第125話 その頃、水音達は……・2
今回はいつもより長めの話です。
それから間もなくして、水音達を乗せた魔導飛空船は、帝城内にある発着場へと入った。
その後、魔導飛空船はだんだんスピードがゆっくりになり、最後は静かに動きが止まった。
そんな魔導飛空船内では、
「じゃあみんな! 降りる準備は出来たか!?」
と、外へと続く扉の前で、ヴィンセントが水音達に向かってそう尋ねてきたので、
「「「「「「はい! 出来てます!」」」」」」
と、水音達は元気よくそう返事した。
それを聞いて、ヴィンセントは「うむ、元気でよろしい」とニヤッとしながら言うと、ガチャリと扉を開けて、息子であるレオナルドと、娘であるエレクトラと共に外へと出たので、その後を追うように、水音達も扉を潜って外へと出た。
その瞬間、
「それじゃあ……」
と、ヴィンセントがそう呟くと、
「ようこそ! 我が『ストロザイア帝国』に!」
と、水音達に向かって両腕を広げながら、声高々にそう言ったので、それを聞いた水音達は思わずギョッとなった後、
「「「「「「お、お邪魔……します」」」」」」
と、少し緊張した様子でヴィンセントに向かってそう返事した。
そんな水音達の返事に対して、
「おいおい、そんなに緊張することもないだろ……」
と、ヴィンセントがそう言った、まさにその時、
「「あ!」」
と、レオナルドとエレクトラがそう声をあげたので、
「ん? どした2人共?」
と、それにヴィンセントが反応すると、
「おかえりなさい、みんなぁ」
という女性のものと思われる声がしたので、それにヴィンセントだけでなく水音達までもが「え?」と反応すると、
「お!」
と、今度はヴィンセントがとある方向を見ながらそう声をあげたので、
(ん? どうしたんだろう?)
と、そう疑問に思った水音が、ヴィンセント達の視線の先を見ると、そこには、穏やかな笑みを浮かべた1人の女性と、「騎士」を思わせるかのような立派な鎧を纏った1人の少女が、こちらに向かって歩いてきてるのが見えたので、
「ん? 誰かこっちに歩いてきたよ?」
「誰だろう? ヴィンセント皇帝陛下の知り合いかな……?」
と、祭と絆は小さな声でそう疑問を口にし、そんな2人の声が聞こえたのか、進、耕、祈も「誰だろう?」と言わんばかりに首を傾げたが、
(あ、あの人は確か……!)
と、ただ1人、水音だけはその女性の顔を見て、何かを思い出したかのような表情になった。
その後、女性と鎧姿の少女が、ヴィンセントらの傍に着いたので、
「おお、ただいまキャリー! わざわざ出迎えにきてくれたのか!?」
と、ヴィンセントがパァッと表情を明るくさせながら、女性に向かってそう尋ねると、
「ええ、そうですよ陛下」
と、「キャリー」と呼ばれた女性は穏やかな笑みを浮かべたままそう答え、その後、
「お疲れ様レオンちゃん」
と、レオナルドに向かってそう言ったので、
「「に、ニックネーム!?」」
「「「しかも、ちゃん付け!?」」」
と、水音を除いた勇者達はギョッと大きく目を見開きながら驚いた。
その驚きの声が届いたのか、ヴィンセントが「ん?」と反応すると、
「おっといけねぇ!」
と、そう声をあげた後、水音達の方へと振り向いて、
「紹介しよう、勇者諸君。俺の妻にして、レオナルドとエレクトラの母であるキャロラインだ」
と、その女性、「キャリー」ことキャロラインをそう紹介し、
「ああ、水音は会うの2度目だったな」
と、最後にそう付け加えたので、
「は、はい」
と、水音はコクリと頷きながらそう答えた。
その後、
「はじめまして勇者ちゃん達ぃ。私はキャロライン・ハンナ・ストロザイア。このヴィンセントの妻で、ストロザイア帝国の皇妃よぉ。よろしくねぇ」
