第202話 春風&レナvs赤刃の死神(血濡れの両目)・2
本日2本目の投稿です。
ポイズン・マンティスの死骸を食べたことによって姿が変わったデッド・マンティス。
左右合わせて4本の鎌を持つその凶悪な姿を見て、
「ちょっとぉ。こんなキツいんだけど……」
「ど、同感」
「そ、そうですね」
と、春風とレナは勿論、マジスマ内のグラシアも、タラリと汗を流しながらそう呟いた。
しかし、そんな春風達を無視して、変化したデッド・マンティスは「ギギギ……」と唸りながら左右の鎌を擦り合わせて、今にも突撃しそうな雰囲気を出していた。
真っ赤に染まった4つの刃が、擦り合うごとにギラリと光る。
それと同時に、デッド・マンティスの口が僅かに動いて、まるでニヤリと笑っているかのように見えたので、
「うえぇ……」
と、春風は悍ましいものを感じたのか、そう声をもらしながらブルリと体を震わせた。
次の瞬間、デッド・マンティスが動いた。
その巨体に似合わない素早い動きで、一瞬のうちに春風達の傍に近づき、4本ある鎌の1本を大きく振り上げると、呆けた様子の春風達に向かって振り下ろした。
すると、
「「はっ!」」
と、漸くデッド・マンティスがすぐ傍まで来ていたのに気づいた春風とレナは、すぐにその場から飛び退いて、その鎌の一撃を避けた。
しかし、避けられたにも関わらず、デッド・マンティスの振り下ろされた鎌は、そのまま2人がいた地面に突き刺さった。
その瞬間、刺さった部分の地面や草、更にはそこから少し離れた位置にある数本の木々が、まるで腐っていくかのように黒く変色していき、やがて塵となって消えたので、
「いや、『即死』どころかくらったら跡形もなくなるじゃないか!」
と、それを見た春風は思いっきりツッコミを入れて、
「いや、誰に言ってるの!?」
と、レナはそんな春風にツッコミを入れて、
「おふたりとも! そんなこと言ってる場合じゃありません!」
と、マジスマ内のグラシアは春風とレナに向かってそうツッコミを入れた。
しかし、そんな春風達を無視するかのように、デッド・マンティスは更に素早く2人に近づいて鎌を振り下ろしてきた。
それを見て、2人はすぐにまたそれを回避……したと思ったら、今度は別の鎌による攻撃が襲いかかってきた。これが当たれば、間違いなく先程の地面や草木のように塵となってしまうだろう。
しかし、
「「こんのぉおおおおお!」」
と、2人は強引に体を回転させながら、なんとかその一撃を避けることが出来た。
その後、スタッと地面に着地すると、春風はすぐに「無限倉庫」を発動し、それによって現れた空間歪みに手を突っ込むと、そこから小さな瓶を取り出して、それをデッド・マンティスに向かって投げた。
それを見たデッド・マンティスは、「邪魔だ!」と言わんばかりに鎌でその小さな瓶を切り裂いたが、その瞬間、瓶から出てきた液体が、プシューッと煙のように変化して、デッド・マンティスの目に入った。
「ギギィイイイイイ!」
突然の事に驚いたデッド・マンティスがそう悲鳴をあげると、まるで狂ったかのように4つの鎌を振るった。
そんな状態のデッド・マンティスを、春風とレナは離れた位置にある大きな木の後ろで見つめていた。
ただ、2人ともかなり疲れている様子で、
「「はぁ……はぁ……」」
と、揃って苦しそうに肩で息をしていたが。
そんな状態の中、
「ふぅ。魔術が切れたみたいだ」
と、春風がそう口を開くと、
「わ、私も……」
と、それに続くように、レナも疲れ切った表情でそう言った。
その後、春風は再び「無限倉庫」を発動し、そこから、先程出したものとは別の小瓶を2本出して、そのうちの1本をレナに差し出した。
2人はお互いグイッとその小瓶の中身を飲み干すと、
「「ふぅ」」
と、疲労した状態から、次第に回復していったので、
「さて、どうしようか……」
と、春風はジッとデッド・マンティスを見つめながらそう口を開き、
「そうだね。あんな奴、一筋縄じゃいかないよ」
と、レナもジッとデッド・マンティスを見つめながらそう言った。
すると、
「ですが、ここで逃げてしまったら、あの怪物は都市の方へと向かうでしょうね」
と、マジスマ内のグラシアがそう口を開いたので、
「ええ。ですから、ここで奴を倒さなくては」
と、春風は静かにそう言った。
だが、
「でも、ただダメージを与えても、また回復とパワーアップされたら……」
と、レナは不安そうな声でそう言いながら、デッド・マンティスから少し離れた位置にあるポイズン・マンティス達の死骸を見つめた。
その言葉を聞いて、
(確かに、あれはかなり厄介だな)
と、春風は表情を曇らせながら、心の中でそう呟くと、少し考え込んで、
「……一か八か、やるしかないか」
と、今度は小さく声に出して言った。
その言葉に、レナが「ん?」と反応すると、
「レナ、頼みがあるんだけど」
と、春風は真剣な表情でレナに向かってそう言ったので、
「え? な、何?」
と、レナは警戒した表情でそう返事すると、春風はとあることとこれからやろうとしてることをレナに向かって言った。
その言葉を聞いてレナは大きく目を見開くと、
「だ、駄目だよ! そんな危険なこと!」
と、春風の両肩を掴みながらそう怒鳴った。
しかし、春風はそれに臆することなく、
「そうだね。確かに危険な賭けだよ」
と、レナに向かってそう返事したので、
「だ、だったら……!」
と、レナは春風の両肩を揺すりながらそう言ったが、
「でも、あいつを倒すには、もう今のところこれしかないんだ」
と、春風は真っ直ぐレナを見つめながらそう言ったので、その言葉にレナは「うぐ!」と呻いて、そこから何も言えなくなった。
その後、
「……それで、あいつに勝てるの?」
と、レナは悲しそうな表情でそう言うと、
「絶対に勝つ。勝って生き残る」
と、春風は真っ直ぐレナを見つめたままそう言い切った。
その言葉を聞いて、レナは悔しそうに口を噛み締めた後、
「……わかった。絶対に勝ってね」
と、一言そう言うと、スッと立ち上がってその場から駆け出した。
そして、1人になった春風に、
「春風様……」
と、マジスマ内のグラシアがそう声をかけると、
「大丈夫ですグラシアさん。俺、勝ちますから」
と、春風はキリッとした表情でそう返事した。
その後、春風もスッと立ち上がると、
「おい! そこのキモ蟷螂!」
と、漸く落ち着いた様子になったデッド・マンティスに向かってそう罵った。
その言葉にピキッとなったのか、デッド・マンティスがゆっくりと春風の方へと振り向くと、
「ギギギ……」
と、明らかに「怒り」に満ちた呻き声を出しながら、春風の方へと近づいた。
一方、春風はというと、近づいてきたデッド・マンティスを見つめながら、静かに左手で腰のベルトにさした翼丸の鞘を掴み、右手で翼丸の柄にソッと手を置いて、すぐにでも抜き放つ体勢に入った。
そして、ゆっくりと深呼吸すると、
「……いくぞ、山の型」
と、小さくそう呟いた。




