第15話 「ステータス」
「……ステータス、オープン」
と、呪文を唱えるかのようにそう呟いた春風。
次の瞬間、「ブオン!」という音と共に、目の前に青いプレートのようなものが現れたので、
『うわぁ!』
と、春風だけでなく地球の神々までもが、目を見開きながら驚いた。
その後、春風はその青いプレートのようなものをジッと見つめると、
「これって、メッセージウィンドウ?」
と、そう疑問を口にしたので、その言葉に「え?」と反応したアマテラスも、その「メッセージウィンドウ」と思われる青いプレートのようなものを見て、
「……これは、あの子達のものじゃないわ」
と、難しい顔でそう言った。
その言葉を聞いて、オーディンやゼウスら他の地球の神々も、「どれどれ……」と一斉に青いプレートのようなものを見つめて、
「これは……」
「ああ、間違いねぇ。あいつらによるものじゃねぇな」
『うんうん』
と、皆、口々にそう言ったので、
「あ、あの、皆さんこれが何かわかるんですか?」
と、春風が恐る恐るそう尋ねると、
「うん、わかるよ。これはあの子達が作ったものじゃない。明らかに別の存在によって生み出されたものだ」
と、オーディンもアマテラスと同じように難しい顔でそう答えたので、
「それじゃあ、やっぱり……」
と、春風がそう呟くと、
「ああ、間違いねぇ。あいつらに何かがあったんだ」
と、ゼウスがコクリと頷きながらそう言った。よく見ると、その表情は明らかに「怒り」に満ちていたので、春風はそんなゼウスを見て、タラリと汗を流しながら、ゴクリと唾を飲んだ。
その後、
「それで春風君。それ……うーん、取り敢えず『ステータスウィンドウ』って呼ぼうかな。そこには何が書かれてるの?」
と、アマテラスがその青いプレート……否、「ステータスウィンドウ」を指差しながらそう尋ねてきたので、
「え? えーっとぉ……」
と、そのステータスウィンドウに記された内容を読み始めた。
そこには、こう記されていた。
名前:雪村春風
種族:神の分身
年齢:17歳
性別:男
職能:見習い賢者
レベル:1
所持スキル:「神眼」「無限倉庫」「体術」「風魔術」「炎魔術」「水魔術」「土魔術」「魔導具作成」「秘薬調合」「料理」「細工」「隠密」「偽装」「偽証」
称号:「異世界人」「神と契約を結びし者」「固有職保持者」
(うーん。こうして見るとまるでゲームの世界に入った気分だな)
と、自身の「ステータス」を見た春風が心の中でそう呟くと、
「うーん。色々聞いてみたいけど、春風君」
と、オーディンがそう声をかけてきたので、
「はい、何ですか?」
と、春風がそう返事すると、
「この『職能』という項目なんだけど、一体何なのかわかるかな?」
と、オーディンはステータスウィンドウに記された「職能」の部分を指差しながらそう尋ねた。
その質問を聞いて、春風は「え?」と首を傾げると、
「うーん、何なのかと聞かれましても……」
と、困ったような表情になった。
その後、「どうしたもんか……」と困り果てた春風は、取り敢えず、その「職能」の文字に触れて見ることにした。
すると、ステータスウィンドウの上に重なるように、新たなメッセージウィンドウが現れたので、春風は再び「うわぁ!」と驚いたが、すぐに首を横に振るって、新たに現れたそのメッセージウィンドウを読むことにした。
職能……『神』によって与えられる特別な能力で、これを宿した人間を「職能保持者」という。戦闘を得意とする「戦闘系職能」と、生産を得意とする「生産系職能」の2種類が存在し、どのような職能を与えられるかはその人の資質で決まる。
「……だ、そうです」
と、新たなメッセージウィンドウに記されたその文章を読み終わった春風が、オーディン達に向かってそう言うと、
「うーん。こうして見ると、ますます彼らによるものじゃないね」
「そうね。『神』が人に何かを与えるなんて、特別な事情がある時以外は本来は禁止の筈なのに……」
と、オーディンだけでなくアマテラスまでもが難しい表情でそう言ったので、
(え、そうなんですか? 『神様』の方にも何か『ルール的なもの』があるのかな?)
と、春風は心の中でそう疑問に思った。
そんな春風に構わず、
「ありがとう春風君。それじゃあ次に、君の『職能』について教えてほしいんだけど」
と、オーディンがお礼を言いながらそう声をかけてきたので、それにハッとなった春風は、すぐに「え? えーっとぉ……」と自身の職能について調べることにした。といってもやり方は先程と同じで、春風は職能である「見習い賢者」の部分に触れた。
すると、また新たなメッセージウィンドウが現れたので、流石にもう慣れたのか、春風は特に驚くこともなく、そこに記された文章を読むことにした。
見習い賢者(固有職能)……『力』に目覚めたばかりの未熟な賢者。あらゆる魔術の他にも魔力を用いた秘術・技術を操ることによって「戦闘」と「生産」どちらもこなすことが出来る。
その文章を読み終わって、
「へぇ、そうなんだ……」
と、春風はそう呟くと、
「いや、『見習い賢者』って何!? 『固有職能』って何!? ていうか『賢者』だけならわかるけど『見習い』って、『未熟』って何だよ!? ていうか、何で『賢者』なんだよぉ!?」
と、自身に対して叫ぶようにそうツッコミを入れた。
そして、そんな春風を見て、
「お、落ち着いて春風君……」
と、オーディンが宥めようとした、その時、
ーーだったら、僕、賢者になる!
と、春風の脳裏にそんな言葉が浮かび上がったので、春風は思わず「え?」と声をもらしながら首を傾げると、
ーーだったら、僕、賢者になる! 賢者になって、頑張ってるお父さんとお母さんをサポートするんだ!
と、「とある記憶」と共に再びその言葉が脳裏に浮かび上がった。
それは、春風がずっと忘れていた、とても懐かしく、そして大切な記憶で、その記憶を思い出した瞬間、
「……そうだ。思い出した」
と、春風は何かを思い出したかのような表情でそう呟くと、
「……はは。ははは。ははははははは! そっかそっかぁ!」
と、大声で笑い出したので、オーディンをはじめとした地球の神々が、
『え、ど、どしたの!?』
と、皆、一斉に驚きながらそう尋ねると、笑い終えた春風は「ふぅ」と一息入れて、
「ちょっと……昔のこと、思い出しちゃいまして」
と、オーディン達に向かってニコッと笑いながらそう答えたので、それを聞いたオーディンは何かを察したのか、
「……そっか。よかったね、春風君」
と、穏やかな笑みを浮かべながら、春風に向かってそう言った。
ただその際、
『え、何!? 何事!?』
と、残されたアマテラスら他の地球の神々はオロオロしていた。
謝罪)
どうも、ハヤテです。大変申し訳ないのですが、まことに勝手ながら、第13話で書いた「所持スキル」の内容を一部修正しましたので、今後は修正後の内容で書いていきます。
本当にすみません。