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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第5章 誕生、ユニークな「ハンター」?

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第141話 「同行者」アーデ


 中立都市フロントラルから少し離れた位置にある、とある大きな森の中。


 そこは、如何にも()()が出てきそうなほど、暗くて不気味な雰囲気を出しているが、今はまだ昼間、おまけに天気は晴れなので、ところどころに日の光が差し込んでおり、それが多少不気味な雰囲気を和らげていた。


 そんな森の中で、現在、春風とレナがそれぞれ「ハンター」としての仕事をこなしていた。


 仕事の内容はというと、「ハンター」になったばかりの新人である春風は、その森で採れる「薬草」の採取で、それがどのようなものかについては、仕事を受ける手続きの際に男性職員から聞いていたので、あとはその情報をもとに春風自身のスキル「神眼」を用いて探すという方針だ。


 一方、レナの方はというと、今、春風が薬草を探している森の中に生息する魔物「ジャベリン・ラビット」の討伐である。こちらは額に「槍の穂先」のような鋭い角が生えた兎型の魔物で、普段は大人しいが集団戦闘を得意とし、戦闘時はその角に風属性の魔力を纏わせて、その状態で岩をも砕く突進攻撃をするという。


 それだけでも厄介なのだが、なんとこの魔物、「薬草」が大好物のようで、今の時期になると森に多く生えた「薬草」を食べに現れるという。その為にこうしてハンターギルドに「討伐」の依頼が来るそうだ。


 余談ではあるが、レナと別れてた数日間、春風もこの魔物と戦ったことがあったが、その集団突進攻撃にかなり苦戦していたという。


 まぁそれはさておき、そんな感じで現在、春風はその厄介なジャベリン・ラビットが多数いるという森の中で、そいつらよりも早く薬草を採取し、レナは薬草を狙うジャベリン・ラビットを倒し続けていた。


 それだけでも春風とレナはかなり緊張していたのだが、それとは別に、2人が緊張してる理由がもう1つあった。


 それは、この場にいる1人の「同行者」の存在である。


 「同行者」の名はアーデ。レギオン「黄金の両手」のリーダーであるタイラーの助手を務める若い女性だ。


 何故、春風とレナの仕事に彼女が同行しているのか? 


 それは遡ること少し前。


 「私も行く。拒否権はない」


 「「……はい?」」


 フロントラルの「外」へと続く門にて、アーデから発せられた()()()()()()()に、春風とレナは思わず首を傾げると、


 「あのぉ、それって何かの冗談でしょうか?」


 と、ハッとなった春風は、アーデに向かって恐る恐るそう尋ねた。


 その質問に対して、


 「冗談じゃない。あなた達の仕事……というより、()()、あなたの『初仕事』に同行させてほしい」


 と、アーデは真面目な表情で真っ直ぐ春風を見つめながらそう答えたので、


 「ちょ、ちょおっとぉ! アンタ、一体何企んでるのさ!?」


 と、漸くハッとなったレナはプンスカと怒鳴りながらそう尋ねた。


 その質問にアーデが「むむ!」と反応すると、


 「企んでるとは人聞きが悪い。私は単純に彼に()()がある。ただそれだけ」


 と、チラッと春風を見ながらそう答えたので、


 (は? 何を言ってるんだこの人)


 と、春風はそう疑問に思った後、「はぁ」と溜め息を吐いてキョロキョロと辺りを見回すと、アーデにゆっくりと近づいて、


 「あのですねアーデさん。小闘技場でも言いましたが、俺はあなたが興味を持つような大層な人間じゃありません。そんな人間に同行などしたら凄く退屈な時間になるでしょうし、あなたを失望させる結果になることは間違いないでしょう。ですので、どうか俺達のことはほっといてください」


 と、周りに聞こえないように気を付けながら、小さめの声でそう言い、それに続くように、いつの間にか春風の傍に立っていたレナも、


 「うんうん! ほっといて!」


 と、何度も力強く頷きながらそう言った。


 ところが、


 「無理」


 と、アーデに即答されしまい、それを聞いた春風とレナはショックで白目をむいて後ろに倒れそうになったが、


 「「ふんぬ!」」


 と、すぐにハッとなった2人は同時に踏ん張ると、


 「いやいやアーデさん、そんな『無理』って我儘言ってはいけませんよ。俺、言いましたよね? 『凄く退屈な時間になる』と」


 と、春風は落ち着いた口調でそう言い、それに続くように、レナも「うんうん」と何度も頷いたが、


 「それを決めるのは私であってあなたじゃないよ」


 と、キッパリとそう言われてしまい、2人は再びショックで白目をむいて後ろに倒れそうになったが、


 「「ふんぬ!」」


 と、再びすぐにハッとなってどうにか踏ん張った。


 そして、


 「いやいや、ですからぁ……」


 と、春風がまだ何か言おうとした、まさにその時、


 「あーよいしょっと」


 「「!?」」


 なんと、アーデは2人を自身の両肩に担いだので、


 「は!? ちょ、アーデさん!?」


 「こ、こら! 下ろしなさい! ていうか、アンタ力つよ!」


 と、驚いた2人はジタバタしながらアーデに何か言おうとしたが、


 「言った筈だよ? 『拒否権はない』って」


 と、アーデは淡々とした口調でそう言い、その言葉に対して、


 「いやいやいや! この状況おかしくないですか!? ていうか、アーデさん! 俺、重くないですか!?」


 と、春風は尚もジタバタしながらそう尋ねると、


 「問題ない。寧ろ、春風、レナよりも軽すぎ。もっとお肉食べた方がいい」


 と、逆にそう言われてしまい、春風は「え、えぇ!?」とショックを受け、


 「ちょおっとぉ! 私そんなに太ってないよ!」


 と、レナは逆に怒りが増した。


 しかし、それからすぐに春風が「は! いやそうじゃなくて……!」とショックから回復すると、


 「アーデさん、こんなことタイラーさんが許す筈ないでしょ!?」


 と、アーデに向かってそう尋ね、


 「そ、そうよ! 許す筈ないわ! あの人には黙ってあげますから、今すぐ私達を下ろして!」


 と、レナもアーデに向かって怒鳴りながらお願いしたが、


 「問題ない。既にリーダーから許可はもらってるから」


 と、そう即答されてしまい、春風とレナは2人して「「そ、そんな!」」と大きなショックを受けた。


 そんな心境の春風とレナを無視して、


 「もう言いたいことは終わり?」


 と、アーデは尋ねるようにそう言うと、返事を聞く前に、


 「じゃ、時間が惜しいから、行くよ」


 と言って、2人を担いだ状態のままその場から駆け出し、


 「「お、お、下ろしてぇえええええ!」」


 と、悲鳴をあげた2人を門を潜ってフロントラルの外に出た。


 因みに、春風の左腕の籠手に装着されたマジスマ内では、


 (こ、こ、これは一体、どういう状況になってしまったのですか!?)


 と、グラシアが「わけわからん!」と言わんばかりのオロオロしていた。

 

 


 


 


 

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