第113話 春風の実力
遅くなりました、1日遅れの投稿です。
異世界エルードのとある森。
その森の中で今、
「……悪く思うなよ。これも俺自身の為なんだ」
少年、春風の戦いが始まろうとしていた。
グッと自身の武器である刀、「霊刀・翼丸」ーー以下、翼丸を握り締め、目の前にいる鋭い牙を生やした犬のようなものを睨む春風。
その数は数えられるものだけで既に10数匹。いや、もしかしたらそれ以上いるかもしれない。
『グルル……』
と、その鋭い牙を見せつけながらそう唸り声をあげた犬のようなものの1匹に対して、
「スキル『神眼』、発動」
と、春風は自身が所持しているスキルの1つ、「神眼」を発動した。
すると、目の前の犬のようなものから、春風達のものと同じステータスウィンドウのようなものが現れた。
そして、それをよく見ると、そこにはこう記されていた。
サーベル・ハウンド……刃のような鋭い牙を持つ犬型の魔物。素早さを活かした物理攻撃だけでなく、その牙に自身の魔力を込めた攻撃も得意とする。
(へぇ、魔力攻撃も得意なんだ)
と、スキル「神眼」で調べた結果に、春風がそう感心していると、
「「「グルルゥ」」」
と、春風の目の前にいる犬のようなものーー否、サーベル・ハウンドが3匹ほど1歩前に出てきた。
春風に対して鋭い牙を見せつけながら呻き声をあげる3匹のサーベル・ハウンド達。
それに対して、
(お? まずはこいつらか?)
春風は落ち着いた表情で目の前の3匹を真っ直ぐ見つめた。
森の中で睨み合う両者。
そんな両者を見て、レナがゴクリと唾を飲んだ次の瞬間、
「「「ガァ!」」」
と、3匹のサーベルハウンドが一斉に春風に飛びかかった。
このままいけば、春風が3匹のサーベル・ハウンド達の餌食となってしまう。
しかし、
「……」
春風はその場から動こうとはせず、ただ、ジッと自身に飛びかかろうとしてきたサーベル・ハウンド達を見つめると、素早くその場から前進して、思いっきり刀を振るった。
ーーザシュ! ザシュ! ザシュ!
と、肉を切り裂くような音がした後に、サーベル・ハウンド達は地面に着地する。
一方、春風はというと、サーベル・ハウンド達とは離れた場所で、彼らに背を向ける形で翼丸を構えていた。
そして、サーベルハウンド達が自分達の背後に春風がいるのがわかり、すぐにその方向へと降り向こうとした、次の瞬間……。
ーーズルリ。ボトッ!
なんと、サーベル・ハウンドの首がそんな音を立てながら地面に落ちたのだ。それも、3匹同時にである。
そして、その後すぐに残された胴体もパタリと倒れた。
そんな状況を目の当たりにして、
「す、凄い……」
と、レナは目をキラキラとさせながらそう呟き、残ったサーベル・ハウンド達はというと、最初は何が起きたのか理解出来ずにポカンとしていたが、それから少しして、漸く目の前で仲間が殺されたことを理解すると、彼らはお互い顔を見合わせた後、キッと春風を睨みつけて、
『ガァ!』
と、一斉に春風に向かって突撃してきたので、
「は、春風!」
と、レナは思わずギョッとなったが、
「……」
春風の方はというと、落ち着いた様子のまま翼丸を構えていた。
そして、突撃してきたサーベル・ハウンド達が、春風を攻撃しようとした次の瞬間、
「ふ!」
と、春風は素早くサーベル・ハウンド達に近づき……。
ーーザシュ! ズバッ! ズババ……!
と、一匹、また一匹と、次々に翼丸を振るった。
そして、その後間もなく地面に着地するサーベル・ハウンド達と春風。
サーベル・ハウンド達は一体何が起きたのか理解出来ないまま、春風の方へと振り向こうとしたが、
ーーズルリ! ボトッ!
なんと、最初に殺された3匹と同じように、次々と音を立てながら、一斉にその首が地面に落ち、残された胴体もパタリとその場に倒れた。
春風はそれを見届けたあと、翼丸を思いっきりブンッと振って、刀身に付着した血を落とした。
そんな一連の出来事を見て、
「す、すっごーい! 凄いよ春風……!」
と、レナは目をキラキラとさせながらそう言い、春風のもとへと駆け出そうとした。
その時だ。
「待って、レナ」
と、春風はスッと左手を上げながら、レナに向かって「待った」をかけたので、それにレナが「え?」と反応すると、
「「っ!」」
何やら大きなものが近づいてきたのを感じて、2人はすぐにその気配がした方へと振り向いた。
「……」
「あ……」
そこにいたのは、禍々しいオーラを纏った1匹の黒い狼だった。
ただ、その大きさは先程まで春風が相手をしていたサーベル・ハウンドよりも更に大きく、それだけでも圧倒的な存在感を出しているのに、その狼からは何やら言葉では言い表すことが出来ない何かを感じたので、春風とレナはその場から動けないでいた。
その後、春風&レナと黒い狼はお互いジッと見つめ合っていたが、
「……」
黒い狼は無言で春風とレナから背を向けると、スタスタとその場から去った。
そして、狼の姿が見えなくなるのを確認すると、
「い、行っちゃった……」
と、レナは額に溜まった汗を拭う仕草をしながらそう呟き、春風はというと、
「……」
と、無言で黒い狼が去った方角を睨みながら、
(間違いない。俺達にサーベル・ハウンドをけしかけたのは、あいつだ)
と、心の中でそう結論づけた。
その後、
「は、春風、大丈夫?」
と、尋ねてきたレナに対して、
「ん? ああ、俺なら大丈夫」
と、春風はそう返事すると、
「寧ろ、今のでレベルが1つ上がったよ」
と、ニコッとしながらそう言ったので、それを聞いたレナは、
「え、本当!? 凄いよ春風ぁ!」
と、レナはパァッと表情を明るくした。
すると、
「あのさ、レナ」
と、今度は春風がレナに向かって声をかけたので、
「な、何、春風?」
と、レナが恐る恐るそう尋ねると、
「こいつらを処理するの、ちょっと手伝ってほしいんだ」
と、春風は先程まで戦っていたサーベル・ハウンドの死体を指差しながらそう言ったので、それを聞いたレナは「あ……」と声をもらした後、
「うん、いいよ」
と、笑顔でそう言い、それから春風とレナは2人でサーベル・ハウンドの処理を始めた。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の展開を考えていたら、その日のうちに終わらせることが出来ず、結局1日遅れの投稿となってしまいました。
また、前回の話なのですが、誠に勝手ながら文章を一部修正させてもらいました。
本当にすみません




