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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第6章 動き出した「運命」

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第203話 「覚悟」の型


 それは、春風が「師匠」と呼ぶ女性の弟子となって暫くした時のことだった。


 「春風、『死ぬのが怖くない』なんて綺麗事よ」


 と、真剣な表情でそう言った「師匠」に、


 「それは、どういう意味ですか?」


 と、春風が首を傾げながらそう尋ねると、


 「『死ぬのが怖くない』なんてことを言う人はね、実際に『死の淵』……いや、『生と死の境』と呼ぶべきかな? まぁ、どっちでもいいや。で、その『生と死の境』に立ったことがないから言える言葉なの。自慢じゃないけど、私はこれでも昔、その『生と死の境』ってのに立ったことがあってね、その時は本当に怖かったわ。だって、それまで『自分』として生きてきた『記憶』や『感覚』が、少しずつ溶けてなくなってるんだもの。それが嫌だから必死にもがいて、結果、私は『家族』を失ったけど……」


 と、「師匠」はそう言うと、


 「こうして、春風と一緒にいられるようになったのよねぇ!」


 と、そう言いながら、最後に春風をギュッと抱き締めた。


 その後、「師匠」は春風から離れると、


 「まぁでも、人間生きてると、きっと何処かで『圧倒的強者』を相手に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をしいられる時があったりするのよ。そんな時、どうすればいいと思う?」


 と、春風に向かってちょっと軽いノリでそう尋ねてきたので、その質問に対して春風は「え?」と目を見開いた後、


 「交渉してそいつを『仲間』にする……とか?」


 と、恐る恐るそう答えたので、その答えに「師匠」はポカンとした後、


 「あっはっは! それはそれで面白そうね!」


 と、大笑いしながらそう言うと、


 「だけど、『圧倒的強者』の大半は、相手の話なんて全然聞かない奴が多いのが現実なんだよねぇ」


 と、暗い表情でそう付け加えて、最後に「はぁ」と溜め息を吐いた。


 その後、


 「じゃあ、どうしたらいいんですか?」


 と、春風が再びそう尋ねると、「師匠」はスッと自身の右手の人差しを立てて、


 「答えは1つ。己の「全て」を込めた一撃を、そいつに叩き込む。これしかない」


 と、真剣な表情を浮かべながらそう言った。


 その言葉を聞いて、春風はゴクリと唾を飲むと、


 「で、その為の『型』が、これからあなたに教える『山の型』って訳」


 と、「師匠」はそう言いながら、とある1つの「構え」をとった。


 それは、「正拳突き」の構えで、「師匠」はその構えをとると、


 「春風、この『山の型』は単純な攻撃の型じゃない。これは、『お前を倒して、絶対に生き残る』という強い意志……即ち、『覚悟』を表す構えよ。そして、この型に必要なのは、『死ぬのが怖い』『死ぬのは嫌だ』という想いで、それ以外は必要ない」


 と、その状態のまま春風に向かってそう説明し、それを聞いた春風が、


 「死ぬのは……嫌だ?」


 と、首を傾げると、


 「そう。死ぬのが嫌だから、生きたいから、絶対生き残る、その『想い』をこの一撃に込めて相手にぶつける。それが、『山の型』なの」


 と、「師匠」はそう答え、最後に思いっきり拳を突き出した。


 その瞬間、春風の目の前をビュウッと風が吹いた。


 そして現在、異世界「エルード」にある「中立都市フロントラル」付近に位置する森の中で、


 「……いくぞ、山の型」


 かつて「師匠」に習った「山の型」の構えをとった。


 使う武器は刀「霊刀・翼丸」。


 構えは、居合い切り。


 左手で鞘をグッと掴み、右手はいつでも抜けるようにソッと手を柄に置いた。


 そして、春風はゆっくりと深呼吸しながら、目の前の敵をジッと見つめると、ゆっくりと目を閉じた。


 そんな春風に向かって、


 「は、春風様、やっぱり危険です!」


 と、マジスマ内のグラシアが必死に声をかけるが、


 「……」


 聞こえてないのか、それとも、敢えて無視しているのか、春風は構えをとった状態な上に沈黙していたので、


 「は、春風様! 春風様ぁ!」


 と、グラシアは何度も春風の名前を呼んだ。


 一方、春風の目の前にいる敵ーーデッド・マンティスはというと、


 (自分は強くなった)


 (自分は、()()()()を手に入れた)


 と、最初は心の中でそう思っていた。


 何故なら、今の自分は「血濡れの両目」化によって戦闘力が上がり、それに加えて自身の下位種である「ポイズン・マンティス」を食らって更に強くなったと思っているからだ。


 だが、


 (なのに、目の前のこいつは何だ?)


 と、自身の前にいる人間ーー春風を見て、


 (何故、こんなにも()()()()()()()()()()()?)


 恐怖していた。


 それだけではない。


 (おまけに、何だこいつは? 何故、こんなにも()()()()()()()()?)


 現在、デッド・マンティスの目には確かに春風1人しか映ってないのだが、どういう訳か、その姿があまりにも大きく見えていた。


 それは、まさに()()()()のように思えたので、


 (……認めない)


 と、デッド・マンティスはブルブルと体を震わせていると、


 (こんなの、認めるものかぁ!)


 と、心の中でそう思っているかのように、


 「ギギィイイイイイイイッ!」


 と、上空に向かって叫んだ。


 そして、デッド・マンティスは「怒り」のままに春風に向かって突撃すると、4つの鎌の1つに自身の力を込めて、それを大きく振りかぶった後、1歩も動こうとしない春風に向かって、


 (これで、終わりだぁあああああ!)


 と、思いっきりそれを振り下ろした。


 それを見て、


 「春風様ぁ!」


 と、マジスマ内のグラシアはそう悲鳴をあげたが、


 「大丈夫」


 と、春風はゆっくりと目を開けながら一言そう言うと、翼丸の柄をグッと握り締め、片足でダンッと地面を踏み締めると、力いっぱい鞘から引き抜いた。


 その瞬間、


 (……あれ?)


 デッド・マンティスの視界が急に上下逆になった。


 (一体、何故?)


 と、そう疑問に思ったデッド・マンティスの視界に入ったのは、それまで自分がいた森の地面と、そこに立つ翼丸を抜き放った春風、そして……()()()()()()だった。


 そして、それを見た瞬間、


 (……あ。自分、斬られてたんだ)


 と、漸くそのことに気が付き、そう思った時には、もう自分の上半身はドサッと音を立てて地面に落ちていた。

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