6 僕と小嶋さん2
「おはよ、大輝」
「おはよ、莉緒」
いつも通りだったはずの、莉緒との朝の時間。
もういつも通りではなくなっていた。
莉緒は僕に友達が出来た事が面白くないんだろうか。
なんでこんなに不機嫌なんだ?
「あのね、大輝」
「なに?」
「ちょっと話があるの」
「ああ、歩きながら話そうか」
「ダメ!いつもみたいに邪魔が入っちゃう!」
「邪魔?邪魔は僕じゃないの?」
「えっ?な、なんで」
「ごめんね?僕は莉緒達の話に入っていけないから」
「あ、そ、それは」
「いつも邪魔しちゃってごめん」
「そ、そんなこと」
「で?話って何?」
「え、あ、そ、そう!あの、大輝は今のままでいいの?」
「え?なにが?」
「なにがって……私が他の子達と遊びに行ったり、学校で大輝と話さなかったりとか……」
「……最初はつらかったけど、莉緒がそうしたかったからでしょ?」
「え?いや」
「僕は目立たない性格してるから、友達出来なかったし、莉緒は人気あるからしょうがないよ」
「だ、大輝はそれでいいの?!」
「それでいいっていうか、仕方ないって話だよ」
「そ、それであんな地味な子と仲良くしてるの?!!」
「地味な子って……。小嶋さんの事言ってるの?」
思わず低い声が出た。
「あっ、だ、だって」
「こんな僕にもやっと友達が出来たんだ。莉緒も言ってたでしょ?大輝も頑張れって」
「そ、そうだけど……」
「喜んでくれないの?」
「……」
「莉緒が何を言いたいのかわからないよ」
「……」
「あ!もう時間ヤバいよ?急ごう!」
「あっ!!大輝!!」
ホントに時間ギリギリだ。
会話も無く、ただただ学校まで走った。
息も切れ切れのまま、席に着いた。
何とかセーフ。
「遅かったですね?あの子、確か長沼さん?でしたっけ?一緒に来たんですか?」
「ああ、幼馴染なんだ」
「え?そうだったんですか?でも、学校ではあんまり話してないみたいですけど?」
「うーん、高校に入ってからそうなっちゃったんだよね」
「何かあったんですか?」
「さあ、僕にはわからないけど、莉緒はさ、目立つでしょ?」
「そうですね、可愛いし、明るい性格してそうですね」
「そうなんだよ、すぐにみんなと仲良くなっちゃったからね」
「ええ、そんな感じですね」
「だから、僕と一緒に居るのは退屈なんじゃないかなって思ったんだ」
「そうでしょうか?」
「そうなんじゃない?今までは僕とばかり居たから、他の友達と居るのが楽しいんだよ、きっと」
「うーん、私は長沼さんの事知らないから何とも言えませんけど……」
「まあ、莉緒の話はいいよ。それより小嶋さんから借りた小説!」
「あ!どうでした?」
「まだ途中だけど、面白いよ!」
「ホントですか?!良かったあ!」
「ゲームの世界に飛ばされた、みたいな話、初めて読んだよ!」
「そうなんですよね!ゲームの世界みたいですよね!」
「うん!ゲームやってたから、何となくわかるよ」
「良かった!つまらないって言われたらどうしようかと……」
「え?言わないよ?そんな事」
「ダメですよ?私が選んだからって、つまらないと感じても面白かった、なんて言ったら」
「あ、そういう事じゃなくて……」
「ふふっ、冗談です。でもホントに面白くないと感じたら、正直に言ってくださいね?嘘の感想言われても嬉しくないし、楽しくないですよ?」
「あ、そ、そっか。そうだね」
「はい。読み終わりそうだったら言ってくださいね?次のを選んでおきますから」
「ありがとう!楽しみにしてる!」
やっぱり小嶋さんと話すのは楽しいな。
小説も読むのが楽しい。
今まで莉緒に引っ張られて、遊びに行ってたりしてたけど。
確かに、莉緒と居るのは楽しかったけど。
読書は僕に合っているのかもしれないな。
その日は昼も小嶋さんと話しながら、弁当を食べた。
小説以外の話も大分するようになった。
小嶋さんの事を知りたい。
僕の事を小嶋さんに知って欲しい。
そう思った。
莉緒の視線は気にならなくなっていた。




