第14話 赤い翼
「な、なんじゃこりゃあああああああ!?」
と、自身の背中にある2枚の大きな赤い翼を見て、春風はそう絶叫した。
見た目はまるで鳥の翼のようでで、これがもし真っ白だったら創作物などで見かける「天使の翼」なのだが、2枚とも真っ赤だったのだから、春風はどう反応すればいいのかわからず、ただ叫ぶことしか出来なかったのだ。
そんな春風を見て、
「まぁ、そりゃそうなるよね」
と、オーディンが「はは……」と苦笑いしながら言うと、
「オーディン様! これは一体何なんですか!?」
と、春風は背中の赤い翼を指差しながら、オーディンに向かってそう尋ねたので、
「あーそれはね、君が僕と契約して、僕の『分身』になった証……みたいなものだよ」
と、オーディンはなんとも気まずそうな表情でそう答えた。
その答えを聞いて、春風は「んな!?」と衝撃を受けていると、
「真っ赤なんですが!?」
と、再び自身の背中に生えてる真っ赤な翼を指差しながら、再びオーディンに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、オーディンが「そ、それはね……」と答えようとすると、
「その『赤』はね、春風君の血の色なの」
と、オーディンではなくアマテラスがそう答えたので、
「……は?」
と、春風は首を傾げた。
それからすぐに、
「え、ま、待ってくださいアマテラス様。この赤が俺の『血の色』って、どういう意味ですか?」
と、春風がアマテラスに向かってそう尋ねると、
「あのね春風君。『神の分身』っていうのは、その名の通り神様の力の一部を使って生み出された存在だから、本来なら翼はないのよ」
と、アマテラスは真面目な表情でそう答えたので、
「はい? 『翼はない』って……じゃあ、この翼は?」
と、未だに理解出来てない春風は、チラッと背中の翼を見ながらそう尋ねた。
その質問に対して、アマテラスは答える。
「さっきも言ったように、『神』の力のみで作った分身には翼がないんだけど、春風君みたいに『人間』が『神の分身』になると、そうなった証としてその人の『血の色』と同じ色をした翼が生えるの」
と、真面目な表情でそう答えたアマテラスの言葉を聞いて、春風は彼女が冗談を言ってるのではないと理解したので、
「……じゃあ、この赤は本当に、俺の『血の色』ってことですか?」
と、恐る恐るそう尋ねると、アマテラスだけでなくオーディンや他の地球の神々までもが、
『うんうん』
と、頷いた。
その様子を見た春風は、またチラリと背中の赤い翼を見ると、
「あのぉ、オーディン様」
「何だい春風君?」
「これじゃあ服着れませんので、この翼をどうにかしたいのですが……」
と、オーディンに向かってそう言った。
その言葉にオーディンが「ああ!」と如何にも「説明するの忘れた!」と言わんばかりにハッとすると、
「大丈夫だよ春風君。それ、本物のように見えるけど、実際はエネルギーの集合体みたいなものだから、君自身の意志で出したりしまったりすることが出来るんだ」
と、笑顔でそう説明したので、それを聞いた春風は、
「え、そうなんですか?」
と、ポカンとした後、小さく「じゃあ……」と呟いて、ゆっくりと両目を閉じ、その場にジッとし出した。
すると、2枚の赤い翼は真っ赤な光になって春風の体の中に入っていったので、
「あ、本当にしまうことが出来ました!」
と、表情を明るくすると、すぐに残りの衣服に着替えて、上履きを履いた。
そして、漸く着替え終わると、
「それじゃあ今度は……」
と言って再び目を閉じた。
すると、春風の背中が光り出して、その光からまた赤い翼が現れたので、
「おお、本当に出すことが出来ました!」
と、再び表情を明るくすると、
『おおーっ!』
と、オーディンをはじめとした地球の神々はそう歓声をあげながら、パチパチと拍手した。
