7 初恋の終わり
「おはよ、大輝」
「おはよ、莉緒」
翌朝もいつも通り、莉緒が迎えに来た。
「あ、あの大輝、歩きながらでいいから、聞いて欲しい」
「え?何?急に」
「あ、あのごめんね?」
「何で莉緒が謝るの?」
「え、っと……高校に入ってから、私、大輝とちょっと距離取ってたでしょ?」
「あー、うん」
「そ、それはね?り、理由があって……」
「理由?」
僕以外の友達を作りたかった、ってことでしょ?
最初は確かにどうして、って思ってたけど、それはもう納得した。
僕と莉緒は、タイプが違い過ぎるんだ。
今まで一緒に居て、莉緒も僕を誰よりも優先してたから、気にならなかった。
莉緒は活発な子だ。
誰よりも僕が知ってる。
だから、今は納得してるんだ。
「あ、えーと、だから……」
言いにくい事?
僕を否定するような事だから?
大丈夫、僕にも友達が出来たし。
「謝らなきゃいけないような事なんだけど」
「おーっす!!莉緒!おはよー!!」
「あ……」
「莉緒は今日も可愛いな……って、またコイツと一緒にいるのかよ?」
「あっ」
同じクラスの男が、莉緒の腕を引いて行こうとする。
えーと、この人、名前なんだっけ?
「やめなよ、莉緒、嫌がってるよ?」
「は?何でお前にそんなこと言われなきゃいけねえんだよ?!!」
「だ、大輝は私の幼馴染なの!!」
「……へえ?だから?」
「えっ?」
「幼馴染なんて、ただ付き合いが長いだけだろ?」
「なっ!」
「だとしても、嫌がってるよ、莉緒は」
「そんな事、お前がわかるワケねえだろ!」
「わかるよ、付き合いは長いんだ」
「なにイキっちゃってんだよ、何も知らねえくせによ!」
「やめて!!」
「?何が?」
「俺と莉緒はなあ!もうキスまで済ませてんだよ!」
は?
「だから、お前は邪魔だっての!空気読めよ!」
「やめ、やめてよ!!大輝!違うの!」
「何も違わねえよ?わかっただろ?お前の出る幕じゃねえんだよ!」
あ……そっか……。
ズキリと胸が痛んだ。
ずっと怖かったんだ。
小学校の頃から、ずっと。
中学に入ってからは、特に。
男子から何度も何度も告白されていた、莉緒。
僕とは釣り合わないんじゃないか、って思ってた。
だけど、莉緒が僕を優先してくれていたから。
僕だけと一緒にいてくれたから。
僕の事を、男として好きでいてくれたら、なんて。
淡い希望を抱いてしまっていたから。
僕から告白しようとも思った。
だけど、もし莉緒が僕に対して、友達以上の感情を持っていなかったら。
そこで僕たちの関係は終わってしまう。
それでも勇気を出して、なんて僕の性格からして、無理なんだ。
僕には仲の良い友達は、莉緒しかいなかったから。
そっか。
莉緒はこの男と……。
嫌がっているように見えたのは、僕の勘違い?
莉緒の事を一番わかっていると思っていたのは、僕の勘違いだった?
この男は僕より、莉緒の事をわかっているのか?
たった数日で。
僕の初恋は終わったのか。