第144話 「赤い両目」
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
突如、森の中に響き渡った2つの悲鳴のような叫び声。
その叫び声の正体を探る為、春風、レナ、そしてアーデの3人は森の中を走っていた。
(一体、何が起きたというんだ!?)
と、春風が走りながらそう疑問に思っていると、
「止まって!」
と、前方を走ってたアーデが急に止まりながらそう言ってきたので、春風とレナは思わず「おっとっと!」と声をもらしながらも、どうにか止まることが出来た。
ただ、その際危うく転びそうになったので、
「あ、アーデさん、何を……?」
と、春風は文句を言おうとして口を開くと、アーデは自身の口近くに人差し指を立てながら、
「静かに」
と、小声でそう返事したので、春風とレナは「ん?」と首を傾げると、
「2人共、こっちに」
と、アーデはそう言って、2人の手を取った後、自身の目の前にある大きな木のところまで引っ張った。
そして、その木でピタリと止まると、アーデはソーッとその木の向こうを見始めたので、
「ちょっと、どうしたのさ!?」
と、レナは何か察しつつも、アーデに向かって怒鳴りながらそう尋ねたが、それにアーデは答えず、その代わりに、
「見て。ただし、静かに、ソーッとね」
と、前方を指差しながら、冷静な口調でそう言ってきたので、それを聞いた春風とレナは「は?」と首を傾げた後、アーデの言葉に従ってソーッと静かに彼女が指差した方向を見て、
「「あ」」
と、小さくそう声をもらした。
3人から離れた位置にあったもの。それは、何やら不気味な赤いオーラのようなものを纏った大きな熊と、それに向き合う3人……否、2人の男女だった。
何故、3人ではなく2人だったのか?
理由は単純。2人の男女の前で、もう1人が血溜まりの上に倒れていたからだ。しかも、全然動く気配もなかったので、既に息絶えているのかもしれない。その犯人は、恐らく、男女の目の前にいる赤いオーラを纏った熊か、あるいは別の要因か。
とにかく、そんな彼らの様子を見て、
「た、大変だ、助けなきゃ……!」
と、声をあげた春風はすぐに男女のもとへと駆け出そうとしたが、
「駄目!」
と、アーデが春風の肩をガシッと掴みながらそう言ってきたので、
「ど、どうして!?」
と、春風がそう問い詰めると、
「あいつ……」
と、今度は男女の目の前にいる熊を指差したので、
「え? あの熊(?)がどうかしましたか?」
と、春風がその熊を見ながらそう尋ねると、
「熊じゃない。あいつは『バトル・ベア』。高い戦闘力を誇る熊型の魔物」
と、アーデもその熊……否、熊型の魔物、バトル・ベアを見つめながらそう説明した。
その説明を聞いて、春風は「そ、そうでしたか」と呟くと、
「でも……」
と、アーデが表情を曇らせながらそう口を開いたので、それに春風が「え?」とまた首を傾げると、
「で、『でも』って何ですか?」
と、アーデに向かって恐る恐るそう尋ねた。
その質問に対して、
「あいつの両目、よく見て」
と、アーデがそう答えたので、春風は「ん?」としながらも、再びソーッと静かにそのバトル・ベアの両目を見ると、
(うっ! 何だ? 両目が……真っ赤?)
離れてはいるが、何と、バトル・ベアの両目が、身に纏っているオーラと同じく不気味に真っ赤に染まっていたので、それを見た春風は、
「な、何なんですか、アレ?」
と、恐る恐るアーデに向かってそう尋ねると、
「バトル・ベアは戦闘力こそ高いけど、決して自分から戦いを仕掛けたりしないの」
と、アーデはそう答えたので、
「え、何それ、どういうことですか?」
と、春風はまたそう尋ねると、
「あのバトル・ベアは……『血濡れの両目』化している」
と、アーデはそう答えたので、
「な、何ですか、その如何にもヤバそうな名前の状態は……?」
と、春風が少しドン引きしながら尋ねると、
「……それって確か、突然変異で凶暴化した魔物の総称……でしたよね?」
と、それまで黙っていたレナがそう尋ねてきたので、
「うん。ある時突然なってしまうという魔物達の総称で、そのなってしまう原因はまだ解明されてないの。ただ、そうなった際、あんなふうに赤いオーラを纏っている以外にも、両目がまるで血のように真っ赤に染まることから、いつしかそう呼ばれるようになった」
と、アーデはコクリと頷きながらそう返事し、
「そして、『血濡れの両目』化した魔物は、元々の戦闘力だけじゃなく凶暴性も大きくなってしまうの」
と、更にそう説明した。
その説明を聞いて、春風は「そんな!」と絶句したが、すぐに「いやいや」と首を左右に振ると、
「あ、あの、あいつのことはわかりましたが、あの人達を助けないと」
と、春風は2人の男女に視線を向けながらそう言うと、アーデは「おっと失礼」と言って、
「そうだね。まずは私がアイツを引きつけるから、その隙に2人はあの人達を助けに行って」
と、春風と同じように、今にも「血濡れの両目」とかしたバトル・ベアに襲われそうになってる2人の男女に視線向けながらそう言ったので、
「え、待ってください、引きつけるって……」
と、春風が何か言おうとしたが、それを遮るかのように、
「大丈夫。引き付けたら、私も隙をついて逃げる。そしたら春風達と合流するから」
アーデは笑顔でそう言うと、春風とレナ置いてその場から飛び出し、その途中で落ちていた石を拾い上げると、それをバトル・ベアに向かって思いっきり投げた。
すると、ガッと見事に石がバトル・ベアの後頭部に当たったので、
「グルル……」
と、思わぬ一撃を受けて、バトル・ベアは痛そうに自身の後頭部を手で押さえた。そして、
「ほらほらぁ、こっちこっち!」
と、そんなバトル・ベアに向かってアーデがそう叫ぶと、それにピキッとなったバトル・ベアが、男女から離れて、今度はアーデに向かって襲い掛かろうとしてきたが、
「じゃあね!」
と、アーデは挑発するかのようにそう言うと、バトル・ベアに背中を向けるようにその場から駆け出し、それを追いかけるかのように、
「グルァ!」
と、バトル・ベアもその場から動きだした。
その後、アーデ達がいなくなったのを確認すると、
「よ、よし、オレ達も行こう!」
「う、うん!」
と、春風はレナに向かってそう言ったあと、動けずにいた2人の男女のもとへと駆け出した。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。今回の話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせることが出来ずに、けっか、1日遅れの投稿になってしまいました。
本当にすみません。




