第180話 「彼女」達の決意と、「問題」
遅くなりました、1日遅れ投稿です。
「だったら……私が、フロントラルに行きます!」
と、爽子やウィルフレッド達に向かってそう言った歩夢。
その瞳には、「大切な人に会いたい!」という強い意志が宿っているかのように見えたのか、
「……そうか」
と、ウィルフレッドがそう返事すると、
「ちょっと待ってよ!」
と、歩夢の隣に立つ美羽がそう口を開いたので、それに歩夢だけでなく周囲の人達までもが「ん?」と一斉に美羽に視線を向けると、
「私だって春風君に会いたいわ! だから、私も一緒に行くからね!」
と、美羽は歩夢に向かってそう言った。
その言葉を聞いて、
「うん、一緒に行こう」
と、歩夢が笑顔でそう言うと、
「……ふふ、春風殿は罪作りな人間のようだな。これほど想ってくれる少女が2人もいるのだから」
と、ウィルフレッドは笑いながらそう言ったが、
「しかし、フロントラルに行くとなると、現時点で幾つか問題がある」
と、真面目な表情でそう言ったので、それに歩夢と美羽だけでなく爽子達までもが「え?」とウィルフレッドに視線を向けると、
「まず第1の問題だ。先程も説明したが、ここからフロントラルまで最短でも1ヶ月はかかる。もし無事に辿り着いたとしても、その間に春風殿がフロントラルから離れていたらなんの意味もないだろう」
と、ウィルフレッドはスッと自身の人差し指を立てながらそう説明した。
それを聞いて、爽子達が「あ、確かに」と呟くと、
「まぁ、その辺りについてはヴィンセントと相談するので、ここは一先ず置いておくとしよう。で、第2に、フロントラルに行くとなると、何か明確な『目的』となるものを用意せねばならないことだ」
と、ウィルフレッドはもう1本指を立てながらそう言ったので、
「え? 『雪村に会う為』では駄目なのですか?」
と、爽子がウィルフレッドに向かってそう尋ねると、
「残念ながら……」
と、ウィルフレッドはそう呟きながら、申し訳なさそうな表情でゆっくりと首を左右に振ると、
「全てという訳ではないが、其方達がこの世界に召喚され、春風殿が騎士達を相手に暴れた『あの日』から、彼らの春風殿に対する印象は悪いものとなっている。特に五神教会教主のジェフリー殿は、今のところ表に出してはいないが、春風殿に強い『怒り』を抱いているのだ。そんな状況の中で、『春風殿に会いに行く』と言えば、全力で反対するだろう」
と、説明を続けたので、それを聞いた爽子達は納得の表情を浮かべながら、再び『あ、確かに』と呟いた。
そう、ウィルフレッドの言う通り、このルーセンティア王国の一部の騎士達が持っている春風に対する印象は悪く、特に「勇者召喚」が行われたあの日、春風に痛めつけられた騎士本人とその近くにいる者達の中には、春風に対して強い「恨み」を抱いている者がいるのだ。と言っても、全員その日のうちにウィルフレッドに注意されてしまっていたので、表立って春風を非難する者や、残された爽子達に八つ当たりをするような者はいなかったが。
そして、それは五神教会の人間達も同じで、信者や幹部達は皆、教主のジェフリーから春風の行いを聞いていたので、彼らの春風に対する印象は最悪なものとなっていた。当然、ジェフリー本人も、今は落ち着いてはいるが、ウィルフレッドが説明したように春風に対して「怒り」を抱いているので、それが信者と幹部達の春風に対する「怒り」を更に大きくしていた。
そんなことを考えていた爽子達を前に、
「それ故に、フロントラルに行くと言うのなら、彼らを納得させるだけの『目的』を用意せねばならず、歩夢殿と美羽殿の他に、『春風殿に会いたい』と願う者がいるならば……」
と、ウィルフレッドがそう言うと、
「申し訳ないが、爽子殿、純輝殿、煌良殿、優殿にはここに残ってもらう」
と、爽子、純輝、煌良、優に視線を向けながら言った。
その言葉を聞いて、
「な、何故ですかウィルフレッド陛下!?」
と、驚いた爽子がウィルフレッドに詰め寄りながらそう尋ねると、
「落ち着いてくれ爽子殿、きちんと理由を説明するから」
と、ウィルフレッドはスッと手をあげて爽子を制しながらそう言ったので、それを聞いた爽子は、
「す、すみません」
と謝罪すると、ウィルフレッドから2、3歩離れた。
それを見て、ウィルフレッドは「ふぅ」とひと息入れると、
「4人にここに残ってもらう理由だが、そもそも其方達は『神々』に選ばれた『勇者』だ。ましてや爽子殿、純輝殿、煌良殿に優殿は最上位の職能を与えられし者。そんな者達がここを離れるなど、五神教会の人間、特にジェフリー教主はよく思わないだろう。ただでさえ、先日水音殿達がここを旅立ってしまったばかりだからな。特に、水音殿と祈殿は爽子殿達と同じ最上位の職能を持つ者達だ。何がなんでもこの国に留めておきたいと思うだろう」
と、理由ついてそう説明した。
その説明を聞いて、
「そ、そう……ですよね」
と、爽子が納得の表情を浮かべると、
「従って、フロントラルに向かうのは残された者達の中から……そうだな、3人だけとなるな。それ以上は反対されるだろうから」
と、ウィルフレッドは人差し指、中指、薬指を立てながらそう言ったので、
「さ、3人……ですか……」
と、その言葉に爽子は表情を暗くした。勿論、歩夢と美羽を除いた生徒達も、爽子と同じような表情を浮かべていた。
そんな爽子達を前に、
「まぁ、それを決める前に、まずはフロントラルに向かう為の『目的』を考えなければいけないが……」
と、ウィルフレッドが「うーん……」と呻きながら、どうすればいいのか考えていると、
「あ、あの!」
と、それまで黙って話を聞いていたイヴリーヌが「はい!」と手を上げながらそう口を開いたので、
「む? どうしたイヴリーヌ?」
と、ウィルフレッドがイヴリーヌに向かってそう尋ねると、
「あ、あの……お父様。こんなのは……どうでしょうか?」
と、イヴリーヌはウィルフレッドだけでなく爽子達にも、恐る恐るといった感じで自身の「提案」を話した。
その「提案」を聞いて、
「だ、駄目でしょうか?」
と、イヴリーヌが恐る恐るそう尋ねると、
「……うむ。それしかないようだな」
と、ウィルフレッドはコクリと頷きながらそう呟いて、
「わかったよイヴリーヌ。その提案でいこう」
と、イヴリーヌの肩に手を置きながらそう言ったので、
「あ、ありがとうございます!」
と、イヴリーヌはパァッと表情を明るくした。
その後、
「さて、『目的』が出来たということで……」
と、ウィルフレッドがそう呟くと、
「次は誰がフロントラルに行くか決めようではないか」
と、爽子達に向かってそう言ったので、その言葉を聞いて、
『はい!』
と、爽子達はコクリと頷きながらそう返事した。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせることが出来ず、結果1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。