その拍手を聞いて、春風は「あ、どうもどうも……」と恥ずかしそうに顔を赤くすると、また、背中の赤い翼を見て、
「うーん……」
と、何とも言えない表情になったので、
「あら、どうしたの春風君?」
と、アマテラスがそんな春風に向かってそう尋ねると、
「確認しますけど、この翼の色って、俺の『血』の色なんですよね?」
と、春風はアマテラスに向かってそう尋ね返した。
その質問にアマテラスが、
「ええ、そうよ。それがどうかしたの?」
と、更に春風に向かってそう尋ねると、
「いえ、俺の『血』の色にしては、随分と派手だなと思いまして。『血』なのですから、もう少し濃いめの赤かと思ったのですが……」
と、春風はまた何とも言えない表情でそう答えたので、アマテラスら地球の神々は「ああ……」と声をもらした。
確かに、「『血』と同じ色をしている」と説明されたが、実際その赤は何処か鮮やかで、春風が言うように「派手」に見えていたのだから、春風自身あまり納得出来てなかったのだ。
すると、
「そうかなぁ。僕は好きだけどなぁその色は」
と、オーディンがそう口を開いたので、それに春風が「え?」と反応すると、
「ちょっと説明し忘れたことがあるんだけど、人間が『神の分身』となった時に現れる翼の『形』と『色』にはね、その人間の『意志』が秘められているんだ。その人間の『意志』の強さや大きさによって、いろんな『形』やいろんな『色』を持つ翼が形成されるんだよ」
と、オーディンは翼についてそう説明した。
その説明を聞いて、
「じゃあ、この翼も俺の『意志』が秘められている、と?」
と、春風が「ちょっと疑ってます」と言わんばかりの表情でそう尋ねると、オーディンはゆっくりと春風に近づきながら、
「うん、そうだよ」
と、答えた。
そして、春風の隣まで近づくと、春風の赤い翼にソッと手を触れて、
「そして、この翼にも、君の強い『意志』が感じられるんだ。だから、こんなにも綺麗な赤色をしているし、この翼を見て、『君と契約出来てよかった』って思えるんだ」
と、穏やかな笑みを浮かべながらそう言った。
その言葉を聞いて、春風が「オーディン様……」と少し感動していると、
(……ん? 『強い意志』?)
と、「あれ?」と首を傾げたので、
「ん? どうした春風?」
と、それを見たゼウスがそう尋ねると、
「そういえば、俺が新しい肉体に入って意識を失う直前に、変な『声』が聞こえたんです」
と、春風はなんとも微妙な表情を浮かべながらそう答えたので、
『声?』
と、オーディンをはじめとした地球の神々も首を傾げると、
「よくわからなかったんですけど、なんか、『エルードの現在の理によってステータスが表示出来るようになりました』って言われたような……」
と、春風は「うーん」と唸りながら、難しい表情でそう答えた。
その答えを聞いて、
「え、本当に!? それじゃあ、出来るならちょっと出してほしいんだけど、いいかな!?」
と、アマテラスが興味津々にパァッと表情を明るくしながらそう言ったので、
「え? ええっとぉ。じゃあちょっとやってみます」
と、春風は不安そうな表情を浮かべながらも、アマテラスの言葉に従って「ステータス」を出してみることにした。
(とはいえ、俺も出すの初めてなんだよなぁ。翼を出すのと同じ感じでやればいいのかな)
と、春風はそう考えると、赤い翼を出し入れした時と同じようにゆっくりと目を閉じた。
そして、意識を集中するかのように深呼吸すると、ゆっくりと目を開けて、
「……ステータス、オープン」
と、呪文を唱えるかのようにそう呟いた。
どうも、ハヤテです。
本日で話のストックが尽きましたので、ここからは書き終わり次第投稿することになります。
出来れば、なるべく1日1本のペースで投稿したいと考えてますので、もしも間に合わなかったら、その時は「謝罪」を入れた状態で投稿していく方針です。
皆様、これからも何卒よろしくお願いします。