と、キャロラインがチラッとヴィンセントを見ながらそう自己紹介すると、
「そっちのあなたは、私に会うのは2回目でしたよねぇ?」
と、ヴィンセントと同じように水音に向かってそう尋ねたので、水音はそれに「はい」と頷くと、
「改めてお初にお目にかかります。自分は桜庭水音と申します。因みに、『桜庭』が苗字で、『水音』が名前です」
と、キャロラインに向かってそう自己紹介した。
その自己紹介を聞いて、
「まぁご丁寧に。こちらこそ改めてよろしくね、水音ちゃん」
と、キャロラインは水音を『ちゃん付け』でそう呼んできたので、
「み、『水音ちゃん』って……」
と、水音は何かツッコミを入れようとしたが、
「あーすまねぇな水音。キャリーは基本『ちゃん付け』で人呼ぶことが多くてな、特に気に入った相手には『ちゃん付け』に加えてニックネームで呼ぶこともあるんだ」
と、それを遮るかのようにヴィンセントが「待った」をかけた後、
「は、はぁ。そうでしたか」
と、水音は盛大に頬を引き攣らせながらそう言った。
その後、
「じゃあみんな。ここではなんだから、謁見の間に行こうぜ……」
と、ヴィンセントがそう仕切ったが、
「あ、ちょっと待って陛下ぁ」
と、今度はキャロラインが「待った」をかけてきたので、
「ん? どうしたキャリー?」
と、ヴィンセントがそう返事すると、
「エレンちゃん」
と、キャロラインはエレクトラの方へと視線を向けながらそう声をかけてきたので、
「は、はい。何ですか母様?」
と、エレクトラがそう返事すると、
「陛下から聞いたわよぉ。エレンちゃん、ルーセンティア王国で随分と暴れたみたいねぇ」
と、キャロラインは更に穏やかな笑みを浮かべながらそう尋ねてきたので、
「うぐ! そ、それは……」
と、エレクトラは何か言い訳をしようとしたが、それよりも早く、
「言い訳はやめなさい、エレクトラ」
と、キャロラインが真剣な表情を浮かべながら、エレクトラに向かって本名でそう呼んできたので、それを聞いた次の瞬間、
「ウグゥ!」
と、エレクトラはまるでカチコチに固まったかのようにその場に止まった。
それを見て、キャロラインが「よし」と言うと、
「レクシーちゃん、お願い」
と、キャロライン傍に立つ鎧姿の少女に向かってそうお願いし、
「はっ! わかりました!」
と、鎧姿の少女ーー以下、レクシーがそれにそう返事すると、
「エレクトラ様、失礼!」
と、エレクトラに向かってそう言った後、
「よいしょっと!」
と、まるで大きな荷物を肩で担ぐかのように、エレクトラを自身に肩に置いたので、
「え!? 何事ですか!?」
と、それを見た水音はギョッとなった後、
「ああ、心配しないで水音ちゃん。ちょっと、エレンちゃんとお話しするだけだから」
と、キャロラインは水音に向かって穏やかな笑みを浮かべながらそう言ったので、それを聞いた水音達は、
「「「「「「は、はぁ、そうですか」」」」」」
と、水音をはじめとした勇者達はそう返事した。
その後、
「それじゃあ陛下にレオンちゃん。私、ちょっとエレンちゃんとお話ししてくるから」
と、キャロラインはヴィンセントに向かってそう言うと、エレクトラを担いだ「レクシーちゃん」と呼ばれた少女と共に、その場から歩き出した。
勿論、その際に、
「いやあああああ、助けてぇえええええ! 許してください母様ぁあああああ!」
と、エレクトラはそう悲鳴をあげていた。
そんなキャロライン達を見送った後、
「じ、じゃあ改めて謁見の間に向かうか?」
と、ヴィンセントが水音達に向かってそう尋ねてきたので、
「「「「「「あー、はい」」」」」」
と、水音達はコクリと頷きながらそう返事した。
前回は少し短めの話でしたので、今回は少し長めの文章にしました。




