第111話 再会後の道中
異世界エルードのとある大きな森の中。
その森の中を、少女・レナと少年・春風の2人がスタスタと歩いていた。
女神ヘリアテスの家で別れてから数日ぶりに再会した2人は、
「へー、そんなことがあったんだ」
「うん。故郷じゃ出来ない体験だったから、大変だったけど凄く楽しかったよ。レナの方はどうだったの?」
「わ、私?う、うーん私の方は……」
と、こんな感じで森の中を進みながら、別れてからの数日間での生活を楽しそうに語らっていた。
すると、
「うーん……」
と、レナがジィッと春風を見つめてきたので、
「な、何? レナ」
と、春風が恐る恐るそう尋ねると、レナは「うん」と頷いて、
「春風、前よりも結構強くなったね。それにその格好も、凄く格好いいよ」
と、ニヤッとしながら尋ね返すようにそう言った。
その言葉を聞いて、春風は目をパチクリさせると、「はは」と小さく笑いながら、
「まぁ、あれからヘリアテス様と精霊さん達に鍛えてもらったからね。この装備だって、精霊さん達と協力して作ったんだ」
と、両腕を広げて今の自分の姿をレナに見せながら言った。
まずは春風の強さだが、レナと別れてからの数日間、春風は女神ヘリアテスから体を動かして戦う術を、精霊達からは春風自身が持つ魔力を用いた技術を学んだ。
勿論、その中にはあらゆる魔物ーーといってもヘリアテスの家近くの森に出てくるもの限定だがーーとの実戦訓練も含まれていて、最初の頃は春風自身のレベルも低く戦闘経験もないので苦戦していたが、何度もするうちに次第に戦い方を学んだので、少しずつ、確実に戦えるようになっていった。
まぁそれはさておき、そんな感じで数日を過ごしていくうちに、現在の春風の「ステータス」はこのようになった。
名前:雪村春風
種族:神の分身
年齢:17歳
性別:男
職能:見習い賢者
レベル:10
所持スキル:「神眼」「無限倉庫」「体術」「剣術」「短剣術」「刀術」「鉄扇術」「杖術」「弓術」「投擲術」「風魔術」「炎魔術」「水魔術」「土魔術」「魔導具作成」「秘薬調合」「鍛治」「裁縫」「料理」「細工」「隠密」「偽装」「偽証」「魔力制御」
称号:「異世界人」「神と契約を結びし者」「固有職保持者」「女神に鍛えられし者」「精霊達の良き友人」
そう、春風はレベルが1つ上がるごとに、新たなスキルも入手していたのだ。
因みに、そのスキルはこのような感じだ。
スキル「剣術」……剣を用いて戦う武術で、全ての剣系スキルの基礎。
スキル「短剣術」……剣系スキルの1つで、短剣を用いて戦う武術。素早い連続攻撃を得意とする。
スキル「刀術」……剣系スキルの1つで、刀を用いて戦う武術。極めれば一撃で敵を倒せるだけじゃなく、硬い金属までも切り裂くことが出来る。
スキル「鉄扇術」……鉄扇を用いて戦う武術。一部の斬撃、打撃を得意とし、極めれば広範囲攻撃もしくは特殊効果を引き起こす「舞」を操ることが出来る。
スキル「杖術」……杖を用いて戦う武術。一部の打撃を得意とし、自身が操る魔術の性能を上げることが出来る。
スキル「弓術」……弓矢を用いて戦う遠距離攻撃用武術。極めれば静かに一撃で敵の息の根を止めることが出来る。
スキル「投擲術」……投擲武器を用いて戦う武術。極めればそこら辺の小石で敵を倒すことが出来る。
スキル「鍛治」……金属を叩いて様々な武器・防具を生み出す為の技術。
スキル「裁縫」……布を縫い合わせて様々な衣服や雑貨を生み出す為の技術。
スキル「魔力制御」……自身の魔力を制御し、意のままに操る為の技術。極めれば魔術や魔力用いた技術を頼ることなく、攻撃、防御、回復を行うことが出来る。
次に、春風の現在の格好だが、まずは上半身から順番に、頭には飛行機のパイロットがつけていそうな大きなゴーグルをつけていて、胴体には腰までの長さしかない青いフード付きのマントを羽織っている。
因みに、マントの下には青い半袖のシャツの上に革製の胸鎧をつけている。
右腕には革製のグローブをつけているが、左腕には少々ゴツい見た目をした銀色の籠手をつけている。
次に下半身はというと、黒い長ズボンに装飾が施された茶色い革製のブーツ、腰の白いベルトには小さな革製のポーチが付いていて、左側には黒塗りの鞘に納められた反りのある剣と、春風の「もう1つの武器」が納められた革製のケースが付いている。
「ど、どうかな?」
と、自身の装備について一通りそう説明した春風が、レナに向かって恐る恐るそう尋ねると、
「うーむ……」
と、レナはその格好を見てそう唸った後、
「うん、とっても似合うよ」
と、満面の笑みを浮かべながらそう言ったので、
「あはは、ありがとう」
と、春風もレナと同じように満面の笑みを浮かべながらそう言った後、
「じ、じゃあさ……これで、少しは男らしくなったかな?」
と、再び恐る恐るそう尋ねたが、
「え? う、うーん、それはぁ……」
と、レナは気まずそうにそっぽを向いてしまったので、
「ちょ、ちょっとレナ、その態度何? その気まずそうな態度は何!?」
と、春風はもの凄く不安になった。
その時だ。
「グルルル……」
と、何やら獣のものと思わしき呻き声がしたので、それを聞いた春風とレナはすぐに声がした方へと振り向くと、
「「あ」」
そこには1匹の大きな犬のようなものがいた。
何故、「犬」ではなく「犬のようなもの」と語ったのかというと、その犬のようなものの上顎から鋭い片刃の刀身を思わせるような大きな牙が2つ生えていたからだ。
そんな大きな牙を持つ犬のようなものを見て、
「サーベル・ハウンド……」
と、レナがそう呟くと、ガサガサという音と共に別の犬のようなものが複数現れた。
そんな犬のようなもの……いや、ここからはレナが言ったように「サーベル・ハウンド」と呼ばせてもらおう。
とにかく、その複数のサーベル・ハウンドを見て、
「おいおい、出発早々魔物とエンカウントかよ」
と、春風がそうぼやくと、
「あ、そうだ。ねぇ、春風……」
と、レナが何かを閃いたかのようにそう口を開いたので、
「ん? 何?」
と、春風がそう返事すると、
「この数日間で、春風がどれくらい強くなったのか見ていいかな?」
と、レナは目の前のサーベル・ハウンド達を指差しながらそう尋ねてきたので、それに春風は「えぇ?」と面倒くさいと言わんばかりに返事したが、レナがあまりにも目をキラキラとさせていたので、春風は「はぁ」と溜め息を吐くと、
「いいよ、任せて」
と言って、2、3歩ほど前に出た。
そして、春風は目の前のサーベル・ハウンド達を見ながら腰の剣の柄を握ると、
「それじゃあ行こうか、翼丸」
と、小さくそう呟きながら、ゆっくりと剣を鞘から引き抜き、構えた。




