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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第6章 動き出した「運命」

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第177話 その頃、ルーセンティア王国では……・3


 それから爽子ら勇者達と、ウィルフレッドらルーセンティア王国の王族達は、ストロザイア帝国皇女アデレードから送られてきた3つの映像記録用魔導具に保存された、「雪村春風」の映像を見た。


 それは、かなりの衝撃的な内容で、特に春風と同じ世界の住人である爽子ら勇者達は、普段学校で見る春風とは違った一面に、皆、度肝を抜かれていた。


 まず最初にハンターギルド総本部で、レギオン「紅蓮の猛牛」のリーダーであるヴァレリーとの「手合わせ」を見て、


 『ちょ! 女の人相手になんてことを!』


 と、爽子ら勇者達からそんな声が上がったが、


 「「なんか羨ましい……」」


 という2人の少女の声も聞こえたので、それを聞いたウィルフレッドら王族達はスルーすることにした。


 その後……。


 ーー「いい人間」か「悪い人間」か問われたら、俺は迷いなく『悪い人間』だと答えられますよ。


 と、映像の春風がそう言った、まさにその時、


 「違う!」


 という叫び声があがったので、それを聞いた爽子達が「何事!?」と言わんばかりのその声があがった方へと振り向くと、


 「ふ、フーちゃんは……フーちゃんは、『悪い人』なんかじゃ……ない」


 と、そこには大粒の涙を流す歩夢の姿があったので、傍にいた美羽や他の生徒達が必死になって歩夢を慰めた。


 それから少しすると、最初の記録映像が終わったので、ウィルフレッドは次に「2」と刻まれた映像記録用魔導具を起動した。


 それには春風の「ハンター」としての初仕事が記録されていて、その舞台であるフロントラルから離れた位置にあるという森で、同行者である少女・レナと、皇女であるアデレードと共に、襲ってきた魔物を剣……否、爽子ら曰く、「日本刀」で倒していった映像の春風の姿に、


 『雪村(君)、強ぉ!』


 と、生徒達はギョッと目を大きく見開きながら、驚きに満ちた叫びをあげたので、


 「む。そういえば、この時の彼のレベルは既に10を超えていたそうな……」


 と、ウィルフレッドは今になって思い出したかのような表情でそう言い、


 『じゅ、10ぅ!?』


 と、生徒達だけでなく爽子までもがショックで顔を真っ青にした。


 因みに、未だに全員レベル1のままである。


 それから暫くして、「血濡れの両目」化したバトル・ベアに襲われた3人の男女を介抱(?)する映像の春風を見て、


 「へへ。何だよ雪村、めっちゃ人助けしてんじゃん」


 と、生徒の1人である鉄雄がそう口を開いたので、


 『うんうん』


 と、他の生徒達もそれに賛同するかのように頷いた。


 勿論、


 「うぅ、なんて優しい少年なの……」


 と、マーガレットも感動していて、それに続くように、クラリッサとイヴリーヌもコクリと頷いた。


 ただ、


 「……」


 ウィルフレッドだけは、かなり真剣な表情で映像の春風を見つめていたが、それに気付いた者は誰もいなかった。


 その後、助けた3人の男女と共に森を抜けたところで2つ目の映像が終わったので、ウィルフレッドは最後の映像記録用魔導具を起動した。


 そこは、最初の記録映像で春風がヴァレリーと「手合わせ」をした場所である、「ハンターギルド総本部」内にある「小闘技場」なのだが、そこでは春風とアデレードの戦いが始まろうとしていた。


 大勢の見物客に見守られる中、2振りの小振りの剣ーー双剣を構えた映像のアデレードに対して、映像の春風は持っていた黒い扇に風をまとわせると、それを緑色の刀身を持つ剣へと変化させたので、


 『ええぇ!? 剣になっちゃったぁ!?』


 と、爽子ら勇者達は驚きに満ちた叫びをあげ、


 「まさか! 自身の魔力を『剣』として具現化させたのか!?」


 と、ウィルフレッドも春風の行動に目を大きく見開いた。


 そして、映像のフレデリックによる号令の後、2人の戦いが始まった。


 それは、ヴァレリーとの『手合わせ』とは違う、まさに『真剣勝負』と呼ぶに相応しいものだった。


 映像のアデレードの双剣に対して、映像の春風の左手には「剣」へと姿を変えた黒い扇、右手には初仕事で振るっていた「日本刀」が握られていて、2人は軽やかに動きながらそれらを振るっていった。


 ただ、映像の春風の方が映像のアデレードに押されていたようで……。


 ーーどう? 私、結構強いでしょ?


 と、尋ねてきた映像のアデレードに対して、映像の春風は「そうですね」と答えたが……。


 ーーですので、足りない部分は、「勝利への執念」で補います。


 と、真っ直ぐ映像のアデレードを見つめながらそう言い返したので、


 『そこは『知恵』とか『勇気』とかじゃねぇの!?』


 『いや、『気合い』とか『根性』でしょ!?』


 と、生徒達はまたギョッと目を大きく見開きながら、映像の春風に向かってそうツッコミを入れて、


 「うーむ、『勝利への執念』か。映像越しではあるが、言葉の端から強い意志を感じるな」


 と、ウィルフレッドは真剣な表情でそう感心した。


 その後、映像の春風による猛攻撃が始まり、それに抗おうと映像のアデレードは武器を力いっぱい振るって映像の春風の「剣」と「日本刀」を弾き飛ばしたが……。


 ーーなんのこれしきぃ!


 と、春風はそれでも諦めずに映像のアデレードに突撃し、ヴァレリーの時と同じように羽交い締めにし、最終的には……。


 ーーせぇい!


 と、映像のアデレードを背負うようにぶん投げて、彼女を気絶させた。


 その後……。


 ーー勝者、春風!


 と、映像のフレデリックが声高々にそう宣言すると、周囲から「ウォオオ!」と歓声があがった。


 勿論、


 『ウオオオオオ!』


 と、生徒達からもそんな声があがった。


 すると、そこで映像が終わったのか、周囲の景色が元の会議室へと戻った。


 一連の記録映像を見て、


 「ふぅう……」


 と、ウィルフレッドがひと息入れると、


 「勇者達よ……」


 と、爽子ら勇者達を見ながらそう口を開いたので、それに爽子達が「ん?」と反応すると、


 「映像を見て、どうだっただろうか?」


 と、ウィルフレッドが真剣な表情でそう尋ねてきたので、それを聞いた爽子達が「ふふ……」と笑うと、


 『やっぱり、雪村(君)がスゲェ!』


 と、皆、心が1つになったかのように、一斉にそう叫んだ。


 そして、それを聞いたウィルフレッドはというと、勇者達に答えに対して、


 「ま、そう思うのも仕方がないか」


 と、「やれやれ……」と言わんばかりに頭を掻きながら、ボソリとそう呟いた。


 


 


 

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