第142話 お仕事、開始!
こうして、アーデが同行、それもかなり強引にという形で、春風、レナ、グラシアは「ハンター」としての仕事をする為にフロントラルを出発した。
その道中、
「あのさぁ、レナ」
と、春風が小声でレナに声をかけてきたので、それにレナが「何?」と返事すると、
「あのアーデって人、いつもあんな感じなの?」
と、自分達の前を歩くアーデを見ながらそう尋ねた。
その質問に対して、レナは「うーん」と唸ると、
「正直、私もあの人のことは、『タイラーさんの助手をしていて戦闘力は高い』って話以外は聞いたことないからわかんないんだよねぇ。私、普段は1人で行動しているから」
と答えた、最後に「あはは」と苦笑いした。
それを聞いて、春風が「そ、そうなんだ」と呟くと、
「春風様、レナ様」
と、銀の籠手にセットされたマジスマ内のグラシアが小声でそう話しかけてきたので、春風は目の前のアーデに聞こえないように警戒しながら、
「どうしたんですかグラシアさん?」
と、小声で返事すると、
「気を付けてください、彼女、何やら『危険なもの』を感じます」
と、グラシアが真剣な感じの口調でそう言ったので、
「……そうですね。気を付けます」
「うん、わかった」
と、2人も真剣な感じの口調でそう返事した。
そして、春風達は仕事の目的地であるフロントラルから少し離れた大きな森に着くと、
「それじゃあ、戦闘面は私に任せて、春風は薬草の採取をお願いね」
「うん、わかった」
と、春風とレナはそう方針を決めて、
「それじゃあ、私はレナをサポートする」
と、アーデが親指を立てながらそう言うと、
「……お願いします」
と、レナは警戒しながらそう返事した。
その後、春風達は森の中に入り、方針通りに春風は薬草の採取、レナはそれを狙うジャベリン・ラビットの討伐、そしてアーデはレナのサポートを開始した。目的の薬草は主に大きな木の根本辺りに生えていて、その薬草を狙ってジャベリン・ラビットが現れる為、
「あ、いたいた」
というふうに、特に苦労することなく見つけることが出来た。
数は1匹、周りに仲間はいない。
それを確認すると、
「じゃあ、私とアーデさんがアイツを仕留めるから、その隙に春風は薬草を」
「わかった」
と、春風とレナが小声でそう話し合うと、
「いくよ!」
というレナの合図と共に行動を開始した。
まずはレナとアーデがジャベリン・ラビットに素早く飛びかかって薬草から引き離し、相手が戦闘態勢に入ったところで自分達もそれぞれの武器を構えた。レナは腰のポーチから愛用の棒を取り出し、アーデは腰のベルトにさした2本の小振りの剣。形は同じなので、「双剣」と呼べばいいだろう。
まぁとにかく、2人が武器を構えると、目の前のジャベリン・ラビットの槍のような鋭い角が、キィンと音を鳴らした。
次の瞬間、周りの木々から他のジャベリン・ラビットが現れた。
その数、5匹。
お互い睨み合う中、
「……アーデさん、いける?」
と、レナがそう尋ねて、
「余裕。レナこそ平気?」
と、アーデがそう尋ね返すと、
「平気に決まってるでしょ」
と、レナは不敵な笑みを浮かべながらそう返事した。
それと同時に、6匹になったジャベリン・ラビット達の角が緑色に光り出し、それぞれ風を纏い始めた。
それが、「戦闘準備が終わった」ということだと理解すると、レナとアーデはグッと武器を握り締めて突撃した。
レナがその内の1匹に向かって棒を振るい、アーデも別の1匹に向かって双剣を振るった。
しかし、2匹のジャベリン・ラビットはそれらを難なく躱す。
その瞬間、残りの4匹がレナとアーデに突撃してきた。
風を纏わせた角による攻撃、それが4つもある。
それを見たレナとアーデは、強引に武器を振るってそれらの攻撃にぶつけた。
その瞬間、ガキンという音と共にお互い吹っ飛ばされたが、どちらも空中で体を回転させながら体勢を整えた。レナとアーデはどちらも動き易さを重視した装備に見を包んでいたので、特に苦もなく2人して地面に華麗に着地した。
そして再び攻撃体勢に入ると、両者はまた突撃を開始した。
そんなレナ達の様子を見て、
(うわぁ、2人とも凄いなぁ)
と、春風は心の中でそう感心していたが、
「春風様、見惚れてないで、お仕事お仕事」
と、グラシアに注意されてしまったので、
「あ、そうでした。すみません」
と、春風はハッとなってそう謝罪すると、レナ達が戦っている隙ついてスキル「隠密」を発動し、静かに目的の薬草へと進み出した。
そして薬草のすぐ傍に着くと、「隠密」を解除して、迅速かつ丁寧に薬草を採ろうとした。
ところが、
「っ!」
それに気付いた6匹のジャベリン・ラビットの1匹が、レナとアーデを隙を掻い潜って春風に突撃したので、
「しまった、春風……!」
と、レナは思わず声をあげたが……。
ーーザシュ!
ーーボトッ!
なんと、春風に突撃したジャベリン・ラビットの首が胴体から離れて、地面に落ちたのだ。
理由は簡単。ジャベリン・ラビットが春風に攻撃しようとした瞬間、それよりも早く春風は腰の刀、翼丸を鞘から抜き、それでジャベリン・ラビットの首を斬り飛ばしたからだ。
地面に落ちたジャベリン・ラビットの首と胴体を見て、レナとアーデは勿論、残りのジャベリン・ラビット達も目をパチクリとさせると、
「ん? 何か言った?」
と、春風が翼丸を握ったまま首を傾げながら尋ねてきたので、
「「お、お見事」」
と、レナとアーデは2人してそう言うと、それからすぐに仲間が死んだ……否、殺されたことによって動けずにいた残りのジャベリン・ラビット達を討伐した。
その後、春風達は倒した全てのジャベリン・ラビット達を処理すると、
「よし、それじゃあこの調子でお仕事頑張ろう!」
と、何故かアーデが仕切るようにそう言い、
「「お、おー」」
と、春風とレナがなんとも言えない表情でそう返事すると、他の場所へと進み始めた。
しかし、春風達は知らない。
「……ぐるる」
現在、春風達がいる森の中で、1つの不気味な影が蠢いているのを。
戦闘シーン、上手く出来てなかったらすみません。




