第102話 煌良からの「質問」
ヴィンセントから受けたストロザイア帝国へのお誘い。
それについての話し合いの最中、
「俺からも質問していいか?」
と、「はい」と手を上げた煌良に、
「な、何、力石君?」
と、水音がそう返事すると、
「……召喚初日からずっと、俺はお前に聞きたいことがあった。中々タイミングが掴めないまま今日を迎えたが、今こそお前に尋ねたい」
と、煌良は真っ直ぐ水音を見ながらそう言ったので、それに水音だけでなく爽子ら勇者達や、ウィルフレッド、マーガレット、ヴィンセントまでもが「え?」と首を傾げていると、
「召喚初日に雪村が騎士達と戦っていた時に使ったあの扇についてだ。あれを見た時のお前と海神と天上の反応からして、陸島凛咲関係だと思うが」
と、煌良は水音から視線を外さずにそう言った。
その言葉を聞いて、
「「「あ……」」」
と、水音、歩夢、美羽の3人は今思い出したかのように声をもらし、
「ん? そういえば話の中に出てきたなぁ」
と、ヴィンセントも思い出したかのようにそう呟いていると、
「あれは鉄扇だろ?」
と、煌良そう尋ねてきたので、それを聞いたクラスメイト達から「え?」と声があがると、
「う、うん、そうだよ。それも、複数の鉄板を重ねて作られたタイプ……」
と、水音は何処かぎこちなさそうにそう答え、最後の「あはは」と苦笑いした。
すると、
『えええええええっ!?』
と、爽子と進らクラスメイト達からそんな驚きの声があがり、
「ああ、だから騎士の剣を折ることが出来たのか」
と、ウィルフレッドは納得の表情を浮かべたが、
「いや待てウィルフ! それでも普通、剣を折るなんてこと出来るのか!?」
と、ヴィンセントにそうツッコミを入れられてしまった。
そんな状況の中、
「ちょ、ちょっと待ってよ桜庭君! どうして雪村君がそんなものを……!?」
と、ハッと我に返った純輝がそう尋ねてきたので、それに水音が「ん?」と反応すると、
「ああ、あれはね、春風が高校入学した時のお祝いに師匠から『お守り』としてプレゼントされたものなんだ」
と、水音は純輝に向かってそう答えた。
その答えを聞いて、
「ええ、高校入学のお祝いに鉄扇って……」
「どんな師匠だよ……」
と、クラスメイト達からそんな声があがる中、
「ん? ということは桜庭ももらっているのか?」
と、今度は煌良がそう尋ねてきたので、
「勿論、僕も貰ったよ」
と、水音がそう答えると、それに続くように、
「実は……」
「『弟子』じゃないんだけど、私達も……」
と、歩夢と美羽が恥ずかしそうに顔を赤くしながらそう言った。
その後、
「で、僕のは……」
と、水音はそう言うと、ズボンのポケットに手を入れて、そこから「あるもの」を取り出した。
その「あるもの」を見て、
「あ、それエレクトラ様と戦った時に使ったグローブ!」
と、進が大きく目を見開くと、
「うん。そしてこれが、僕が師匠からもらった『お守り』さ」
と、水音はその「お守り」……黒い革製のグローブを見せながらそう言った。
そして、それに続くように、
「私達のは……」
「これ」
と、歩夢と美羽はそう言うと、自分達の髪につけてる髪留めを外し、それを周囲の人達に見せた。因みに、歩夢のはシンプルな装飾が施された綺麗な青い髪留めで、美羽のは同じくシンプルな装飾が施された綺麗な緑の髪留めだ。
それらを見て、クラスメイト達が「おお!」と何処か羨ましそうな表情になると、
「な、なぁ! ちょっと持ってみていいか!?」
と、進が目をキラキラとさせながらそう言ってきたので、
「ん? いいけど……重いかもしれないよ?」
と、水音はそう意味深に言いながら、進にグローブの片方を差し出した。
その言葉を聞いて、進が「へ?」と首を傾げながら、そのグローブを受け取った、次の瞬間、
「うほう!?」
と、進はまるでもの凄く重いものを持たされたかのような感覚に陥り、なんとも妙な悲鳴をあげたので、
「ど、どうしたの進君!?」
と、驚いた耕がそう尋ねると、
「な……なんかこれ……もの凄く、重い……」
と、進は本気で辛そうな表情でそう答えたので、その答えを聞いて、
「え、お、重い?」
と、首を傾げた耕が、進が持ってるグローブを手に取ると、
「う、うわぁ!」
と、今度は耕が進と同じように、まるでもの凄く重いものを持たされたかのような感覚に陥り、
「お……重い……」
と、辛そうに表情を歪ませた。
そんな耕の様子に驚いたのか、
「え、ま、待って、そんな馬鹿な……」
と、純輝をはじめ、他のクラスメイト達もそのグローブを手に取ったが、皆、進や耕と同じような反応をしたので、
「え、えっとね、そのグローブと春風の鉄扇、そして海神さんと天上さんの髪留めは、師匠曰く『特殊な方法』を使って作ったもので、持ち主以外の人間が持つと、そんな反応するようになるんだ」
と、水音は申し訳なさそうにそう言った。
それを聞いて、
「ほほう、どれどれ……」
と、ヴィンセントもそう言ってグローブを手に取ると、
「う! こりゃあスゲェな……」
と、若干表情を歪め、更に、
「ふむ、では私も……」
と、今度はウィルフレッドがそう言って、同じようにグローブを手に取った。
その後、ウィルフレッドも「む!」と表情を歪めると、
「これは……魔導具の類か?」
と、グローブを見てそう呟き、「ありがとう」と言ってグローブを水音に返した。
その後、水音がグローブをポケットにしまい、歩夢と美羽が髪留めを付け直すと、
「それにしても、その『師匠』殿はどのような方法でそれらの『お守り』を作ったのだ? 水音殿は何か聞いてないのか?」
と、ウィルフレッドがそう尋ねてきたので、
「うーん、それは僕も気になったのですが、残念ながら師匠は、『勿論、ひ・み・つ・よ』とはぐらかすだけで何も教えてくれませんでした」
と、水音はそう答えて、最後に「申し訳ありません」と謝罪した。
その謝罪を聞いて、クラスメイト達は「えぇ?」と疑惑の目を水音に向け、
「ほほーう、どうやらお前さんらの世界も、何やら面白そうな『秘密』みたいなもんがあるみてぇだな」
と、ヴィンセントはニヤリと口元を歪めた。




