5羽目:マタニティブルーはカラスにだってある
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「うぅ……私ちゃんと母親になれるかしら……」
「大丈夫だよ、君ならちゃんとやれるさ。僕もいるじゃないか」
僕のツガイが卵を三個産んだ。僕の可愛いツガイはどうやらマタニティブルーというやつみたいだ。でもそうだよね、初めてお互いに親になるんだもの、心配は尽きないよね。悩んで涙するツガイが可愛い……あ、実際には涙なんて出ないんだけどね
しばらくして、僕たちのヒナが無事生まれた!なんて可愛いんだろうか。僕にも彼女にもそっくりだ!
「もう嫌!!なんなのアイツ!いっつもいっつもうちの巣を見て行くのよ?不気味ったらないわ!大体、あなたも不審な人間を見掛けたのならもっと威嚇するなり、頭突いて怖がらせるなりしてよっ!!」
「……う、うん。まぁ、落ち着こうよ」
最近の彼女はかなりキレやすくなっている。もちろん、この子育て期間中はどこもピリピリムードにはなる、当然だ。
でも、人間やその他にキレるのはいいけれど、僕にまで当たり散らすのはやめて欲しいな。最近、毛艶も悪くなってるんじゃないかな?
そんなことが何日か続いて、温厚と呼ばれていた僕もさすがにストレスがMAXまで溜まってきてしまった。そんなタイミングで、僕のツガイが嫌いな、所謂ストーカー人間が今日もこちらをニヤニヤしながら見上げている。
うん、もうこれ脳天突きに行ってもいいよね?ケンカ売ってるんだよね?
そのケンカ買ったよ!
「お前のせいで、僕のツガイはイライラしてブチ切れて、僕にまで当たってくるんだぞコノヤロー!!ヒナたちだって怖がるだろうが!!いい加減わかれよ!!」
ストーカー人間は「ぎゃあ!やめろ!やめてくれぇぇ!!」となにやら叫んでいたけれど、僕たちは毎日忠告をしてやっていたんだ。なのに、飽きもせずケンカを売ってきたお前が悪いんだろう?
頭の帽子も足で蹴って、それから頭を二回小突いてやった。これに懲りたら二度と姿を表せないことだよ。次は、、、ないからね?
本当に普段は温厚で定評のあった僕だけど、どうやら僕もマタニティブルーとやらを煩っていたようだ。
僕もツガイのこと言えないなって思ったのは内緒だ