7羽目:カラスも暗いのは怖い
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「おい、おいってば!こっちに寄って来るなよ!落っこちるだろ」
「ご、ごめんよ……でも、一羽で寝るのは怖くてさ」
「お前、親離れからまだ間もなかったっけ?」
「ううん。もう二ヶ月近く経った……」
「二ヶ月でそれ!?なぁ悪いけどさ、お前がベッタリだとツガイを作りにくいし、頼むから暗闇にも慣れてくれよ」
「あ、そ、そんなぁ~」
「ちょうど、今日は夜遊び好きなカラスが肝試しに行くらしいから、ちょっくら一緒に参加して来いよ」
「え、嘘、やめて!ホント無理、無理だから!!」
ギィギィ、ギャアギャアと「行ってこい!」「嫌だ!!」の押し問答を繰り広げつつも、ついに肝試しに参加することになってしまったビビりカラス
比較的、日が延びてきたとは言っても、必ず暗くなる時間は当然やってくる。別に目が見えないわけでもないけど、怖いものは怖いのだ。
夜遊びカラスの小集団に置いて行かれないように必死について行くと、そこは何やら人間の「寝床街」のようだった。
ここって、昔は大きな畑があったと父親が教えてくれたところではなかったか?畑の頃は、柿や虫、いちじく、ネズミと食べ物の宝庫だったと当時を懐かしんで話してくれたっけ。いいなぁ、そんな夢のようなところ僕も行ってみたかったなと思ったものだ
しまった!!現実逃避をしている間に仲間たちとはぐれちゃう!!
「なぁ……」
「ギャーーーーー!!」
「ギャーーーーー!!っておい、オレまでビックリしちゃったじゃねぇか!?」
「ご、ごめん……だって君、黒いから。闇に溶け込み過ぎだよ」
「……あのなぁ、知らなかったのかもしれないが、お前も黒いから」
「そうみたいだね……そして伸びた影も黒くて、怖いよね」
ああ、なんで僕ってこんなに臆病なんだろうか。ギリギリまで親離れしなかったのがやっぱりいけなかった?お父さんも呆れていたもんなぁ……でもお母さんは最後まで『カラダに気を付けるのよ』って心配してくれたよね、会いたいなぁ。
せっかくお母さんを思い出して浸っていたのに、無情にもその時は来てしまった。人間の寝床の一つにとりあえず行ってこいというものだ。
内容は至ってシンプルで、小さい通路を通って、寝床の入り口っぽいところまで行ったら、あとは飛んで戻って来てもいいらしい。
「それが終わったら寝床に戻してくれる?」
「ああ、いいぜ!よっしゃ、オスってところを見せてみろよ」
仲間たちにヤンヤと見送られながら、トボトボと細い通路を歩く。両サイドがツツジに挟まれていて余計に怖い。ここの人間が植えたものだろうか、少し大きな木が入り口近くに植えてあって、この木は止まるにも良さそうな形しているなぁ~なんて考えていたら……
パッ! パッ! っと木の下、寝床の入り口の上が光り出した!!!
「ギャーーーーーーーーーー!!!目が、目が見えないよ!!お母さぁぁぁん!!」
腰が抜けたようになってしまった僕は、その場でバサバサと羽を動かすけれど、混乱しすぎて地面を打つだけだ。
「お、おい!落ち着け、落ち着けって!!オレだ、オレだって!」
「もうヤダ!帰る!!」
気配を消して歩いていたつもりなのに、人間には気付かれた??もうあんな危ないところ絶対近づかない!! そう決めて僕はさっさと寝床へ戻った。
「お帰り!なんだ、やればでんきんじゃん!」
「え?なにが?」
「なにがって……一羽で帰って来たじゃないか」
「………ホントだ!!僕ってすごいじゃん!!」
それでも僕は、今も暗いところが苦手なまま
土日は2話(羽)ずつ同時刻で投稿します!