第114話 もう1つの「武器」
本日2本目の投稿です。
サーベル・ハウンドの処理が終わると、春風とレナは再び森の中を進み出した。
「いやぁ、いっぱいとれたねぇ」
と、処理に最中に手に色々と手に入ったことに対して嬉しそうに表情を明るくしたレナ。
そんなレナに向かって、
「ごめん、レナ。手伝わせちゃって……」
と、春風が申し訳なさそうに謝罪すると、
「そんな気にしないでよ。私と春風はもう、これから一緒に戦う『仲間』になったんだから」
と、レナは笑顔でそう返事したので、
「仲間……か」
と、春風はキョトンとしながらそう呟くと、「はは……」と小さく笑って、
「そうだね。ありがとう」
と、レナに向かってそうお礼を言った。
それから少しすると、
「ところで春風」
と、レナが声をかけてきたので、春風がそれに「何?」と返事すると、
「その剣なんだけど、随分切れ味がいいよね?」
と、レナが春風の腰の翼丸を指差しながらそう尋ねてきた。
その質問に対して、春風は「ああ……」と声をもらすと、その場に立ち止まって、翼丸をゆっくりと鞘から引き抜いた。
ギラリと輝く反りのある片刃の刀身。
そこに浮かぶ綺麗な刃文。
先程、サーベル・ハウンドの首を刎ねたばかりだというのに、まるで水で洗い流されたかのようにその血はすっかり消えていたので、
「うわぁ……」
と、レナは見惚れるかのように目を大きく見開きながらそう声をもらした。
そんなレナを見て、
「あ、あの……レナ?」
と、春風が恐る恐るそう声をかけると、レナはハッとなって、
「ご、ごめん! 『凄く綺麗だな』って思って、つい見入っちゃった!」
と、大慌てで謝罪すると、最後に「あはは……」と誤魔化すように笑った。
それを聞いて、春風は「そ、そうなんだ」と言うと、
「それにしても、片刃なんて珍しいね。男の子なら、騎士の剣みたいな『両刃の方がかっこいい』って考えると思うけど……」
と、レナが首を傾げながらそう言ってきたので、
「あー。それ多分、俺の祖国が関わってるのかも」
と、春風は気まずそうに頬をポリポリと掻きながらそう言った。
その言葉を聞いて、
「え? 春風の祖国?」
と、レナは再び首を傾げると、
「うん。こいつは精霊さん達と一緒に作った、俺の祖国『日本』に古くから伝わる剣で、『刀』、もしくは『日本刀』って呼ばれていて、扱い方によっては今のサーベル・ハウンドのように一撃で首を斬り落とすことも出来るんだ」
と、春風は翼丸、正確に言えば「刀」についてそう説明した後、
「因みに、名前は『霊刀・翼丸』ね」
と、最後にそう付け加えた。
その説明を聞いて、
「お、おぉ。なんか、かっこいい」
と、レナは目をキラキラさせると、
「じゃあさ、春風。そっちのケースには何が入ってるの?」
と、春風の腰のベルト、もっと言えば翼丸の鞘の隣についている革製のケースを指差しながらそう尋ねた。
その質問を聞いて、春風は「ん?」と首を傾げた後、「ああ……」と声をもらして、翼丸を鞘に納めると、その革製のケースに入っている「あるもの」をグッと握って、ゆっくりとケースから引き抜いた。
その後、レナはその「あるもの」を見て、
「げっ! そ、それは……!」
と、警戒するかのように後ろに下がりながらそう言うと、春風は「あはは」と笑って、
「うん。師匠にもらった『お守り』を改造したものさ」
と、レナに向かってそう言った。
そう、革製のケースに入ってたのは、春風が「師匠」と呼ぶ人物にもらった「お守り」こと黒い扇ーーを改造したものだった。
何処をどう改造したのかというと、全体の大きさは最初にレナやヘリアテスに見せた時は普通の扇子と同じくらいの大きさだったが、今はそれよりも多少大きくなっていて、閉じた状態の表面には金色のシンプルな装飾が施され、その装飾には赤、青、緑、オレンジ色の小さな宝石がはめ込まれていた。
そんな改造された黒い扇を見て、
「ち、因みにだけど春風。もしかして『重さ』の方も……?」
と、レナが恐る恐るそう尋ねると、春風はニヤッと笑って、
「持ってみる?」
と、その改造した黒い扇をレナに差し出した。
すると、初めて持った時のことを思い出したのか、
「いや、いい! 遠慮します!」
と、レナは大慌てで断り出したので、春風は「はは」と笑った。
その後、
「そ、それで、『改造』したって、見た目以外はどう変わってるの?」
と、レナがまた恐る恐るそう尋ねると、
「ああ、それは……」
と、答えようとしたが、
「っ!」
と、何かを感じたかのように表情を変えた後、すぐにその改造した黒い扇をバッと広げると、
「……」
と、春風はそれを持ったまま、黙って目を閉じた。
すると、改造された黒い扇についている緑色の宝石が輝き出し、それと同時に黒い扇が風を纏い始めた。
それを見て、
「え!? な、何々!?」
と、レナが驚いていると、
「は!」
と、春風は上空に向かって、その風を纏った改造された黒い扇を、まるで円盤を投げるかのように投げた。
次の瞬間、
「ギャッ!」
という悲鳴のような叫びと共に、春風とレナの前に1羽の鳥のようなものが落ちてきた。
何故、「鳥」ではなく「鳥のようなもの」かというと、見た目こそ鳥なのだが、その大きさは春風やレナと同じくらい大きく、その爪は如何にも「1度掴んだら絶対に離さない」と言わんばかりに鋭そうだった。
因みに、その鳥のようなものの首辺りには、先程春風が投げた改造された黒い扇が、食い込むように刺さっていた。
突然の事にレナは呆然としていたが、目の前に落ちてきたその鳥のようなものを見て、
「あ! こいつシーフ・ファルコンじゃない!」
と、大きく目を見開きながらそう叫んだ。
その叫びを聞いて、
「うん、こいつの気配を感じてね。ちょっと先手を打たせてもらったのさ」
と、春風はそう言うと、その鳥のようなもの……否、シーフ・ファルコンに刺さっていた黒い扇を引き抜き、パタンと閉じた。勿論、その刺さっていた部分からは血が噴き出てきたので、春風とレナは思わずそこから飛び退いたが。
まぁとにかく、2人はすぐにそのシーフ・ファルコンを処理して、その後、
「そ、それにしても、春風。さっき見せた翼丸もそうだけど、その扇も凄いよね」
と、レナがそう声をかけてきたので、
「うん。こいつは今みたいに投げて敵を攻撃するだけじゃなく、閉じた状態で打撃を、開いた状態で斬撃を出して、更には『杖』みたいに魔術の発動媒体にすることも出来るんだ。言ってみれば、こっちがメインの武器で、翼丸はサブ的な位置なんだよね」
と、春風はその改造された黒い扇を見せながらそう説明した。
その説明を聞いて、
「そ、そうなの!?」
と、レナは大きく目を見開きながら驚くと、
「……因みにその扇にも、翼丸と同じように『名前』とかあったりする?」
と、恐る恐る春風に向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「うん、あるよ」
と、春風は頷きながらそう言うと、
「『夜』の『羽』って書いて、『黒扇・夜羽』。それがこいつの名前さ。ああ、呼ぶ時は『夜羽』ね」
と、その改造された黒い扇改め、「黒扇・夜羽」を見ながらそう言った。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。誠に勝手ながら、前回と前々回の話について、少し修正をさせてもらいました。特に前々回の話のサブタイトルも修正させてもらいました。
本当にすみません。




