそうお礼を言うと、
「で、ディック君とフィオナさんでいいのかな?」
と、自身の目の前にいる少年と少女……ディックとフィオナに向かってそう尋ねたので、それに2人が
「「は、はい!」」
と、ヴァレリーの時と同じようにビシッと姿勢を正しながらそう返事すると、
「お2人も『被害者』とはいえ、そいつらと一緒に魔物擦り付けたから、その辺りについてはヴァレリーさんからしっかりと罰を受けるように」
と、春風は落ち着いた表情と口調でそう言ってきたので、それを聞いた2人は「うぐ!」と呻きながらも、
「「は、はい……すみませんでした」」
と、春風に向かって深々と頭を下げながら謝罪した。
それを聞いて、春風はコクリ頷きながら「よし」と声をもらすと、満足したかのような笑みを浮かべて、
「それじゃあ、フロントラルに帰りますか!」
と、レナヴァレリー達に向かってそう言った。
謝罪)
大変申し訳ありません。前回の話ですが、誠に勝手ながら一部文章を加えさせてもらいました。
本当にすみません。




