第115話 2人の「目的地」
遅くなりました、1日遅れの投稿です。
その後、春風とレナはシーフ・ファルコンの処理をすると、また、森の中を進み出した。
ただ、その最中、
「ギュワァ!」
「キャッ!」
「あ、まだ生きてた」
倒したと思っていたシーフファルコンが、突然立ち上がって春風に襲いかかってきたが、
「はぁ……」
と、春風は溜め息を吐くと、持っていたもう1つの武器である「黒扇・夜羽」ーー以下、夜羽に風を纏わせた。ただし、今度は開いた状態ではなく、閉じた状態で、だ。
次の瞬間、夜羽に集まった風は、まるで「剣」のように形を変えた。
そして、春風はその「風の剣」を振るって、シーフ・ファルコンの頭と左右の翼を斬り落とした。
頭と翼を失って、シーフファルコンはドサッと音を立ててその場に倒れる。それを確認すると、春風は夜羽を「風の剣」から元の扇に戻した。
一連の出来事を見て、
「……ねぇ、春風」
と、レナが春風に声をかけてきたので、それに春風が、
「ん? 何、レナ?」
と、首を傾げながら返事すると、
「春風って、『レベル』や『職能』っていうか、『ステータス』そのもの関係なく、実は結構強かったりする?」
と、レナは恐る恐るといった感じでそう尋ねた。
その質問に対して、春風は「あー、そのー」と気まずそうにそう声をもらすと、
「『神様』に改造されたっていうか、『人間』辞めちゃったから……」
と答えて、最後に「ははは……」と苦笑いした。
そして、無事にシーフ・ファルコンの処理を終えて、暫く森の中を進んでいると、
「はぁ、漸く抜けられたぁ」
と、レナがそう呟いたように、2人はやっと森を出ることが出来た。
その後、
「えっと、俺達が向かうのって……」
と、春風がレナに向かってそう言うと、
「こっちだよ。ついて来て」
と、レナに案内されるかのように、またその場から歩き出した。
見渡す限りの広い草原。
その草原をスタスタと歩く春風とレナに、心地よい風が吹いてきたので、
「あー、すっごく気持ちいい」
と、春風がそう感想を言うと、
「ふふ。ここら辺に吹く風、私結構好きなんだぁ」
と、レナが笑いながらそう言ったので、
「へー、そうなんだ」
と、春風はそう返事した。
それから更に暫くの間、2人が草原を進んでいると、
「あ、ほら見て春風!」
と、レナがとある方向を指差したので、春風は「何だ?」とその方向を見ると、
「あ、『道』がある!」
と、春風が大きく目を見開きながらそう言ったように、そこには大勢の人達が行き交う整えられた「道」があったので、
「そうだよ。で、あの先にあるのが、私達の『目的地』なんだ」
と、レナは笑顔で頷きながらそう言った。
その後、
「それじゃあ、行こう!」
「うん!」
と、2人はそう言い合うと、草原を駆け抜けて「道」に入り、そこを利用する人達に交じるように歩き出した。
そうして暫く歩いていると、
「あ、見えたよ!」
と、レナが前方を指差しながらそう言ったので、春風が「ん?」とその方向を見ると、
「……壁?」
そこには、何やら大きな「壁」のようなものが見えたので、
「えっとぉ、レナ」
と、春風はレナに声をかけて、それにレナが「何?」と返事すると、
「もしかしてだけど、あの大きな『壁』っていうか、その向こうが……?」
と、春風は恐る恐るそう尋ねたので、それを聞いたレナは、
「そうだよ。あそこが私達の『目的地』だよ」
と、コクリと頷きながらそう答えた。
それから更に暫く歩くと、2人は漸く「壁」こと「目的地」に着いた。
すぐに近くで見ると、その「壁」はとても大きく、あまりの大きさに、
「うわぁ、で、デカい」
と、春風は思わず見入ってしまったので、それにレナが「ふふふ」と笑うと、
「ほら、行くよ」
と言って春風の手を掴むと、引っ張るように歩き出した。
それから少しすると、2人は「壁」の向こうへと続く大きな「門」のすぐ近くに着いたので、
「さぁ、行くよ……」
と、レナが再び春風の手を引こうとしたが、
「ちょ、ちょっと待って!」
と、急に春風がその場に止まったので、
「ん? どうかしたの?」
と、レナが首を傾げると、
「あのさぁ、レナ。ちょっと、質問してもいいかな?」
と、春風が何やら暗い表情でそう言った。
その質問に対して、
「え、な、何? どうしたの?」
と、レナがタラリと汗を流しながらそう返事すると、
「その……凄く変な質問をするけど……」
と、春風は暗い表情のままそう言ったので、
「……何?」
と、レナは再びタラリと汗を流しながらそう返事すると、春風は真っ直ぐレナを見つめて、
「俺……男っぽく見える?」
と、真剣な表情でそう尋ねた。
その質問を聞いて、
「……はい?」
と、レナが更に首を傾げると、
「その……俺、顔がこんなだから、せめて格好は男っぽくしたけど、不安になっちゃって……」
と、春風は自身の顔を指差しながらそう言った。
そう、以前語ったように、春風自身の性別は「男」なのだが、その顔はどう見ても「女」、それも「美少女」と呼んでもいいくらいのものだったので、その所為で色々と苦労してきたのだ。
まぁ、それはさておき、そんな春風の「不安」に満ちた言葉を聞いて、レナは「ああ、そういえば……」と納得すると、
「だ、大丈夫だよ! 私は、春風が『男』だって理解してるし! それに、本当に自分が『男』だって思ってるなら、堂々としてればいいんだよ! そうすれば、きっと他の人だってわかってくれるって!」
と、春風の背中をバンバンと叩きながらそう励ました。
その励ましを受けて、
「そ、そうだよね! うん、ちょっと自信がついたかも!」
と、春風は力強く頷きながらそう言うと、
「そうそう! ほらほら、早く行こ!」
と、元気よくそう言ったレナについて行くように、春風はその場から歩き出した。
そして、いざ、門のすぐ傍まで近づくと、
「ん? ああ、レナ!」
と、門番と思われる鎧姿の若い男性がレナに向かって声をかけてきたので、
「どうも! ただいま戻りました!」
と、レナは元気よく若い男性にそう挨拶した。
それを聞いて、
(あ、レナの知り合いかな?)
と、春風が疑問に思ってると、
「もう用事は済んだのか?」
と、若い男性がレナに向かってそう尋ねてきたので、
「うん、予定通り、知り合いの息子さんと合流出来たから!」
と、レナは春風を見ながら元気よくそう言った。
その言葉を聞いて、
「あ、どうも、こんにちは……」
と、春風が若い男性に向かって頭を下げると、
「え? 息子さんって……このお嬢ちゃんが?」
と、若い男性は春風を見ながら驚いたようにそう言ったので、春風はピキッとなった後、
「俺は『男』です!」
と、若い男性に向かってそう怒鳴った。
どうやら、前途多難のようである。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせることが出来ず、結果1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。




