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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第6章 動き出した「運命」

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第171話 みんなで「記録」を見る・7


 その後、水音達が見守る中で、映像の春風はレナと共に助けた3人の男女にお茶を振る舞った。その際、重症を負っていた男性の鎧(?)と衣服がぼとりと地面に落ちてしまったので、春風は困った顔をした後、腰のポーチから黒いマントを取り出して、それを彼に羽織った。


 そして、「血濡れの両目」化したバトル・ベアを引き離したアデレードと合流した後、彼らと共に森を脱出し、フロントラルへと帰還しようとしたところで記録映像が終わり、また、元の執務室へと景色が戻った。


 「……ふむ、2つ目はここまでのようだな」


 と、ヴィンセントが「2」と刻まれた映像記録用魔導具を机に置きながらそう言うと、


 「あ、あのぉ、ヴィンセント陛下……」


 と、祭が恐る恐る「はい」と手を上げながら、ヴィンセントに声をかけてきたので、


 「ん? どした?」


 と、それにヴィンセントが反応すると、


 「ヴィンセント陛下はその……雪村君が、固有職保持者だって考えてるのですか?」


 と、祭はヴィンセントに向かって、「まだ信じられない」と言わんばかりの疑い満ちた眼差しを向けながらそう尋ねた。


 いや、祭だけではない。絆や祈、進、耕、そして、水音も同じような眼差しを向けていたので、


 「ああ、俺は間違いないと思ってる」


 と、ヴィンセントはその視線に臆することなくそう答えた。


 その答えを聞いて、祭が「うぅ……」と狼狽えていると、


 「い、いや、ですがその……雪村が魔術(?)を使った時、左手につけてた銀の籠手が光ってましたよね? あれって実は、『付けると魔術が使えるようになれる』っていう効果があるんじゃ……」


 と、今度は進がそう尋ねてきたが、ヴィンセントは「いや……」と首を左右に振ると、


 「残念だがそれはない。そもそも『魔術』や『剣術』といった『スキル』ってのは、神々から授かった『職能』から生まれ、それが人間に刻まれていくものであって装備や道具につくものじゃないんだ。俺自身も幾つもの魔導具を見てきたが、装備すると『魔術』が使えるようになれるなんてものは見たことがない」


 と、真剣な表情で進の考えを否定した。


 その言葉を聞いて、進は「じゃあ……」と顔を真っ青にすると、


 「ああ。残念だが、今の映像を見て、俺は雪村春風が固有職保持者だと確信している」


 と、ヴィンセントは真っ直ぐ進を……否、水音ら勇者達を見つめながらそう言った。


 その言葉が出た途端、執務室内がシーンと静まり返っていると、


 「おいおい、そう落ち込むなって。アイツを見て、()()1()()わかったことがあるんだ」


 と、ヴィンセントが「はは」と笑いながらそう言ったので、それを聞いた水音達が「え?」と反応すると、


 「アイツ、()()()()()()()じゃねぇか。『自分は悪い奴だ』って言っておきながら、思いっきり人助けしてたしよぉ」


 と、ヴィンセントは笑顔のままそう言った。


 その言葉を聞いた瞬間、それまで暗かった水音達の表情が少しずつ明るくなって、


 「そ、そうですね。こうして映像を見ますと、雪村君がいい人だってのがよくわかります」

 

 「だな。ルーセンティア王国を出ていくってことになった時、俺、『コイツ、この世界を見捨てる気じゃ!?』っておもってたんだよなぁ」


 「あ、それわかる! 私もそう思った!」


 「アタシもだ。まぁ、でも……」


 「う、うん。雪村君、あの人達のこと、助けてたよ、ね。あれ見たら、雪村君のこと、『悪い人じゃない』って思っちゃった」


 と、耕、進、祭、絆、祈が、春風についてそう語り合った。


 そして、そんな耕達に続くように、


 「ええ、そうよ! あの子、可愛くて強いだけじゃなく、すっごく優しい子じゃない!」


 「確かに、お茶を振る舞っただけじゃなく、装備品まで化し与えるなんて、『悪い人間』には出来ない行動ですよ」


 「むむむ。確かに、それは認めます」


 と、キャロライン、レオナルド、エレクトラまでもが、春風のことをそう評価した。


 それらを聞いて、ヴィンセントが「はっはっは……」と笑うと、最後にチラッと水音に視線を向けたので、それを受けた水音は、「ふふ」と笑うと、


 「……はい。春風は、結構()()をやらかす方ですが、基本的にはいい奴なんです。僕も、何度も春風に助けられましたから」


 と、ヴィンセントに向かって笑顔でそう言った。


 その言葉を聞いて、ヴィンセントが「そうかそうか!」と笑いながら言うと、


 「それじゃあ、最後の『記録』、見てみるか?」


 と、机の上に置かれた「3」と刻まれた映像記録用魔導具を手に取りながらそう尋ねてきたので、


 『はい』


 と、水音達はコクリと頷きながらそう返事した。


 その返事を聞いたヴィンセントは「それじゃあ……!」と言って、最後の映像記録用魔導具に魔力を流した。


 その瞬間、周囲の景色がまた変わり、水音達は別の場所に出たのだが、


 「あれ? ここって確か……」


 「小闘技場……だったよね?」


 と、水音と、祈がそう言ったように、そこは最初の映像に出てきた、春風とヴァレリーが「手合わせ」したという、ハンターギルド総本部内にある小闘技場だったのだ。


 当然、そこには春風とヴァレリーが戦っていた小闘技台もあったのだが、


 「あ、春風!」


 「うむ、アデレードもいるな」


 と、水音とヴィンセントがそう呟いたように、小闘技台に立っていたのは春風とアデレードの2人で……。


 ーー春風には、私と戦ってもらう。ただし、今度は「手合わせ」じゃない。本気でかかってきて。


 今まさに、彼女は映像の春風に向かって剣を向けていた。


 ただし、ヴァレリーとの手合わせの時に使用された木剣ではなく、2つ目の記録映像で、春風と「仕事」をしてた時に使っていた双剣、その片方の切先をだ。


 その光景を見て、


 「ヴィンセント陛下、これが……」


 と、水音がタラリと汗を流しながらそう口を開くと、


 「そうだ。雪村春風とアデレードの『戦い』の記録だ」


 と、ヴィンセントは目の前の光景を見つめながら、真剣な表情でそう返事した。


 


 

 

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