第161話 帝城内にて
今回は、後書きに「おまけ」があります。
ストロザイア帝国に到着した翌日、水音、進、耕、祭、絆、祈の6人が最初にしたのは、「帝城」の内部を知ることだった。
ストロザイア帝国の帝城内は、かつて自分達が過ごしていたルーセンティア王国の王城とは違う造りをしていて、その日は昨日紹介された近衛騎士であるレクシーに案内されながら、帝城内にある様々な場所を回った。
謁見の間を除いて、食堂や訓練、武器庫や資料室、更には大浴場があるのはルーセンティア王国の王城と変わらなかったが、水音達が最も目を輝かせたのは、魔導具を開発する為の施設である「開発場」だった。
そこは、幾人もの魔導具を作製する「魔導技師」の職能保持者達が、それぞれのアイディアを出し合い、それらを競わせながら1つへとまとめ上げ、最終的にはそのまとめ上げたアイディアをもとに魔導具を作っていくという場所で、施設のそこら中には開発の最中に生み出された沢山の「試作品」や「失敗作」などが無造作に転がっていた。
当然、それを見つけた進が、
「お、これ何の魔導具だ……?」
と、その中の1つを手に取ろうとしたが、
「触るな! 何が起きるかわからないぞ!」
と、レクシーに怒鳴られてしまったので、進は「ひえ!」と悲鳴をあげながらその手を引っ込めた。
因みに、その後レクシーに、
「す、すみません! 声を荒げてしまって……!」
と、丁寧に謝罪され、
「いや、俺も悪かったです、すみません」
と、進もレクシーに向かって謝罪した。
とまぁ、ちょっとした出来事があったが、ルーセンティア王国の王城にはない魔導具の開発場は、水音達に大きな刺激を与えた。
そんな状況の中、
「……」
水音は1人、魔導具が開発されていく過程をジッと見つめていたので、
「桜庭君、どうしたの?」
と、気になった祈がそう尋ねると、
「え? あ、いや、ちょっと考え事を……」
と、水音が少し言い難そうな感じでそう返事したので、
「お、当ててやろうか? 雪村のことだろ?」
と、今度は絆が揶揄うようにそう尋ねてきた。
その質問を聞いて、
「ええ? こんな時にぃ?」
と、祭も揶揄うようにそう尋ねると、
「あー、その……」
と、水音が更に言い難そうな感じでポリポリと自身の頬を掻きながらそう答えたので、
「え、まさか、本当に?」
と、その返事を聞いた耕が、驚いたようにそう尋ねた。
その質問を聞いて、水音は顔を恥ずかしそうに真っ赤にすると、
「ここってさ、『地球』じゃお目にかかれない技術とかがいっぱいあるよね? だから、もし今この場に春風がいたら、きっと小さい子供みたいに目をキラキラと輝かせるだろうなって」
と答えて、最後に「あはは」と苦笑いした。
その答えに対して、進達が無言になっていると、
「……だったら、桜庭君」
と、祈がそう口を開いたので、それに水音が「ん?」と反応すると、
「も、もしもだけど、ストロザイア帝国に雪村君を招くことが出来たら、一緒に見て回ったら、いいんじゃないかな?」
と、祈が恥ずかしそうな感じでそう言ってきたので、それに水音が目をパチクリとさせると、
「……うん、それいいかもしれませんね」
と、穏やかな笑みを浮かべながらそう返事した。
その返事を聞いて、その場にいる者達全員が「はは……」と笑うと、
「あ、だったらよぅ! もし雪村がなんか悪いこと企んでたら、『おい、今すぐ悪いことを考えるのをやめろ! さもなくばこの素晴らしい場所を見学させてやらねぇぞ!」って脅すか!?」
と、進が閃いたかのようにそう言ったので、それを聞いた瞬間、水音をはじめとしたその場にいる者達全員が沈黙した後、
「……ぷ! あはは、それいいね! 春風が「えぇ!?」と困ったような顔が目に浮かぶよ!」
と、水音は声に出して笑いながらそう言い、それに続くように他の人達も「あはは!」と笑い出した。
長くなってしまったが、その後も水音達はレクシーの案内のもと、帝城内にある様々な施設を案内された。
ただ、その最中、
(うーん)
と、水音が何やら難しそうな表情をしていたので、
「ど、どうした桜庭?」
と、隣で歩く進が小声でそう尋ねると、
「いや、気の所為かもそれないけど……なんか時々レクシーさんに視線を向けられているような気がして……」
と、水音も小声でそう答えたので、
「ああ、やっぱりそう思うよね」
と、逆隣りで歩く耕も、進や水音と同じように小声でそう言ってきた。
その後、
「なぁ、お前あの人に何かしたのか?」
と、進にそう尋ねられたので、
「し、してないよ!」
と、水音は思わず声を荒げると、その声にレクシーだけでなく祭、絆、祈がビクッと反応したので、
「あ、な、何でもないよ! 気にしないで!」
「「そ、そうそう!」」
と、水音、進、耕は大慌てで「あはは!」と笑いながらそう言い、レクシーと祭達は「ん?」と首を傾げながらも水音達の言葉に従い、その様子を見て、水音達はホッと胸を撫で下ろした。
そして、帝城内の案内が終わると、水音達はヴィンセントら皇族達を交えて夕食をとった。
その最中、
「……で、みんなこの帝城の中はどうだ?」
と、ヴィンセントに尋ねられたので、
「はい、ここは凄くいいところです」
と、水音は笑顔でそう答え、それに続くように進達も「うんうん」と頷き、それを聞いたヴィンセントは、
「はは、そいつはよかった!」
と、笑いながらそう言い、それを聞いたキャロラインら他の皇族達も、「よかったよかった」と言わんばかりに皆、笑顔になった。
翌日。
「あの、ヴィンセント陛下。一体どうかしたのですか?」
帝城内にあるヴィンセントの執務室で、水音が恐る恐るヴィンセントに向かってそう尋ねると、
「喜べ水音……いや、勇者諸君」
と、ヴィンセントがいつになく真剣な表情でそう返事したので、それを聞いた水音ら勇者達が、緊張のあまりゴクリと唾を飲むと、
「雪村春風が、中立都市フロントラルに現れた」
と、ヴィンセントは真剣な表情のままそう答えた。
おまけ)
帝城から遠く離れた地にて。
春風「……ん?」
レナ「どうしたの春風?」
春風「いや、なんか遠くの方で俺を巻き込んだ悪企が計画されたような気がして……」
レナ「え、えぇ?」




