第17話 ちょっとした「実験」
メッセージウィンドウに記されていた「固有職能」や「固有職保持者」についての説明文を読んで、顔を真っ青にした春風とオーディン。
彼らはショックのあまり膝から崩れ落ちて「うぅ……」とボロボロと泣き始めたが、
『どんまいどんまい……』
と、アマテラスをはじめとした他の地球の神々に励まされて、漸く春風達は少しではあるが元気を取り戻した。
その後、
「うーん。これで春風君のステータスが全部わかったけど……」
と、アマテラスが難しい表情でそう口を開き、彼女に続くように、
「そうだな。こんなゲームじみたものは、とてもあいつらに作れるものじゃねぇぞ」
と、ゼウスも難しい表情でそう言った。
そして、他の神々も皆、アマテラス達と同じように「うーん」と考え込んでいる中、
「スキルかぁ……」
と、春風も自身のステータス、特に「所持スキル」の項目をジッと眺めながらそう呟くと、
「あの、オーディン様」
と、オーディンに向かってそう声をかけて、
「ん? どうしたんだい春風君」
と、オーディンがそう返事した。
その返事に対して、
「ちょっと、試してみたいことがあります」
と、春風が真剣な表情でそう言ってきたので、それを聞いたオーディンが「え?」と首を傾げると、春風はオーディンから少し離れて、ゆっくりと目を閉じ、深呼吸した。
そして、オーディンやアマテラスら地球の神々が「ん? 何だ何だ?」と見守る中、
(意識を集中して、使いたいスキルを選んで……)
と、心の中でそう呟いた後、ゆっくりと目を開けて、
「スキル、『魔導具作成』……発動」
と、そのスキルの名前を呟いた。
次の瞬間、春風の目の前の地面に、青白く輝く「円」が描かれた。
突然現れたその青白い「円」に、神々を「何だ何だ!?」と驚く中、「ブオン!」という音と共に春風の目の前に新たなメッセージウィンドウが現れた。
そこには、
「この『作成陣』の中に材料を入れて、あなたの魔力を流してください」
と、記されていたので、
「へぇ、これ『作成陣』っていうのか……」
と、その文を見た春風がそう呟くと、
「はっ! ちょ、ちょっと待って!」
と、オーディンが大慌てで春風の肩をガシッと掴みながらそう話しかけてきたので、
「ん? 何ですかオーディン様」
と、春風がそう返事すると、
「春風君。君は、一体何をしようとしてるのかな?」
と、オーディンは何やら「ゴゴゴ」とプレッシャーをかけながらそう尋ねた。
その質問に対して、春風は「え?」と首を傾げると、
「何って、『魔導具作成』ってあるから、早速何か作ってみようかと……」
と、「何言ってんだこの人?」と言わんばかりの表情でそう答えたので、
「さ、早速何かって、君、何か『材料』になるものを持ってるのかい?」
と、オーディンは更に「ゴゴゴ」とプレッシャーをかけながらそう尋ねた。
その質問に反応したのか、
「え、何か作る気なの?」
「あれ? 春風、『材料』持ってたっけか?」
と、アマテラスとゼウスがそう疑問を口にすると、
「はい! 持ってますよこの通り!」
と、春風は元気よくズボンのポケットから何かを取り出し、それをオーディン達に見せながらそう答えた。
その手に持っているもの。それは……、
『スマホ?』
そう、スマートフォンだった。
そして、それを見た瞬間、
『……って、ちょっと待ってまさか!』
と、神々はギョッと大きく目を見開きながら驚いた。
そんな神々を無視して、
「それじゃあ、こいつをここに置いて……!」
と、春風はその青白く輝く「円」ーー作成陣の中央にスマートフォンを置いた。
その瞬間、また新たなメッセージウィンドウが目の前に現れて、そこにはこう記されていた。
「材料を置いたら、あなたの『魔力』を作成陣に流してください」
その文章を読んで、
「俺の魔力かぁ……」
と、春風は「うーん」と唸りながらそう呟くと、
「取り敢えず、この陣に触れたらいいのかな?」
と、青く輝く作成陣に手を触れて、再びゆっくりと目を閉じた。
その様子を見て、
『ちょ、ちょっと、本当に何する気?』
と、神々が全員オロオロしている中、
(俺の魔力……俺の魔力……)
と、春風は自身の「内面」に向き合うかのように、自分の「魔力」を探していた。
そして、暫くすると、
(あ、これかな?)
と、目の前に赤、青、オレンジ、そして緑色に輝く4つの光を見つけたので、
(うーん。どれにしようかなぁ?)
と、春風はその4つの光からどれを選ぼうか悩んだが、
(いいや、全部使っちゃえ!)
と、考えるのをやめて、4つの光から少しだけ貰うことにした。
そして、それらを手にすると、
(さぁ、こいつで魔導具作るぞぉー!)
と、春風は心の中でそう叫んだ。
次の瞬間、目の前が真っ白に染まり、それと同時に、現実(?)の春風の体とスマホを置いた作成陣が眩い光に包まれたので、
『うわ! 眩しい!』
と、神々は驚いて腕で自身の顔を覆った。
それから少しすると、漸く眩い光が弱くなったので、
(ど、どうなったんだ?)
と、気になった神々が目の前を見ようと腕を顔から退かすと、
「出来ましたぁ!」
と、そこには喜びの叫びをあげた春風の姿があったので、
「は、春風君、大丈夫かい?」
と、オーディンが恐る恐るそう尋ねると、春風は「ん?」とオーディンの方へと振り向き、
「あ、オーディン様! 魔導具の作成、成功しました!」
と、満面の笑みを浮かべながらオーディン達に出来上がったその「魔導具」を見せた。
それは、一見春風が持っていたものと同じ見た目したスマートフォンなのだが、よく見ると裏面にはカメラレンズの他に、赤、青、オレンジ、緑色をした4つの宝石のようなものがはめ込まれていたので、
「お、おお! なんか凄いね!」
と、そのスマホを見たオーディンはそう感心すると、
「ところで、その『魔導具』っていうの? それの名前はなんていうんだい?」
と、そう尋ねてきたので、
「え、こいつの名前ですか? ちょっと待ってください」
と、春風はもう1つのスキル「神眼」を使って、出来上がったその魔導具を調べた。
その結果……。
魔導具「見習い賢者のマジックスマートフォン」……「見習い賢者」が初めて作った魔導具。普通のスマートフォンとしても使えるだけじゃなく、魔術の発動媒体にすることも出来る。
と、また新たに現れたメッセージウィンドウにそう記されていたので、
「だ、そうですオーディン様」
と、春風は笑顔でそう言うと、
『おおー! なんと素晴らしい!』
と、オーディンをはじめとした地球の神々はそう言いながら、皆、パチパチと拍手をした。
ただ、
「お、おいおい。あいつ、早速やりやがったぞ……」
と、ゼウスだけは顔を真っ青にしていたが。
そして、春風がその理由を知ることになるのは、もう少し先の話である。