第十三話 アツィエラ領民
すみません、本日更新予定の第十四話、投稿が遅くなりそうです。
時間の管理が下手過ぎてまだバタバタしており、下書きも書き終えておりません申し訳ない。
追記。
今日中の投稿や深夜の投稿は無くなりました改めてすみません。
明日27日に投稿します。よろしくお願いします。
2025/01/26
領を治める公爵家の方達は前より更に声を大きくしている、が……俺達領民は今も天災やら不作やら病が続いてるわけで。
そんな状況の領民の代表として、まだ動ける俺と他数人が王都行きを任された。
領では声を上げてもその声は領主様達を動かせないから──それこそ力で動かそうとしても兵を出されたら出来る事なんて何一つで──それなら王都で、国の中央で、声を通せってさ。
今みたいになる前は「領都」なんて呼んで公爵家の皆様こそ、俺達こそ、国の中心だと思ってたのにな……。
でもいざ王都に来てみたら、その違いを目の当たりにさせられた。
まずそもそも、人の賑わいが違う。
王都が都で領地が地方だから、とかじゃない。健康な人間の多さって意味だ。
実際、街を行き交う人達の顔色がみんな健康そのもので、楽しそうに笑顔まで浮かべてたりする。
天気も穏やかで、店が開いてるだけじゃなく中をのぞいても商品に困ってる様子がない。
今までの俺は、領都だって王都の人の数に負けてないって対抗心があったし、王都のほうが洒落ているなんて言うやつの多さを悔しく思っていたが。
今は花壇の花さえ枯れていない事、人が健康そのものな事、災害の気配もない事──そういう、神の眼差しがどこに向けられているのかを突き付けられた事に、愕然とした。
領主様達は「自分達に加護かあるから打ち勝ったんだ」って言ってたけど、公爵家なんだから、それに今や健康で動けるんだから、王都との違いは俺達よりずっと知ってたんじゃないのか? なんであんな事が言えたんだ?
それだけじゃなく。
狙ってこの時期に出てくる事になったわけじゃない、けどたまたま俺達が王都に来た時期と嚙み合って。
王家が隠してきた──守ってきた情報が公表された。
蓋の開けられたその中身は、俺達の、領主様達の、莫迦な夢を打ち砕くもので。
つまり。
領主様達が非難していた寵姫様は神女──神霊だと。
そして陛下と神霊の御子こそが今回還生誕を迎えた第四王子様なのだと。
つまり陛下は神の寵を賜る特別な方で、それは天与の才たる啓眼を通した神託で陛下が生れてくるよりも前から定められていた道だったと。
王都だけでなく、国内どころか、他の国々にも向けられた「公表」なんだろうな。
大々的に、勢いよく、あっちでもこっちでも情報が行き交っていた。
まあ、そりゃそうだろうな。こんなに珍しくてとびぬけた事なんて、人間全体の歴史を見たって、そうないんじゃないか?
俺は……思わず“乾いた笑い”ってやつをこぼすしかなかった。
こんなの、勝てっこない。
領主様達が掲げてた切り札──啓眼の姫様は、王家にとっても札の一枚だったんだ。
領主様達や俺達の声を抑え込みに来なかったのも、余裕ってやつだったのかな。
それを俺達は、自分達が正しいからだって思い込んで……。
こんな事ならもっと早くに教えておいてくれよって思う自分がいるけど、まあ第四王子様が還生誕を迎えるまでは、無理だよな。
せっかく神との繋がりが出来たってのに還生誕前に余計な事してそれが切れたりなんかしたら……そりゃ俺だって黙る事を選ぶよ。
そもそも還生誕前は……普通のって言い方も可笑しいな……王族の子供だって情報を公開なんてしないしな。それどころか民草だって公式の行事みたいなのには出さない。
だから公爵家と言えど、領主様達も知らなかったんだろうな。とは思う。
領主様達が倒れたのはやっぱり神罰なんだろうな。
それで今、領主様達は多分最後の機会を与えられて試されてるんじゃないか?
そして俺達は償う力を持たないから、罰が続いているのかもしれない……。
王都を歩けば王家の正式な発表以外にも、噂や吟遊詩人達の唄が、それこそ聞こうと思わなくてもやたらたくさん聞こえてきた。
アツィエラ領以外でも起こっていた各地の災害やらは、神霊の、今後約束されている加護がなかったならば──つまり本来ならば受けていたはずの負の影響を消費し、神の祝福で満ちた未来へ移る前兆だという話。
アツィエラ家をはじめとした神霊に仇なす貴族家の状況が落ち着いたように見えるのは、ことわざで言う嵐前の最後の灯なのではという話。
あるいは彼ら貴族家は今まさに神に試されている最中なのではないか、という話。
俺達は王都に来るまでそう深刻にとらえていなかったが。今苦しんでいる土地は俺達のように王家に、神霊たる寵姫様に、歯向かった土地ばかりじゃあなく。
それが王都でこれほどに各地の不穏な噂が聞こえるというのは、不安が募るもののようで。
それが今回第四王子様の還生誕を機に発表された王家の言葉で。事態はこれからどう転ぶのか、ただでさえ色々あった憶測が更に盛んになっているように見えた。少なくとも、俺の目には。
それを聞いて、俺達の中にも嫌な事を言うやつがあった。
つまり。
領主様が今寝込んでないのは啓眼の姫様の身内だから、特別に許されたんだと。
でも俺達はただの民草だからその恩恵には与れなかった。
だから言い出した領主様達は許されて、俺達だけが神に楯突いた罰を受ける事になるんだろう。
そう言ってくれた。
ありがた過ぎるご意見だよ。ほんとにな。
そう言い出したやつのせいで、第四王子様の、神女様の恩恵を思ってこれからに浮かれた俺達の空気はあっという間に沈んだ。
だけど、まあ、分かるよな……俺達は王家どころか神に歯向かったんだ。
なのにそのせいで辛くなって、領主様が助けてくれないから、じゃああんた達に縋ります、なんて。
それでも、やっぱり思っちゃうんだよなあ……神霊はこの国に加護を与えてくれる存在なんだろって、じゃあ民である俺達の事を助けてくれるに違いないって。
だって、神だぜ?
俺たちを守ってくれるから、だからその証拠にこの国に啓眼てのをくれるんだろ?
なあ神様。俺達は確かにあんた達に無礼をしたかもしれない。
でも俺達はただの民草で、どう足掻いても神には敵わない人間に過ぎなくて、だから、なあ? 助けてくれよ。
俺はこれ以上の苦しみなんてもう無理だし、それに、あいつの事は絶対に死なせたくないんだ。
あいつ、本当に苦しそうなんだよ。今にも死んじまいそうだったんだ。でも、俺はあいつを守るって、あいつは俺と一生いてくれるって……。
なあ頼むよ、助けてくれよ神様。
後生だから、どうかお願いだ。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
作中の「嵐前の最後の灯」はこの国の言い回しという事で、「嵐の前の静けさ」や「灯滅せんとして光を増す」にある意味近い(とは言えないかもしれませんが)意味合いで「事が起こる前の最後の平穏」というようなことわざとして書きました。
次回も3日を置いての更新となる予定です。
よろしくお願いします。




