第200話 「赤い両目」再びと、「試したいこと」
本編200話目です。
突如、春風達の前に現れた、複数の蟷螂の魔物「ポイズン・マンティス」。
ざっと見ただけでも、その数は10匹くらいで、そんな数のポイズン・マンティス達を前に、
「うわぁ、これはかなりヤバいかも……」
と、レナはタラリと汗を流しながらそう呟き、
(た、確かに、あんな毒々しい色した鎌なんて、絶対くらいたくない!)
と、春風もポイズン・マンティスの鎌を見て、レナと同じようにタラリと汗を流したが、
(いや、それ以上に……)
と、すぐに目の前のポイズン・マンティス達の後ろにいる、更に大きな蟷螂の魔物に視線を向けた。
初仕事の時に見た、「血濡れの両目」化したバトル・ベアと同じく、全身が不気味な赤いオーラに包まれていて、左右の複眼と鎌もまた、オーラと同じくまるで血のように真っ赤に染まっていたので、
「取り敢えず……『神眼』」
と、春風はすぐにその大きな蟷螂の魔物に向かって「神眼」を発動した。
その結果……。
デッド・マンティス(状態:血濡れの両目)……「赤刃の死神」の異名を持つポイズン・マンティスの上位種。真っ赤に染まったその刃には、僅かに掠っただけでも即死する猛毒が塗られている。
そう記された「神眼」の結果を見て、
「レナ、大変だ。あいつ上位種だって」
と、春風が盛大に頬を引き攣らせながら、レナに向かってそう言うと、
「え、マジで? 私、ポイズン・マンティス以上の奴、初めてなんだけど」
と、レナは再びタラリと汗を流しながらそう返事したので、
(マジで!? レナも見たことなかったの!?)
と、春風はショックを受けた後、
「な、なんか、あいつの鎌、僅かに掠っただけでも即死する猛毒があるって……」
と、ついでのようにそう付け加えた。
その言葉を聞いて、
「うわ、最悪すぎる」
と、レナはげんなりしながら下を向くと、すぐに顔を上げて、
「あいつら、後で絶対ぶん殴る」
と、「怒り」に満ちた表情でそう呟いた。
その呟きを聞いて、春風は「あいつら」とは先程通り過ぎていった若い男女達のことだろうと考えると、
「そうだね。その時は俺も一緒に連中をぶん殴るよ」
と、レナと同じように「怒り」に満ちた表情でそう呟いた。
その後、
「でも、どうしようこの状況」
と、レナが「怒り」から「困惑」に満ちた表情に変えながらそう口を開いたので、
「そうだね。これ絶対逃げられないよね」
と、春風も目の前の魔物達を見ながらそう返事し、
(それだけじゃない。ここはフロントラル近くの森だ。もし、俺達がここか逃げ出そうものなら、こいつら絶対にフロントラルにまで追っかけてきそうなんだけど!)
と、心の中でそう考えた後、
「……やっぱり、こいつらはここで倒さなくちゃ」
と、ボソリとそう呟き、それに賛成するかのように、レナも「そうだよね」と返事した。
その返事の後、
「でも……ちょっとこの数は苦戦しそうなんだけど」
と、レナがそう呟いたので、春風は「うーん」と唸りながら考えると、
「レナ、ちょっと試したいことがあるんだけど、いいかな?」
と、目の前のポイズン・マンティス達を見つめたままレナに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「え? いいけど、何するつもりなの?」
と、レナがそう尋ね返すと、春風はレナよりも一歩前に出ながら、
「上手くいけば、少し数を減らせるかもしれないんだ」
と、答えたので、その答えにレナは「マジで!?」と大きく目を見開くと、
「わかった、お願い」
と、キリッとした表情でそう言ったので、その言葉に春風は、
「ありがとう」
と、お礼を言うと、目の前のポイズン・マンティス達を睨みながらスッと自身の両腕を上げた。
そして、ゆっくりと深呼吸しながら両目を閉じた次の瞬間、春風の右手が赤、左手が青く光り出した。
それを見て、
「え、何!?」
と、レナは驚いたが、そんなレナを無視して、春風は青く光った左手を地面に置き、それに重ねるように、赤く光った右手を青く光った左手の上に置いた。
その後、
「貫け、『氷槍』!」
と、春風がそう叫んだ次の瞬間、地面に置いた左手から青い光が10個に分かれて、それぞれ地面を伝ってポイズン・マンティスのもとへと向かった。
そして、青い光がそれぞれポイズン・マンティス達の前で止まると、そこからもの凄い勢いで槍のように鋭く尖った氷の塊が現れて、ポイズン・マンティス達の体を貫いた。
「え!? 何今の!?」
『ギギッ!』
目の前で起きた突然の出来事に、レナだけでなくポイズン・マンティス達とデッド・マンティスが驚きの声をあげたが、その直後、数体のポイズン・マンティス達が、ドサドサと音を立てながらその場に倒れ出した。
それを見て、僅かに生き残ったポイズン・マンティスがその場から逃げ出そうとしたが、
「逃がすかよ……」
と、それを見た春風がボソリとそう呟くと、
「『氷槍』!」
と、再びそう叫んで、その直後、新たに現れた鋭く尖った氷の塊が地面からもの凄い勢いで現れて、それが生き残ったポイズン・マンティス達の体を貫いた。
そして、先に倒されたポイズン・マンティス達と同じようにドサドサと地面に倒れると、
「あ、しまった!」
と、春風が何かに気付いたようにハッとなったので、
「ど、どうしたの春風!?」
と、レナがギョッとしながらそう尋ねると、
「ごめん、レナ。全部倒しちゃった」
と、春風は申し訳なさそうな表情でレナに向かってそう謝罪した。
その謝罪を聞いて、レナは「え?」と首を傾げた後、すぐに「あ!」となって、
「いいよいいよ! こんな状況だし、全然気にしてないから!」
と、大慌てで春風に向かってそう言ったので、それに春風が「ありがとう」と返事すると、
「ギギィイイイイイッ!」
と、残された「血濡れの両目」化したデッド・マンティスがそう叫び出したので、それを聞いた春風とレナはギョッとなってデッド・マンティスに視線を向けた後、
「春風、色々と聞きたいことがあるけど、今はあいつをやっつけることに専念しよう」
と、レナは春風に向かってそう言い、
「そうだね。一緒にあいつを倒そう」
と、春風もコクリと頷きながらそう返事した。




