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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第6章 動き出した「運命」

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第175話 その頃、ルーセンティア王国では……


 時は、ヴィンセントが水音達に、


 「雪村春風がフロントラルに現れた」


 と、報告する前夜にまで遡る。


 ストロザイア帝国から遠く離れた位置にある、異世界エルードのもう1つの大国「ルーセンティア王国」。


 その国の王城内にある国王ウィルフレッドの自室にて、


 「……そうか。彼は今、フロントラルにいるのだな」


 「はい、ウィルフレッド陛下」


 と、国王ウィルフレッド本人が、部屋に設置された大鏡に映った人物と話し合っていた。


 「それでは、今から彼の行動が記録された魔導具を、そちらに転送します」


 と、大鏡に映った人物がそう言ってから少しすると、その近くに設置されたクローゼットがピカッと光り出した。そして、ウィルフレッドがそのクローゼットを開けると、そこには手の平サイズの小さな木箱が3つ置かれていたので、それを全て手に取ると、


 「確かに受け取ったよ、アデレード殿。報告してくれて、感謝する」


 と、ウィルフレッドは大鏡に映った人物ーーアデレードに向かって深々と頭を下げながらお礼を言った。


 その言葉を聞いて、アデレードは「いえ……」と返事すると、木箱について説明して、


 「それでは、私はこれで失礼します。おやすみなさい」


 と、再び深々と頭を下げた。


 その後、大鏡が光り出して、そこにアデレードの代わりにウィルフレッドが映ると、


 「春風殿……」


 と、手にした3つの木箱を見つめながら、この場にいない人物の名を口にした。


 すると、大鏡についている青い宝石が光り出したので、それに気付いたウィルフレッドが、すぐにその青い宝石に触れると、鏡が光り出して、


 「よう、ウィルフ!」


 そこには、ウィルフレッドの代わりに皇帝ヴィンセントの姿が映し出された。


 その後、


 「ヴィンスか……」


 と、ウィルフレッドがそう返事すると、


 「これ、来たか?」


 と、鏡に映ったヴィンセントが、ウィルフレッドに3つの小さな木箱を見せた。


 それは、アデレードが転送してきたのと同じものだったので、それを見たウィルフレッドが「……ふ」と不敵な笑みを浮かべると、


 「ああ。先ほど、アデレード殿から送られて来たよ」


 と、ウィルフレッドもヴィンセントに、自分の木箱を見せた。


 翌日、ルーセンティア王国王城内食堂。


 いつものように「勇者」こと爽子達がそこで朝食をとっていると、


 「おはよう、勇者諸君」


 と、ウィルフレッドが朝の挨拶をしてきたので、


 『おはようございます!』


 と、爽子達が一斉にそう挨拶を返した。


 それを見て、ウィルフレッドが「ふふ」と笑うと、


 「諸君、今日は皆に()()()()がある。食事が終わり次第……そうだな、『会議室』に集まってほしい」


 と、真面目な表情でそう言ってきたので、それを聞いた爽子達は「え?」と怪しむような表情を浮かべたが、


 「わ、わかりました」


 と、すぐに表情を変えた爽子がそう返事した後、他の「勇者」こと生徒達に向かって、


 「それじゃあ、みんな食べ終わったら『会議室』に行こう」


 と言い、それを聞いた生徒達は多少警戒しつつも、皆「はい」と頷いた。


 それから暫くして、食事を済ませた爽子達は、ウィルフレッドに言われた通り、王城内にある「会議室」に集まっていた。


 そこは、名前の通り国内の政治や状況の改善について話し合う「会議」を行う為の場所で、中はそれなりに広く、部屋の中央には大きな円型のテーブルと、それを囲むように幾つかの椅子が配置されていた……筈なのだが、何故かそれら全てが畳まれている状態で壁際に置かれていたので、それを見た爽子達は「おや?」と首を傾げた。


 更に、会議室には既にウィルフレッドだけでなく、妻であるマーガレットと、娘であるクラリッサとイヴリーヌの姿もあったので、


 (え? 何、この状況?)


 と、爽子は緊張のあまりタラリと汗を流した。


 そんな爽子達を前に、


 「おお、来たか勇者諸君。さ、皆、入ってくれ。ああ、すまないが、扉はしっかり閉めてほしい」


 と、ウィルフレッドがそう言うと、爽子達は「は、はい!」と返事して、そそくさと会議室内に入った。


 そして、全員が入り、扉が閉まるのを確認すると、


 「それでは……」


 と、ウィルフレッドはそう言って近くの壁に取り付けられている赤い宝石に触れた。


 次の瞬間、会議室全体が異様な空気に包まれたのを感じて、


 「あ、あの、ウィルフレッド陛下、何を……?」


 と、爽子が恐る恐る尋ねると、


 「心配ない、この空間内に『結界』を張らせてもらった」


 と、ウィルフレッドがそう答えたので、


 「え? あの、お父様、一体何故……?」


 と、今度はウィルフレッドの傍に立っているクラリッサがそう尋ねてきた。その表情はとても不安そうにしていたので、彼女も何が起きるのか聞かされてなかったのだろうと爽子はそう考えた。因みに、よく見るとマーガレットとイヴリーヌも、クラリッサと同じような表情をしていた。


 それはさておき、そんな不安そうな表情を浮かべているクラリッサに対して、ウィルフレッドは申し訳なさそうな表情になると、


 「すまない、皆。これから私が話すのは『とても大切な話』故に、外部にもらす訳にはいかないのだ」


 と、クラリッサだけでなく、マーガレットやイヴリーヌ、そして爽子達を見回しながらそう言ったので、


 「あ、あの……話とは一体、何なのですか?」


 と、爽子が再び恐る恐るそう尋ねた。


 その質問に対して、ウィルフレッドが「うむ……」と返事すると、


 「昨夜、アデレード殿から『報告』があったのだ」


 と、爽子に向かってそう答えたので、


 「え? アデレード様からですか?」


 と、クラリッサは大きく目を見開きながらそう尋ねた。


 その質問を聞いて、


 「え? 『アデレード殿』って確か、ヴィンセント皇帝陛下の……?」


 と、爽子が首を傾げながらそう尋ねると、


 「そうだ、アデレード・ニコラ・ストロザイア。ヴィンセントのもう1人の娘で、今は国を離れて、『中立都市フロントラル』で『ハンター』をしている」


 と、ウィルフレッドはコクリと頷きながらそう答えた。


 その答えを聞いて、爽子が「は、はぁ。そうですか」と返事すると、


 「それで……その、アデレード様(?)は、何と報告してきたのですか?」


 と、再び首を傾げながらそう尋ねてきたので、それにウィルフレッドが「うむ」と反応すると、


 「雪村春風殿が、『中立都市フロントラル』に現れた」


 と、真っ直ぐ爽子を見つめながらそう答えた。

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