第110話 「再会」
お待たせしました、第5章の始まりです。
ルーセンティア王国による「勇者召喚」から7日目、即ち、「ルールを無視した異世界召喚」から、1週間になった。
エルードの空の上では、ルーセンティア王国に並ぶもう1つの大国「ストロザイア帝国」が開発した空を飛ぶ船「魔導飛空船」が優雅に飛んでいた。
4枚の大きな翼を生やした中世の大型帆船を思わせるその魔導飛空船の中には、大勢の乗組員は勿論、ストロザイア帝国の皇帝ヴィンセントと、その息子である皇子レオナルド、その妹である第2皇女のエレクトラ、そして、「勇者」として別の世界「地球」から召喚された、水音、進、耕、祭、絆、祈の、6人の少年少女達が乗っている。
最初は初めて見た異世界の空飛ぶ乗り物にはしゃいでいた水音ら勇者達だったが、次第に疲れが出てきたのか、今はそれぞれの為に用意された客室の中でぐったりしていた。
さて、そんな魔導飛空船内にある客室の1つでは、その勇者の1人である水音が、客室についてる窓の外を見ていた。
(まさか、異世界に来て『空の旅』をすることになるなんてなぁ……)
と、窓の外の景色ーーといっても見渡す限り白い雲ばかりだがーーを見つめながら心の中でそう呟いた水音。
(こんな凄い乗り物、春風が見たら、きっと目をキラキラさせるだろうなぁ)
と、今はここにはいないとある少年のことを考えて、「ふふ……」と小さく笑うと、
「……春風、今何処で何をしてるんだろう?」
と、水音は少し寂しそうな表情でそう疑問を口に出すのだった。
さて、水音がそんなことを考えていた一方、エルードのとある森に、1人の少女が向かっていた。
彼女の名前は、レナ・ヒューズ。報酬と引き換えに様々な仕事を請け負う「ハンター」の少女だ。
森の前に着くと、レナはまるで警戒するかのようにキョロキョロと周辺を見回した。特に自身の背後はもっと警戒するかのように目を細めた。
そして、自身の周囲に誰もいないのを確認すると、
「ここまでは大丈夫」
と、グッと拳を握り締めてガッツポーズを取りながら、ボソリとそう呟き、
「よし、行こう」
と、目の前の森に向かってそう言うと、スタスタとその森の中へ入っていった。
それから暫くの間、1人、森の中を進レナ。
その途中、エルードに現在存在している様々な異形の魔物達が次々と襲ってきたが、
「邪魔!」
と、レナはそう怒鳴りながら、自身の武器である長い棒を手にそれら全てを倒していった。
勿論、倒した後はその魔物達から取れるものを全て取り、それらを自身が持つスキルの1つである「無限倉庫」にしまうと、残った数多くの死骸は全て掘っておいた大きな穴に放り込み、森を巻き込まないように気をつけながら、その全てを燃やすと、そこへ土を被せて埋めた。
そんな行動を繰り返しながら、レナは1人森の中を突き進んでいき、それから暫くすると、森の中であるにも関わらず周辺に木々がない開けた場所に着いたので、レナはそこで歩を止めると、ゆっくりと深呼吸した。
その後、
「……よし」
と、小さくそう呟いたレナが、1歩足を踏み出した次の瞬間、
「っ!」
目の前が突然光り出したので、驚いたレナは思わず右腕で顔を覆った。
その後、光がだんだんと弱くなったので、レナはゆっくりと右腕を顔から話すと、
「あ……」
目の前に、見慣れた白い扉が現れていたのだ。
何処か神聖なものを感じさせるその扉を前に、レナは一瞬表情を緩ませたが、すぐにハッとなって首をブンブンと横に振ると、キリッとした表情でその扉を見つめた。
すると、ガチャリと扉のノブが回る音がして、ギィッという音と共に、ゆっくりと扉開かれた。
そして、その扉の向こうから、1人の人物が現れた。
それは、腰までの長さしかないマントに身を包んだ、見たところレナと同い年くらいの黒髪の美少女だった。
だがしかし、レナは知っている。
その人物は、顔付きこそ「美少女」だが、本物の少女ではないことを。
そして、その人物は今日初めて会ったのではなく、実は数日前に既に会って、短い間行動を共にしていたのだが、とある事情があってその人物と数日程別行動を取ることになり、今日が「再会」する日だということを。
そんな訳で、今日、久々に再会したその人物の姿を見て、レナは一瞬泣きそうになったが、再びすぐにハッとなって首をブンブンと横に振ると、真っ直ぐその人物を見て、
「待ってたよ、春風」
と、笑顔でそう言った。
そして、その笑顔に応えるかのように、
「うん。待たせたね、レナ」
と、黒髪の美少女……ではなく、その人物、少年・雪村春風も、レナに向かってニコッとしながらそう言った。
どうも、ハヤテです。
という訳で、最後の投稿からお休みさせてもらいましたが、前書きにも書きましたように、今日から第5章の始まりとなります。
女神ヘリアテスのもとで準備を終えた春風。
果たして、彼にどのような出来事が待ち受けているのか?
彼のこの後の活躍に、ご期待ください。
また、ここからは謝罪となりますが、誠に勝手ながら、新章スタートに合わせて、少女レナさんの「所持スキル」を少し変更させてもらいました。
本当にすみません。




